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「僕の明日を照らして」 瀬尾まいこ

テレビや新聞のニュースを見ていると、数日と置かずして家庭内暴力に関する事件が目に付きます。言葉の使用法としては、配偶者への暴力を<ドメスティックバイオレンス>、子どもへの暴力を<児童虐待>と使い分けるんだとか。もちろん、暴力は誰に対してだろうと悪いことなのですが、腕力のない女性や子どもが犠牲になると、「許せない」という気持ちが一層強まります。

しかし、虐待がどんなに酷いものであったとしても、日本が法治国家である以上、「虐待犯は全員海に沈めました。めでたしめでたし」というわけにはいきません。加害者はなぜ虐待に走ってしまったのか。暴力がまかり通った背景は何なのか。そこをしっかり解明し、再発防止に努めないと、第二、第三の犠牲者が出る可能性すらあります。今回ご紹介するのは、瀬尾まいこさん『僕の明日を照らして』。家族間で行われる暴力について、改めて考えさせられました。

 

こんな人におすすめ

児童虐待にまつわる小説に興味がある人

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「いつかの岸辺に跳ねていく」 加納朋子

<超能力の例を一つ挙げてみなさい>と言われたら、どんな能力が出て来るでしょうか。口から言葉を発せずに意思を伝えるテレパシー、視界に入らないはずの出来事を見る透視能力、手を使わずに物を動かす念動力・・・どれもこれも有名な能力ですが、それらと並んで知名度が高いのが<予知能力>です。文字通り、その時点で起こっていない出来事を予め知る力のことで、かの有名なノストラダムスもこの能力の持ち主として有名です。

下手するとチート状態になりかねない能力のせいか、漫画や映像作品と比べると、小説の予知能力者の登場率はさほど高くありません。それでも、宮部みゆきさんの『鳩笛草』収録作品である「朽ちてゆくまで」や筒井康隆さんの『七瀬ふたたび』では、予知能力者の悲哀や葛藤が丁寧に描かれていました。今回ご紹介する作品は、加納朋子さん『いつかの岸辺に跳ねていく』。切なく、やるせなく、それでいて優しい予知能力者の物語です。

 

こんな人におすすめ

予知能力が登場するヒューマンストーリーが読みたい人

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「笑え、シャイロック」 中山七里

私は基本的にどんなジャンルの小説も読む人間です。切なくも甘酸っぱい青春ラブコメだろうと、血飛沫が飛び内臓はみ出るスプラッターホラーだろうと、面白ければ何でもOK。そんな私が唯一、「なんとなくとっつきにくいかな」と思うジャンル、それが金融・経済小説です。根っからの文系人間のせいか、用語や世界観がなかなか頭に入ってこないんです。

ですが、面白いと感じた金融小説が一冊もないわけではありません。特に、池井戸潤さんの『半沢直樹シリーズ』と真山仁さんの『ハゲタカシリーズ』は、映像化されたこともあって世間一般の知名度も高いですね。今回ご紹介するのは、中山七里さん『笑え、シャイロック』。もしかしたら上記の作品と並ぶ人気シリーズになるかもしれません。

 

こんな人におすすめ

銀行員が主役のミステリーが読みたい人

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「ひとんち」 澤村伊智

ホラー作品は、大きく分けて二つのタイプがあると思います。それは<自業自得>系と<理不尽>系。前者は、恐怖体験をする原因が(善意悪意は問わず)自分自身にあるタイプで、五十嵐貴久さんの『リカ』や今邑彩さんの『赤いべべ着せよ・・・』などがこれに当たります。

後者の<理不尽>系はというと、主人公サイドには何の落ち度も因果もなく、「そこにいたから」「怪異に目を付けられたから」という理由で恐ろしい思いをするタイプの作品です。登場人物が何か原因となる行動を取ったわけではないので、読者に「もしかしたら私もこんな目に遭うかも・・・」と思わせる怖さがありますね。例を挙げると、明野照葉さんの『棲家』や、ブログでも紹介した小池真理子さんの『墓地を見おろす家』などがあります。先日読んだホラー小説も、このタイプの作品でした。澤村伊智さん『ひとんち』です。

 

こんな人におすすめ

バラエティー豊かなホラー短編集が読みたい人

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「怖い女の話」 柴田哲孝

今までこのブログでは、<怖い女>が登場する小説をたくさん取り上げてきました。別に狙ったわけではありませんが、それらの小説の大半は、作者が女性だった気がします。女性作家の手で綴られる女の狂気や愛憎の恐ろしさはやはり格別。読んでいて鳥肌が立ちそうになることすらあるほどです。

