SF

はいくる

「5分で読める! ひと駅ストーリー 冬の記憶 東口編」 このミステリーがすごい!編集部

暦の上では秋になり、店先に並ぶファッションアイテムも秋を意識したものが増えました。とはいえ、気候はまだまだ夏そのもの。半袖シャツも、帽子も、キンキンに冷えた飲み物も、当分手放せそうにありません。

私はけっこう夏好きな人間ですが、これほど暑いとやはりひんやりした冬が恋しくなります。季節としての冬が遠いなら、せめて小説で冬気分を味わうのも一つの手ではないでしょうか。そんな時はこれ。「このミステリーがすごい!」編集部による『5分で読める! ひと駅ストーリー 冬の記憶 東口編』です。

 

こんな人におすすめ

冬をテーマにしたバラエティ豊かなアンソロジーが読みたい人

続きを読む

はいくる

「死者は黄泉が得る」 西澤保彦

人は時に<恐らく絶対実現不可能だろうけど、願わずにはいられない夢>を見てしまうことがあります。世界中の富をすべて手中に収めてしまいたい、かもしれない。片思いの相手が一夜にして自分に夢中になればいいのに、かもしれない。人によって願う夢も様々でしょうが、<亡くなった人が甦ればいいのに><死んでもまた生き返りたい>と思う人は相当数いそうな気がします。

古来より、死者の復活は多くの人類にとっての願いでした。あまりに願いが強すぎて、怪しげな薬に走ったり、残酷な人体実験に手を染める者までいたほどです。大往生を遂げた老人ならまだしも、この世には不幸な死を遂げる人が大勢いるわけですから、彼ら彼女らが甦れば、そりゃ嬉しいこと楽しいこともたくさんあるでしょう。しかし、どんな物事であれ、表があれば裏もあるもの。自然の摂理に反した存在がどんな事態を招くか、誰にも予想はできません。今回ご紹介するのは、西澤保彦さん『死者は黄泉が得る』。死者復活に絡んだ悲劇と笑劇(喜劇ではない)を堪能することができました。

 

こんな人におすすめ

生ける屍が登場するSFミステリーに興味がある人

続きを読む

はいくる

「わくらば追慕抄」 朱川湊人

そこそこ大きな自治体の場合、たいてい地域内に複数の図書館を持っています。多くの図書館利用者は、その中から自宅や学校、勤務先に近く、通いやすい図書館を選んで利用しているのではないでしょうか。私も自宅近くに図書館があるため、時間があるたびに通うようになって早数年。書棚の位置もすっかり頭に入り、読みたい本を探すのも楽ちんです。

ですが、たまには馴染みのない図書館に行くのも楽しいです。同じ作家さんでも、図書館によって蔵書が違うので、「あ、そういえばこの本書いたのもこの人だっけ」「この本、見かけるの久しぶりだなぁ」と驚かされることもしばしば。もちろん、図書館に取り寄せ依頼をすればどの本だろうと届くのですが、書棚の間をぶらぶらして読みたい本を見つけた時の喜びは格別ですよね。先日、普段利用しない図書館に立ち寄ってみたところ、数年ぶりにこの本を見つけたので再読しました。朱川湊人さん『わくらば追慕抄』です。

 

こんな人におすすめ

・昭和を舞台にしたノスタルジックな小説が好きな人

・超能力が出てくる小説が読みたい人

続きを読む

はいくる

「複製症候群」 西澤保彦

クローンという言葉が最初に考案されたのは、一九〇〇年代初頭のことだそうです。意味は、分子・DNA・細胞・生体などのコピー。園芸技法の一つである<挿し木>はクローンの一種ですし、動物でもマウス、犬、羊、猿などでクローンが作成されています。人間のクローンは今のところ作られていないとされていますが・・・実際はどうなんでしょうか?

現実に動物のクローンを作る場合、誕生するのは<オリジナルとまったく同じ遺伝情報を持つ赤ん坊>ですが、SF作品ではしばしば、オリジナルと年齢も容姿もそっくりそのまま同じなクローンが登場します。ただ、見た目は瓜二つでも記憶まではコピーできないとか、ものすごく残虐な性質を持つとか、何らかの形でオリジナルとの差異が生じるケースが多い気がしますね。では、この作品に登場するクローンはどうでしょう。西澤保彦さん『複製症候群』です。

 

こんな人におすすめ

クローンが登場するクローズドサークル・ミステリーが読みたい人

続きを読む

はいくる

「鋏の記憶」 今邑彩

サイコメトリーという言葉をご存知でしょうか。これは超能力の一種で、物体に残る人の残留思念を読み取ること。特に考古学との関係が深く、発掘された考古学品の過去を読み取って研究に役立てる事例は、世界中に存在するそうです。

日本において、瞬間移動やテレパシーなどと比べるとあまり知られていなかったサイコメトリーの知名度を上げたのは、樹林伸さん原作の漫画『サイコメトラーEIJI』でしょう。松岡昌宏さん主演によるドラマがヒットしたこともあり、「超能力はよく分からないけど、サイコメトリーという言葉は知っている」という方も多いのではないでしょうか。小説では、宮部みゆきさんの『龍は眠る』『楽園』でもサイコメトリーが出てきました。それからこれも面白かったですよ。今邑彩さん『鋏の記憶』です。

 

