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「灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎」 櫛木理宇

一説によると、鳥類の中で一番賢いのは鴉だそうです。その知能は霊長類に匹敵し、記憶力・観察力にも優れ、人間の顔を見分けたり、道具を使ったりすることも朝飯前。分野によってはサルを超える成績を出すこともあるのだとか。その賢さや真っ黒な外見、敵を集団で攻撃する習性などから、不吉の象徴であり、魔女や悪魔の手先とされることが多いです。

その一方、鴉は太陽に向かって飛んでいくように見えることから、神の使いとして崇められることもしばしばでした。日本でも三本足の鴉<八咫烏>を導きの神として崇拝する文化がありますよね。鴉は視力が優れていることもあり、善きものにせよ悪しきものにせよ、<使者><斥候>というイメージがあるのでしょう。今回は、そんな鴉が印象的な使われ方をしている作品を取り上げたいと思います。櫛木理宇さん『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』です。

 

こんな人におすすめ

社会の歪みをテーマにしたミステリーが読みたい人

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「わくらば追慕抄」 朱川湊人

そこそこ大きな自治体の場合、たいてい地域内に複数の図書館を持っています。多くの図書館利用者は、その中から自宅や学校、勤務先に近く、通いやすい図書館を選んで利用しているのではないでしょうか。私も自宅近くに図書館があるため、時間があるたびに通うようになって早数年。書棚の位置もすっかり頭に入り、読みたい本を探すのも楽ちんです。

ですが、たまには馴染みのない図書館に行くのも楽しいです。同じ作家さんでも、図書館によって蔵書が違うので、「あ、そういえばこの本書いたのもこの人だっけ」「この本、見かけるの久しぶりだなぁ」と驚かされることもしばしば。もちろん、図書館に取り寄せ依頼をすればどの本だろうと届くのですが、書棚の間をぶらぶらして読みたい本を見つけた時の喜びは格別ですよね。先日、普段利用しない図書館に立ち寄ってみたところ、数年ぶりにこの本を見つけたので再読しました。朱川湊人さん『わくらば追慕抄』です。

 

こんな人におすすめ

・昭和を舞台にしたノスタルジックな小説が好きな人

・超能力が出てくる小説が読みたい人

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「ランチタイム・ブルー」 永井するみ

一説によると、日本人のような農耕民族は、家に対する愛着が強いそうです。一カ所に定住し、畑を作って暮らしてきた記憶が遺伝子に刻み込まれていて、<立派な家を持つ>ということに大きな価値を見出すのだとか。もちろん、「雨風がしのげればOK」という価値観の人もたくさんいるでしょうが、そういう人にしたって、住み心地が良いのと悪いのとでは、前者を選ぶに決まっています。

しかし、家というものは、不満が出たからといってタオルを買い替えるように簡単に変えることはできません。賃貸ならまだしも、一度買った家を手放して新たな家に引っ越すとなると、金銭的にも精神的にも体力的にも大きな負担となります。その場合の最も効果的な手段。それは、家のメンテナンスを行い、不満がある箇所には手を加えて、できるだけ快適に住めるようにすることです。そこで出番となるのが、住まい作りのプロであるインテリアコーディネーターです。今回は、そんなインテリアコーディネーターが登場するミステリーを取り上げたいと思います。永井するみさん『ランチタイム・ブルー』です。

 

こんな人におすすめ

・日常の謎がテーマのミステリーが読みたい人

・インテリアコーディネーターの仕事に興味がある人

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「複製症候群」 西澤保彦

クローンという言葉が最初に考案されたのは、一九〇〇年代初頭のことだそうです。意味は、分子・DNA・細胞・生体などのコピー。園芸技法の一つである<挿し木>はクローンの一種ですし、動物でもマウス、犬、羊、猿などでクローンが作成されています。人間のクローンは今のところ作られていないとされていますが・・・実際はどうなんでしょうか?

現実に動物のクローンを作る場合、誕生するのは<オリジナルとまったく同じ遺伝情報を持つ赤ん坊>ですが、SF作品ではしばしば、オリジナルと年齢も容姿もそっくりそのまま同じなクローンが登場します。ただ、見た目は瓜二つでも記憶まではコピーできないとか、ものすごく残虐な性質を持つとか、何らかの形でオリジナルとの差異が生じるケースが多い気がしますね。では、この作品に登場するクローンはどうでしょう。西澤保彦さん『複製症候群』です。

 

こんな人におすすめ

クローンが登場するクローズドサークル・ミステリーが読みたい人

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「鋏の記憶」 今邑彩

サイコメトリーという言葉をご存知でしょうか。これは超能力の一種で、物体に残る人の残留思念を読み取ること。特に考古学との関係が深く、発掘された考古学品の過去を読み取って研究に役立てる事例は、世界中に存在するそうです。

日本において、瞬間移動やテレパシーなどと比べるとあまり知られていなかったサイコメトリーの知名度を上げたのは、樹林伸さん原作の漫画『サイコメトラーEIJI』でしょう。松岡昌宏さん主演によるドラマがヒットしたこともあり、「超能力はよく分からないけど、サイコメトリーという言葉は知っている」という方も多いのではないでしょうか。小説では、宮部みゆきさんの『龍は眠る』『楽園』でもサイコメトリーが出てきました。それからこれも面白かったですよ。今邑彩さん『鋏の記憶』です。

 

