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「神のロジック、人間(ひと)のマジック」 西澤保彦

甘ったれで気弱な子どもだった私が怖かったもの、それは「親から離れてのお泊まり」です。幼稚園のお泊まり教室などはもちろんのこと、祖母の家へのお泊まりさえ途中で寂しくなり、夜に自宅に帰ったこともありました。小学校の修学旅行にも戦々恐々としながら参加し、いざ始まってみて「あれ、意外と楽しいじゃん」と思ったことを覚えています。

子ども達が親元を離れて寝起きする。考えてみれば、これってちょっと特殊なシチュエーションですよね。ただの合宿や寮生活なら問題ありませんが、もし何らかの事情で家族と一緒にいられない子ども達を隔離しているのだとしたら・・・?そんな不可思議な世界を描いた作品がこれです。西澤保彦さん『神のロジック、人間(ひと)のマジック』です。

こんな人におすすめ

叙述トリックの驚きを味わいたい人

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「そのバケツでは水がくめない」 飛鳥井千砂

人間関係を築く上で一番大切なものは何でしょうか。相手への愛情?気遣い?関係を作るための努力?全部大切ですが、私は「距離感」を挙げます。親子であれ友達であれ恋人であれ夫婦であれ、違う人間である以上、一心同体にはなれません。そのことを忘れず、適度な距離と節度を持ってこそ、いい人間関係が作られるのだと思います。

人間関係を巡るトラブルの内、この距離感の見誤りが原因となるものは多いです。それは小説の世界においても同じ。壮大なものとなると、シェイクスピアの『リア王』なんてまさにその典型ではないでしょうか。今回取り上げるのは、飛鳥井千砂さん『そのバケツでは水がくめない』。人との関わり方、人間関係の築き方について考えさせられました。

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「女王はかえらない」 降田天

スクールカースト。読んで字のごとく、学校内における人気順位をカースト制度になぞられた言葉です。上位に位置する者ほど発言権が強く、下位の者はクラスの日陰者、どころか下手すればいじめの対象にもなりえます。私の学生時代にも似たような上下関係はありましたが、当時はネットなどがそれほど普及していなかった分、少なくとも校外には逃げ場がありました。今はSNSなどを使えば、最悪の場合、全世界に悪口をばらまかれる可能性もあるわけですから、つくづく怖いなと思います。

言葉自体が定着したのは割と最近なような気がしますが、スクールカーストを扱った小説は昔からありました。山田詠美さんの『風葬の教室』など一九八八年の作品ですし、二〇〇三年に芥川賞を受賞した綿谷りささんの『蹴りたい背中』も学校内での人間模様がテーマです。最近では、映画版も話題になった朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』などが有名ですね。今回は、私が読んだスクールカーストものの中でもトップ3に入るほど陰惨な作品を紹介します。降田天さん『女王はかえらない』です。

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「オーブランの少女」 深緑野分

近所の図書館は視聴覚資料のラインナップがけっこう豊富です。大ヒットした大作映画はもちろん、ミニシアター系の小品からウケ狙いとしか思えないB級映画まで、バラエティ豊かに揃えられています。先日、その中にお気に入りの作品があるのに気付き、久しぶりに借りて鑑賞しました。ルシール・アザリロヴィック監督の『エコール』。閉ざされた学校で不思議な共同生活を送る少女たちの姿が、なんとも幻想的で美しかったです。

「子ども」がテーマの創作物はたくさんあります。特に「少女」がキーパーソンだった場合、「少年」の時と比べてより妖しく、より残酷な存在になることが多い気がしますね。そんな美しくも謎めいた少女達を扱った作品がこれ、深緑野分さん『オーブランの少女』です。

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「盤上の向日葵」 柚月裕子

この記事を書いているのは二〇一八年ですが、一年ほど前から国内で空前の将棋ブームが巻き起こりました。史上最年少でプロ棋士となった藤井聡太四段の存在、ひふみんこと加藤一二三九段の引退とその後のメディアでの活躍、羽生善治棋聖の国民栄誉賞受賞など、華やかな話題が目白押し。私自身は将棋崩しくらいしか知らない人間ですが、古くからある文化がこうして注目されるのは喜ばしいことですね。

将棋をテーマにした作品は何かと聞かれれば、私が真っ先に思い浮かべるのは大崎善生さんのノンフィクション小説『聖の青春』でした。夭折した実在の天才棋士・村山聖さんをテーマとした迫力ある内容が話題を呼び、藤原竜也さん主演でドラマ化、松山ケンイチさん主演で映画化されたことでも有名です。これと並び立つインパクトの将棋作品はあるのか・・・と思っていましたが、最近読んだ小説もなかなかどうして負けてはいません。柚月裕子さん『盤上の向日葵』です。

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「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」 西澤保彦

