ヒューマン

はいくる

「小学61年生」 朱川湊人

フィクション作品には<どんなクライマックスを迎えるか、早く知りたいもの>と<いつまでもストーリーを追い続けたいもの>の二つがあると思います。何をもってそう判断するかは人それぞれなのでしょうが、私の場合、前者は圧倒的にミステリーやホラー作品。早くオチでびっくりさせてほしい一心で、寝る間も惜しんで終盤まで一気読みすることもしばしばです。

一方、後者はコメディやヒューマン作品が多いです。感覚としては、変わらぬ日常を描く『サザエさん』『ドラえもん』が長年に渡って愛されるのと似たようなものでしょうか。藤崎翔さんの『お梅シリーズ』なんて、この先、五十巻を超える勢いで続いてほしいと切に願っています。先日読んだ作品も、いつまでも続いてほしいと思える青春小説でした。朱川湊人さん『小学61年生』です。

 

こんな人におすすめ

・特撮が好きな人

・若者たちの青春成長物語に興味がある人

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「花宵道中」 宮木あや子

一説によると、人類最古の職業は売春だそうです。実際にどうだったかは意見が分かれているようですが、相当に古い時代から存在した職業だということは事実の様子。人間の三大欲求である性欲に結び付いていること、体一つあれば就業可能なことがその理由なのかもしれません。

日本の場合、少なくとも万葉集の時代から売春が行われていたという記録が残っています。その時々で呼び方や就業形態は変わってきたようですが、現代では<女郎><遊女>という呼称がよく知られています。運と才覚に恵まれれば、花魁として上り詰めてお大尽すら袖にすることも、裕福な男に身請けされて贅沢三昧することも可能だった彼女達。と同時に、自由もなく借金漬けとなり、ひたすら体を酷使した挙句に働けなくなれば野垂れ死ぬしかなかった悲しい女性達です。今回は、そんな遊女たちの運命を描いた作品を取り上げたいと思います。宮木あや子さん『花宵道中』です。

 

こんな人におすすめ

遊女たちの切なく悲しい物語に興味がある人

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「さよならは明日の約束」 西澤保彦

推理小説の世界には、探偵役がコンビで事件に臨む、いわゆる<バディもの>が数多く存在します。天才的な探偵が一人で活躍する作品も面白いですが、コンビが各々の足りない部分を補いつつ事件解決を目指す姿も魅力的ですよね。個人的には、探偵役が二人組の方が、互いの人間的な部分の掘り下げが深まる気がします。

そして、コンビの組み合わせも、作品ごとに様々です。超有名な『シャーロック・ホームズシリーズ』のような男性二人組、宮部みゆきさん『寂しい狩人』のような老人&若者コンビ、櫛木理宇さん『逃亡犯とゆびきり』のような女性二人組、赤川次郎さん『三毛猫ホームズシリーズ』のような人間&人外の組み合わせ・・・その中には、男女でコンビを組む作品も、もちろんあります。ここ最近の傾向としては、行動力ある女性&サポート能力に秀でた男性という組み合わせが多い気がしますが、いかがでしょうか。今回は、そんなコンビが活躍する作品を取り上げたいと思います。西澤保彦さん『さよならは明日の約束』です。

 

こんな人におすすめ

日常の謎を扱ったミステリー短編集が読みたい人

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「変な地図」 雨穴

地図。その名の通り、土地の情報を記号や文字などを用いて平面上に表した図面のことです。文明の進歩に伴い、地図も進化してきましたが、原型となるものは旧石器時代から存在したのだとか。地理を視覚的に理解させ、適切な移動や情報分析を可能とする地図は、社会に必要不可欠な道具です。

現代において<地図>といえば、スマホやタブレット、パソコン上で簡単に検索でき、望めば目的地までナビしてくれる優れものですが、一昔前は違いました。必要な情報を得るため、紙の地図をじっくり眺め、ああでもないこうでもないと試行錯誤する必要があったのです。不便といえば不便なのかもしれませんが、そういう時代だからこそできる地図の使い方もあったのではないでしょうか。この小説を読んで、そんな風に思いました。今回は、雨穴さん『変な地図』を取り上げたいと思います。

 

こんな人におすすめ

・閉鎖的な村が登場するミステリーが好きな人

・『変な~シリーズ』のファン

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「ゆうべ、もう恋なんかしないと誓った」 唯川恵

物語が幸せな結末を迎える<ハッピーエンド>、主要キャラクターが不幸になる<バッドエンド>、傍から見れば不幸だけど当事者は満足している<メリーバッドエンド>、これまでのすべてがリセット・一からやり直しとなる<世界再編成エンド>・・・・・物語には、様々な結末があります。このエンディングが素晴らしいか否かで、作品の評価が決まると言っても過言ではありません。