こんな人におすすめ

サイコメトリーを扱ったミステリーが読みたい人

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「老い蜂」 櫛木理宇

一昔前、<お年寄り>という言葉が持つイメージは、貫禄や老練、泰然自若といったものでした。最近はどうでしょうか。老害、暴走老人、シルバーモンスター・・・残念ながら、そんなマイナスイメージのある単語が飛び交っているのが現状です。もちろん、老若男女問わず、非常識で悪質な人間はいつの時代も大勢いました。ただ、感情をコントロールする前頭葉の機能は、ただでさえ加齢により低下するもの。加えて、核家族化や非婚化が進む現代において、かつてのように家族と暮らすことができず、コミュニケーション能力が一気に衰えて暴走するお年寄りが増えたことは事実だと思います。

これまでこのブログでは、中山七里さんの『要介護探偵の事件簿』や宮部みゆきさんの『淋しい狩人』といった、老いてなお気力も知力も若者に負けず、経験を活かして活躍するお年寄りの小説を取り上げてきました。こんなお年寄りばかりなら何の問題もないのですが、悲しいかな、善人もいれば悪人もいるのが世の常です。今回は、読者の背筋を凍らせるような老人が出てくる作品をご紹介します。櫛木理宇さん『老い蜂』です。

 

こんな人におすすめ

老人ストーカーが絡んだサイコスリラーに興味がある人

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「嗤う淑女 二人」 中山七里

<クロスオーバー>という手法があります。これは異なる作品同士が一時的にストーリーを共有する手法のことで、主にアメリカンコミックの世界で発達したのだとか。映画化もされた『アベンジャーズシリーズ』で、アイアンマンやハルク等、違う作品のキャラクター達が共演して大活躍したことは、ご存知の方も多いと思います。

もちろん、小説分野でもクロスオーバー作品はたくさん存在します。その中で一つ挙げてみろと言われたら、中山七里さんの作品を出す方が多いのではないでしょうか。『静おばあちゃんと要介護探偵』では高円寺静と香月玄太郎が共闘し、『作家刑事毒島』には『刑事犬養隼人シリーズ』の登場人物が多数出てきます。それからこの作品でも、意外すぎるキャラ同士が共演しているんですよ。今回は、中山七里さん『嗤う淑女二人』を取り上げたいと思います。この作品の性質上、『連続殺人鬼カエル男シリーズ』のネタバレに触れざるを得ないので、未読の方はご注意ください。

 

こんな人におすすめ

最恐悪女の無双ぶりを読みたい人

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「出版禁止 いやしの村滞在記」 長江俊和

新年明けましておめでとうございます。二〇一六年に開設した当ブログは、あと数カ月でめでたく六年目を迎えます。開始当初は、三日坊主になるのではないか、ちょっと不安だったものですが、閲覧してくれる皆様のおかげでここまで続けることができました。相変わらず趣味丸出しの偏ったレビューサイトになると思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

毎年、その年最初の記事を書くたび、「新年くらいすっきりハッピーエンドのおめでたい小説を取り上げよう」と思うものの、なかなか実現していないのが現状です。ハッピーエンドの話も大好きなのですが、振り返ってみると、なぜかイヤミスやホラー寄りの読書歴になっているんですよね。それがこのブログの特色ということで、二〇二二年一発目はこの小説にしようと思います。長江俊和さん『出版禁止 いやしの村滞在記』です。

 

こんな人におすすめ

ルポルタージュ風のどんでん返しミステリーが読みたい人

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「貴船菊の白」 柴田よしき

日本語って、とても美しい言語だと思います。もちろん、どの民族にとっても自国の言葉は誇れるものなのでしょうが、神々が出雲大社に集まる十月を<神無月>(出雲地方では神在月)と呼んだり、雪の結晶の多くが六角形をしていることから雪を<六花>と表現したりする感覚は、日本語独自のものではないでしょうか。こういう雅な表現が大好きな私は、学生時代、古文の資料集を読んで悦に入っていたものです。

美しい日本語が出てくる小説となると、夏目漱石や川端康成、梶井基次郎といった、一昔前の文豪達の作品がたくさん挙がります。そういうのは取っつきにくいからまずは現代の作家さんで・・・という場合は、江國香織さんの『すいかの匂い』、長野まゆみさんの『少年アリス』、恩田陸さんの『蛇行する川のほとり』など、日本語の涼やかさや気品高さをたっぷり堪能できますよ。それから、この作品の言葉選びもうっとりするほど魅力的でした。柴田よしきさん『貴船菊の白』です。

 

こんな人におすすめ

京都を舞台にしたサスペンス短編集が読みたい人

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「ボランティア・スピリット」 永井するみ

<ボランティア>の語源は、十字軍結成の際、神の意思に従って従軍した志願兵のことだそうです。現在でも、自ら進んで軍人となった志願兵のことを<ボランティア>と呼ぶことがあるのだとか。現代日本でこういう使われ方をすることはまずありませんが、<自分の意思で公共性の高い行動に参加する>という点では共通していますね。

ただし、この世のすべての物事がそうであるように、善行であるはずのボランティアにも問題点が存在します。どんな問題か、一つ一つ挙げるときりがないので省略しますが、突き詰めると、ボランティアを行う側と受けれる側の意識の問題に帰結するのではないでしょうか。この作品を読んで、そんなことを考えました。永井するみさん『ボランティア・スピリット』です。

 

こんな人におすすめ

人の心の闇をテーマにした小説が読みたい人

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