こんな人におすすめ

サイコメトリーを扱ったミステリーが読みたい人

続きを読む

はいくる

「瞬間移動死体」 西澤保彦

SFやファンタジーの世界では、しばしば超自然的な能力が登場します。創作物の中ではとても魅力的な要素となり得ますが、現実世界に置き換えた場合、「こんな能力があっても困るよな・・・」と思うものも多いです。<辺り一帯に大地震や地割れを起こす能力>なんて、現代日本で必要となる機会がそうそうあるとも思えません。

一方、使い勝手が良く、日常生活で役立ちそうな超能力も色々あります。<瞬間移動>なんて、その筆頭格ではないでしょうか。これは物体を離れた場所に送ったり、自分自身が離れた場所に瞬時に移動する能力のこと。こんな能力があれば、通勤や通学、レジャーなどで移動する時も楽ですし、非常時の避難だって簡単にできます。とはいえ、メリットがあればデメリットもあるというのがお約束。では、瞬間移動ならどうかというと・・・?そんな諸々の悲喜劇を描いた作品がこれ。西澤保彦さん『瞬間移動死体』です。

 

こんな人におすすめ

超能力が絡んだ本格ミステリが読みたい人

続きを読む

はいくる

「人格転移の殺人」 西澤保彦

<あの人は人が変わってしまった>という言い回しがあります。ある人の性格や行動パターンが唐突にガラッと変わった時によく用いられますね。現実では、本当に人が変わったわけではなく、何らかのきっかけにより人となりが激変したというケースがほとんどでしょう。

一方、フィクションの世界の場合、例えでも何でもなく本当に<人が変わった>ということがあり得ます。こういう設定で有名なのは、東野圭吾さんの『秘密』。事故で死んだ娘の体に、同じく事故死した母親の魂が宿ってしまうというヒューマンファンタジーでした。何度も映像化されているので、ご存知の方も多いと思います。ただ、私が<人が変わった>系の小説で連想するのは、実はこちらの方なんですよ。西澤保彦さん『人格転移の殺人』です。

 

こんな人におすすめ

SF設定が絡んだミステリーが読みたい人

続きを読む

はいくる

「さよならの儀式」 宮部みゆき

私は基本的にどんなジャンルの小説も抵抗なく読む人間ですが、改めて自分の読書歴を振り返ってみると、SF小説の読破率が低いことに気付きました。実際、このブログでも、SF小説の登場頻度は低いです。どうしてだろうと自分で考えた結果、「なんとなく感情移入しにくいから」ではないかなと推測・・・私の理解を遥かに超えたテクノロジーとかの話を持ち出されると、つい一歩引いてしまうみたいです。

逆に、私の頭でも設定や世界観が理解しやすいSF作品なら、楽しく読むことができます。筒井康隆さんの『時をかける少女』や重松清さんの『流星ワゴン』、東野圭吾さんの『パラレルワールド・ラブストーリー』などは、SFながら設定は現代に通じていて、共感できる部分が多かったですね。先日読んだSF作品もそうでした。宮部みゆきさん『さよならの儀式』です。

 

こんな人におすすめ

ビターなSF短編小説集が読みたい人

続きを読む

はいくる

「あなたの本」 誉田哲也

昔、私は2ちゃんねる(現5ちゃんねる)が好きで、手持無沙汰な時間にちょこちょこ覗いていました。以前と比べると頻度が落ちましたが、唯一、<後味の悪い話>というスレッドのみ、今も定期的に進行をチェックしています。タイトルが示す通り、自分の知っている後味の悪い話を投稿するスレッドで、実体験・小説・映画・アニメなどジャンルは不問。イヤミス好きな私の心をくすぐる投稿も多く、ここでこれから読む本を見つけることもありました。

このスレッドを見ていてつくづく思うのは、「後味の悪い話を簡潔かつ面白くまとめるのって難しいな」ということです。もちろん、どんな話だって難しいんでしょうが、後味の悪い話の場合、内容が重苦しい分、だらだら文章を書き連ねると<読みにくい><中身が暗い>のダブルパンチでウンザリ度合も上がるというか・・・真梨幸子さんや櫛木理宇さんのようなどんより暗い長編イヤミス作品も大好きですが、コンパクトで切れ味鋭い短編イヤミスを見つけた時は嬉しさもひとしおです。今回は、そんな短くも後味悪い小説を集めた短編集を取り上げたいと思います。誉田哲也さん『あなたの本』です。

 

こんな人におすすめ

『世にも奇妙な物語』のような短編小説が読みたい人

続きを読む

はいくる

「10分間ミステリー」 『このミステリーがすごい!』大賞編集部 編

芥川龍之介賞、直木三十五賞、吉川英治文学賞、山本周五郎賞・・・・・文壇には様々な文学賞があります。インターネットなどを経て人気を集める作家さんや作品も増えてきましたが、それでもやはりこうした文学賞には価値があるもの。権威ある賞の受賞をきっかけにデビューした作家さんは大勢います。

そんな文学賞の中で、私が一番注目しているのは『このミステリーがすごい!』大賞です。二〇〇二年に創設された新しい賞ですが、海堂尊さんの『チーム・バチスタの栄光』や柚月裕子さんの『臨床心理』、中山七里さんの『さよならドビュッシー』など、受賞を機にスターダムの仲間入りをした人気作家さんも多いです。今回は、そんな『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家さんがずらりと並んだアンソロジーをご紹介します。『10分間ミステリー』です。

 

こんな人におすすめ

ショートショートが詰まった短編集が読みたい人

続きを読む