こうしたエンディングの種類の一つに、<ビターエンド>というものがあります。読んで字のごとく、ほろ苦いエンディングのことで、バッドエンドほど不幸ではないがハッピーエンドとは言い難い・・・という結末を指します。個人的に、一番読者が身近に感じるエンディングはこれではないでしょうか。今日は、ビターエンドの恋愛小説を集めた短編集をご紹介したいと思います。唯川恵さん『ゆうべ、もう恋なんかしないと誓った』です。

 

こんな人におすすめ

ほろ苦い読後感の恋愛ショートショートに興味がある人

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「冥土レンタルサービス」 藤崎翔

死後、死者が一時的に現世に舞い戻り、心残りを晴らす。古今東西、ファンタジーやホラーのジャンルでよくあるシチュエーションです。死の先にも意識や世界がある、あってほしいというのは、人類共通の発想なのでしょうね。

よくあるシチュエーションだからこそ、どう個性的な色付けをするか、作者の技量が問われるテーマです。冷酷な金貸しのもとに仲間の亡霊が現れるチャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』、赤ん坊の体に死んだ夫が乗り移る加納朋子さん『ささらさや』、死者と生者を面会させられる能力者が主役の辻村深月さん『ツナグ』等、どれも魅力たっぷりの名作でした。最近読んだこの本も、とても面白かったですよ。藤崎翔さん『冥土レンタルサービス』です。

 

こんな人におすすめ

転生をテーマにしたヒューマンコメディに興味がある人

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「天使の名を誰も知らない」 美輪和音

<毒親>という言葉が作られたのは、一九八〇年代後半のことだそうです。意味は<子どもの人生を支配し、子どもに害悪を及ぼす親>。日本でも、二〇一五年頃には<ブーム>と表現してもいいほど有名な概念となり、書籍や映像作品でも頻繁に取り上げられてきました。

安易に「うちの親は毒親。毒親がすべて悪い」と言う風潮に対しては賛否両論あるようですが、子どもにとって、特にある時期まで親が神に等しいほど絶対的存在であることは事実。そして、悲しいかな、子どもを雑草以下としか思っていない親がいることもまた事実です。今回は、毒親問題について扱った作品を取り上げたいと思います。美輪和音さん『天使の名を誰も知らない』です。

 

こんな人におすすめ

毒親問題をテーマにした小説に興味がある人

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「本屋さんのダイアナ」 柚木麻子

ダブル主人公というのは、手がける際に注意が必要な物語形式だそうです。描き方を間違えると片方だけが目立ってしまったり、最悪、もう片方がただの引き立て役になってしまうことがあり得ることが理由なのだとか。そのため、一時期、特にWeb小説界隈では<ダブル主人公は鬼門>という常識まで存在したらしいです。

しかし、きちんと描きさえすれば、ダブル主人公はとても魅力的なジャンルです。テレビドラマ『相棒シリーズ』や、海堂尊さんの『田口・白鳥シリーズ』、森博嗣さんの『S&Mシリーズ』等々、人気を博し、長期シリーズ化した作品も少なくありません。今回は、私の大好きなダブル主人公小説を取り上げたいと思います。柚木麻子さん『本屋さんのダイアナ』です。

 

こんな人におすすめ

好対照の少女二人の成長物語に興味がある人

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「その手をにぎりたい」 柚木麻子

私は昔から魚介類が大好きです。海が近い地方で育ったせいか、肉より魚の方になじみ深さを感じます。子どもの頃はそれなりに好き嫌いがあったものの、魚に関しては、骨たっぷりの焼き魚だろうと、独特な匂いの青魚だろうと、ぱくぱく食べていたものです。

日本にはたくさんの魚介料理がありますが、その中でも代表的なのは寿司ではないでしょうか。新鮮な海産物と清潔な調理環境があって初めて成立する寿司は、今や世界に誇る日本のソウルフードです。今日は、寿司がキーアイテムとして使われる作品を取り上げたいと思います。柚木麻子さんの『その手をにぎりたい』です。

 

こんな人におすすめ

バブル期前後の女性の成長物語に興味がある人

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「骨肉」 明野照葉

昔読んだ小説に、こんな台詞がありました。「この世の争いのほとんどは、イロかカネが原因で起こる」。イロ(色)とは性欲や恋愛絡み、カネ(金)とは金銭問題のことで、確かにトラブルのほとんどはそのどちらかが原因だよなと、しみじみ納得したものです。

どちらも当事者にとっては深刻なのでしょうが、<巻き込まれる関係者の多さ>という観点で見れば、金銭問題の方に軍配が上がると思います。特に遺産相続問題となると、相続人のみならず、その配偶者や子供の生活に関わる可能性があるわけですから、関係者が目の色を変えるのも一概には責められません。それでも、今日ご紹介する作品のような遺産問題は、なかなか珍しいのではないでしょうか。明野照葉さん『骨肉』です。

 

こんな人におすすめ

皮肉が効いた家族小説に興味がある人

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