その一方、男性作家が描く<怖い女>の中にも、強烈な猛者がうようよいます。男性作家の場合、悪女に翻弄される男性被害者の描写にも力が入るんですよね。この辺りは、中山七里さんの『嗤う淑女』や、五十嵐貴久さんの『リカ』などを読めば実感できると思います。例に挙げた二作品は、どちらも一人の<怖い女>が活躍(?)する話なので、今回は多種多様な<怖い女>が登場する作品をご紹介します。作家だけでなく冒険家としての顔も持つ、柴田哲孝さん『怖い女の話』です。

 

こんな人におすすめ

女性の狂気をテーマにしたサイコサスペンスが読みたい人

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「ぬるくゆるやかに流れる黒い川」 櫛木理宇

今更言うまでもない話ですが、殺人という犯罪は多くのものを奪っていきます。被害者本人の命や尊厳はもちろん、その家族の人生をも大きく揺るがし、ひっくり返し、時に破壊してしまうことすらあり得ます。昔見たドラマで、息子を殺された父親が言っていた「家族全員殺されたようなものだ」という台詞は、決して大げさなものではないのでしょう。

そんな被害者遺族の苦しみをテーマにした作品はたくさんあります。有名なものだと、東野圭吾さんの『さまよう刃』や『虚ろな十字架』、薬丸岳さんの『悪党』といったところでしょうか。今回取り上げる小説にも、理不尽な犯罪に傷つき苦しむ遺族が登場します。櫛木理宇さん『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』です。

 

こんな人におすすめ

歴史的要素の絡んだサスペンスが読みたい人

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「八月六日上々天気」 長野まゆみ

季節は夏真っ盛り。この時期は全国各地で楽しいイベントが催され、どことなく明るいムードがそこここに漂います。夏という季節は私達に活気をもたらしますが、同時に、胸を打つ悲しい事実をもまた思い起こさせます。それが戦争です。

一九四五年八月、日本には二つの原子爆弾が落とされ、終戦を迎えました。唯一の被爆国である日本が平和の大切さや戦争の悲惨さを訴える機会は多いですが、この時期はそれがより顕著に表れます。今回は、戦争にまつわる悲劇を扱った作品を取り上げたいと思います。小説家だけでなくイラストレーターとしての顔も持つ、長野まゆみさん『八月六日、上々天気』です。

 

こんな人におすすめ

戦時中の人間模様をテーマにした作品が読みたい人

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「家守」 歌野晶午

以前、別作品のレビューで、「<家>という場所には、人をとらえるイメージもある」と書きました。一説によると、<家>は<宀(家)>と<豕(豚)>が組み合わさってできた漢字であり、<豚などの家畜を生贄に捧げた呪法的な護りのある場所>という意味があるんだとか。どの程度信憑性がある話かは分かりませんが、もしこれが本当なら、<家>がホラーやミステリーの舞台になりやすいのも納得です。

前回ご紹介した<家>にまつわる作品はホラーだったので、今回はミステリーを取り上げたいと思います。歌野晶午さん『家守』。この方の短編集を読むのは久々ですが、安定の面白さで大満足でした。

 

こんな人におすすめ

<家>をテーマにしたミステリー短編集が読みたい人

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「初恋さがし」 真梨幸子

ミステリーには、<主役にしやすい職業>というものがあります。高い調査能力や行動力を持ち、事件と関わる確率の高い職業の方が、物語を始めやすいですからね。たとえば刑事や弁護士、検事、ジャーナリストなどなど。探偵もその一つです。

日本の名探偵といえば金田一耕助や明智小五郎などが有名ですが、現代日本において探偵が堂々と大事件に関わる機会はそうそうありません。現代では<探偵事務所>や<興信所>の職員が、人探しや素行調査を行う過程で事件と関わるというパターンが多いです。加納朋子さんの『アリスシリーズ』、柴田よしきさんの『花咲慎一郎シリーズ』などがそうですね。今回ご紹介する小説もその一つ。真梨幸子さん『初恋さがし』です。

 

こんな人におすすめ

テンポの良いイヤミスが読みたい人

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「指名手配作家」 藤崎翔

芸能人が小説を書くケースは多いです。その際、「芸能人に小説が書けるのか」という批判が巻き起こるのはお約束。特に、その芸能人が華やかな経歴の持ち主だった場合、批判が激しくなる傾向にあるようです。

ですが、芸能人に小説が書けないと決めつけるのは偏見というものでしょう。文学史上の例を挙げると、『クリスマス・キャロル』などで有名な世界的文豪チャールズ・ディケンズは、役者としての顔も持っていました。現代日本にだって、優れた小説を書く芸能人、あるいは元芸能人は大勢います。その中で私のお気に入りは藤崎翔さん。最近読んだ『指名手配作家』も、スピード感に溢れていて面白かったです。

 

こんな人におすすめ

コメディタッチの逃亡劇が読みたい人

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