人はどんな時に役所を利用するのでしょうか。引っ越しや結婚、出産などによる諸々の手続き、各所へ提出する戸籍等の重要書類の請求、自治体が運営するイベントへの参加etcetc・・・ぱっと思いつくだけでも色々あります。最近は役所内の飲食施設も結構充実しているそうですから、そういうところを利用する人もいるかもしれません。

地域住民の味方となり、生活の手助けをすべき役所。悲しいかな、その役割放棄しているとしか思えないような事件もありますが、大多数の職員さんたちは使命を全うするため日々努力しているはずです。この作品に出てくる彼も同じこと。迷える人々に手を差し伸べ、的確なアドバイスを授けてくれます。西澤保彦さん『腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿』です。

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「お隣さんが殺し屋さん」 藤崎翔

現在地方在住の私ですが、一時期、首都圏に住んでいたことがあります。上京した時は、生まれて初めてのお江戸暮らしにわくわくどきどき。芸能人と会えるかな、ドラマの撮影現場に出くわすかなと、胸を高鳴らせていました。まあ、実際はそうドキドキすることがあるわけもなく、ごく普通に生活していただけですけどね。

新しい環境での生活を始めるとなると、誰でも多かれ少なかれ緊張したり期待したりすると思います。楽しい出来事があるといいけれど、もしかしたら危ない目や怖い目に遭うかもしれない。命の危険さえ感じる出来事があるかもしれない。たとえば、新居の隣人がとんでもない人物だったりとか・・・・・今回取り上げる藤崎翔さん『お隣さんが殺し屋さん』には、そんな驚愕の「お隣さん」が登場します。

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「定年オヤジ改造計画」 垣谷美雨

「濡れ落ち葉」という言葉が流行語大賞を受賞したのは一九八九年のことだそうです。意味は「濡れた落ち葉が払ってもなかなか落ちないように、主に定年退職後の夫が妻にべったりはりついて離れないこと」。男声差別だという意見もあったようですが、流行語大賞を取った以上、多くの国民の間に浸透していたことは事実でしょう。

特にある程度以上の世代の男性の場合、仕事以外に趣味や交友関係を持たず、定年後にやることがなくて妻にまとわりつくというケースが多いようですね。まとわりつくならつくで、何か手伝いをしてくれるならまだしも、手は出さずに口だけ出すから嫌がられる、という話をよく聞きます。人間百年というこのご時世、リタイア後の人生を豊かに過ごせるか否かは自分自身の努力次第です。どう努力すればいいか分からないという人は、これを読んでみてはいかがでしょうか。垣谷美雨さん『定年オヤジ改造計画』です。

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「名探偵は密航中」 若竹七海

飛行機、新幹線、電車、自家用車・・・どれも旅行で利用したことのある私ですが、船旅は未だ経験したことがありません。乗ったことがあるものといえば、乗船時間十分程度のフェリーくらい。船酔いしやすい体質ということもあり、数時間の移動はもちろん、数週間、数カ月をかける長期クルーズなど夢のまた夢です。

一度出向したら最後、四方を大海原に囲まれ、ちょっとやそっとのことでは逃げ出すことのできない船の旅。そんな特殊な状況下なわけですから、船の上ではきっと様々なドラマが繰り広げられることでしょう。ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』などは世界各国で読まれていますし、北杜生さんの『どくとるマンボウ航海記』、福井春敏さんの『亡国のイージス』なども有名ですね。この船の上でも、驚くべき人間模様が展開されます。若竹七海さん『名探偵は密航中』です。

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「ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで」 真梨幸子

昔、友達と「もし大金持ちだったら言ってみたい台詞」を考える遊びをしたことがあります。私が考えたのは、(1)「端から端まで全部頂くわ」(2)「映画監督のAさん?いい方よ。レマン湖畔の乗馬倶楽部でよくご一緒するの」(3)「〇〇って最近流行っているみたいね。うちの外商さんに取り寄せてもらおうかしら」でした。三つのうち、(1)は店を選べば(駄菓子屋とか)実現可能、(2)は今生では恐らく無理なので来世に期待、(3)はかなり難しいけど(2)に比べればまだ可能性あるかも・・・というところでしょうか。友達の間では、この外商ネタが一番共感してもらえました。

先日読んだ小説によると、そもそも外商とは呉服屋の御用聞き制度が元になっており、顧客の生活すべてをサポート、必要とあらば悩み相談にも応じるコンパニオン的存在だったんだとか。確かに百貨店ならば衣食住すべてに関わる商品を扱っていますし、その商品を顧客のため用意する外商は、「暮らしのトータルコーディネーター」と呼べるのかもしれません。もしも、対価と引き換えにあらゆる相談事に応じてくれる外商がいれば、生活がどれほど楽になるでしょうか。真梨幸子さん『ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで』には、そんな凄腕外商が登場するんです。

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