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「かがみの孤城」 辻村深月

何でも願い事を一つ叶えてあげる・・・物語によくあるシチュエーションです。もしそんな局面に直面した時、人は何を願うのでしょうか。私は想像力貧困ですので、いざそういう状況になったら、「家内安全、無病息災」くらいしか思いつかないかもしれません(笑)

しかし、世の中には、切実に叶えたい願いを持つ人もいます。どうにもならない現実に苦しみ、人ならざるものの力を借りてでもそれを打開したいと願う子どももいます。今日取り上げる小説には、そんな子どもたちが登場します。辻村深月さん『かがみの孤城』です。

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「ジゼル」 秋吉理香子

幼稚園の頃、バレエを習っていたことがあります。きっかけは曖昧ですが、たぶん、綺麗な衣装に憧れたとか何とかいう理由でしょう。残念なことに長続きしませんでしたが、間近で見たチュチュやジョーゼットが素敵だったことは今でも覚えています。

その優雅な美しさで人々を魅了するバレエ。しかし、人間が行うものである以上、優雅なばかりではいられません。見えない所で必死に足を動かす白鳥のように、バレエ界には水面下での熾烈な戦いや争い、感情のぶつかり合いが満ちています。最近読んだ小説により、そのことがよく分かりました。秋吉理香子さん『ジゼル』です。

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「素敵な日本人」 東野圭吾

新年あけましておめでとうございます!このブログも開設して一年半を過ぎました。ここまで続けてこられたのは、お付き合いくださる皆さんのおかげです。拙い文章と内容ばかりですが、2018年もどうぞよろしくお願いします。

新しい年を迎えてすぐは何かと慌ただしく、ゆっくり読書する時間を取ることが難しいかもしれません。そういう時は、重厚な大長編より、さっくり読める短編の方が手を出しやすいのではないでしょうか。それならこの短編集がお薦めですよ。東野圭吾さん『素敵な日本人』です。

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「我らがパラダイス」 林真理子

現在日本において、介護はもはや社会的な問題です。新聞でもテレビでも、介護に関する話題が出ない日はないと言っても過言ではありません。いつ何時、自分が介護する側、あるいはされる側になるか、不安に思う人も多いのではないでしょうか。

こういうご時世ですので、介護をテーマにした小説はそれこそ星の数ほどあります。ミステリーなら東野圭吾さんの『赤い指』、ヒューマンドラマでは篠田節子さんの『長女たち』、青春小説の側面もある木村航さんの『覆面介護師ゴージャス☆ニュードウ』など、どれも面白い作品ばかりでした。ですが、インパクトという点ではこれがトップクラスではないでしょうか。林真理子さん『我らがパラダイス』です。

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「婚活中毒」 秋吉理香子

人はなぜ結婚したいと思うのでしょうか。子どもが欲しいから?社会的な信用を得たいから?一人でいるのは孤独だから?理由は様々でしょうが、突き詰めればすべて「幸せになりたいから」に繋がると思います。

しかし、幸せと不幸せは表裏一体。幸福を得るために取った行動のせいで、思わぬ泥沼にはまってしまうことだってありえます。今回取り上げるのは、婚活の予想外の落とし穴を描いたミステリー、秋吉理香子さん『婚活中毒』です。

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「殺人鬼フジコの衝動」 真梨幸子

殺人鬼。これほど禍々しい響きを与える言葉ってそうそうないんじゃないでしょうか。「殺人」だけでも十分恐ろしいのに、その後に「鬼」が付くなんて。何より恐ろしいのは、そんな殺人鬼が現実にもしっかり存在することでしょう。

一方、フィクションの世界に登場する殺人鬼は、決して恐ろしいだけの存在ではありません。貴志祐介さん『悪の教典』の蓮見聖司然り、トマス・ハリス『羊たちの沈黙』のレクター博士然り、殺人鬼たちはその残酷さを以て読者を惹きつけます。そんな小説界の殺人鬼名鑑には、彼女の名前も載せるべきでしょう。真梨幸子さん『殺人鬼フジコの衝動』に登場するフジコです。

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「満願」 米澤穂信

短編小説と長編小説、どちらが好きですか?私はというと、どちらも好き(笑)それぞれに面白さがあり、どちらが優れていると決められるものではありません。

ただ、個人的な意見として、ミステリーやホラーのジャンルでびしっと決まる短編小説を書くのは難しい気がします。トリックや人間関係が入り組んでいる場合が多い分、少ないページでまとめるのが大変に思えるのです。そんな困難を乗り越え、面白い短編小説を集めた作品はたくさんありますが、今日ご紹介するのはこれ。「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」でいずれも一位を獲得した、米澤穂信さん『満願』です。

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「ネメシスの使者」 中山七里

復讐。なんとも強烈で攻撃的ながら、不思議と人を惹きつける力のある言葉です。復讐がテーマの創作物の場合、しばしばギリシア神話の女神<ネメシス>が登場します。私、てっきりネメシスは<復讐>を司る女神と思い込んでいましたが、それは誤訳であり、本来は<義憤>を意味するそうですね。

酷い仕打ちを受けた者が加害者に対して行う仕返しが<復讐>であり、道理の通らない行いに対する怒りが<義憤>。後者の場合、怒っているのは必ずしも被害者本人とは限りません。先日、この二つの言葉の違いについて考えさせられる小説を読みました。中山七里さんの『ネメシスの使者』です。

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「幸せ戦争」 青木祐子

幸せになること。それは恐らく、人類共通の願いでしょう。理想とする形こそ違えど、人は誰しも幸せになるために泣き、笑い、失敗と成功を繰り返しながら生きています。

ですが、ある人にとっての幸せが、他の人間にとっても幸せであるとは限りません。良かれと思って取った行動が、他人にしてみれば無価値・・・どころか不幸の原因になることだってあり得ます。この作品を読んで、私は「幸せって何だろう」と考えさせられました。ジュブナイル作家としても有名な青木祐子さん『幸せ戦争』です。

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「初恋料理教室」 藤野恵美

堂々と言うようなことではありませんが、私は料理が苦手です。食べることは大好きなんですが、自分で作るとなると無頓着かつ大雑把。料理本やインターネットで調べた簡単なメニューを機械的に作ることがほとんどで、皿に移せばいいだけの惣菜をスーパーマーケットで買ってくることもしばしばです。

料理上手になるための努力方法は人それぞれですが、中には料理教室に通ってスキルアップを計る人もいるでしょう。もしこんな料理教室が現実にあれば、私のような根っからのズボラ人間でも、料理の楽しさに目覚められるのではないでしょうか。大人向けの小説だけでなく、ジュニア小説の名手としても名高い藤野恵美さん『初恋料理教室』です。

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