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「プラスマイナスゼロ」 若竹七海

私は女子高出身なので、女友達とのいざこざはそれなりに経験しましたし、見聞きもしました。そして、この手の話だと<女同士は奇数グループだとうまくいかない>という定説がしばしば出てきます。<女は二人で盛り上がる傾向にあるから、三人や五人で仲良しグループを作ると、一人あぶれてしまう>というやつですね。

実際に女の園を経験した身から言わせてもらうと、これはあまり信ぴょう性がありません。仲良しグループの中で寂しさや疎外感を味わった経験は私にもありますが、それは二人組や四人組の時も同様でした。楽しい友達付き合いができるか否かに、人数は関係ないと思います。今回ご紹介する小説には、個性豊かで楽しい三人組が登場します。若竹七海さん『プラスマイナスゼロ』です。

 

こんな人におすすめ

コミカルな青春ミステリーが読みたい人

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「トーキョー国盗り物語」 林真理子

「一番印象に残っている時代は?」というアンケートがあるとしたら、どんな答えが集まるでしょうか。回答者の立場によって違うと思いますが、ある世代以上の人達なら、恐らくバブルの時代を挙げると思います。これは一九八六年から一九九一年にかけて起きた好景気のことで、地価高騰やリゾート地開発、就職活動における売り手市場など、様々な社会現象が発生しました。私自身は小さかったためほとんど意識しませんでしたが、「バブルの頃はね・・・」と思い出話をされた経験は数えきれないほどあります。きっと、それほど強烈な印象を残す時代だったのでしょう。

バブルの時代を扱った小説の例を挙げると、黒木亮さんの『トリプルA 小説格付会社』、楡周平さんの『修羅の宴』、当ブログで過去に紹介した貫井徳郎さんの『罪と祈り』などがあります。いずれも、バブルの波に揉まれ、踊らされる人間の業の深さをテーマにしていました。そういう話ももちろん面白いのですが、ずっしりした小説を読んだ後には、明るく口当たりのいい小説が読みたくなるもの。今回は、バブル期に前向きに逞しく生きていく女性達の小説を取り上げたいと思います。林真理子さん『トーキョー国盗り物語』です。

 

こんな人におすすめ

女性の幸せ探しをテーマにした小説が読みたい人

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「象と耳鳴り」 恩田陸

人気のある小説や漫画、アニメ作品には、しばしば<スピンオフ>なるものが存在します。和訳すると<派生作品>のことで、本編で人気のあった脇役が主役になるというパターンが多いですね。<続編>ではないので本編より過去の出来事が分かったり、本編では触れられなかったキャラクターの背景が判明したりする楽しみがあります。

すでに世界観が出来上がっているためストーリーが作りやすく、本編ファンの注目も集まるというメリットのせいか、ありとあらゆる創作物でスピンオフは作られています。小説に限定すると、柴田よしきさんの『麻生龍太郎シリーズ』、宮部みゆきさんの『楽園』、米澤穂信さんの『ベルーフシリーズ』などが印象的でした。今回ご紹介するのも、私の中で五本の指に入るくらい好きなスピンオフ作品です。恩田陸さん『象と耳鳴り』です。

 

こんな人におすすめ

本格推理短編集が読みたい人

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「人影花」 今邑彩

小説の好き嫌いを判断する一番大事な要素は、当然<内容>だと思います。どんなに装丁やタイトルが秀逸でも、内容がつまらなければ何の意味もありません。それほど大事な内容と比べると、重要度という意味では劣るかもしれないけれど、ビビッと好みにマッチすると嬉しいもの、それが<イラスト>です。

私には、「この人がイラストを担当していたら、とりあえずあらすじをチェックする」というイラストレーターさんが何人かいます。その中の一人が北見隆さん。別にグロテスクでも何でもないにも関わらず、どこか不気味さを感じさせる画風が大好きなんですよ。思い込みかもしれませんが、この方が装画や装丁を担当している小説も私好みのものばかり。恩田陸さんの『麦の海に沈む果実』、岸田るり子さんの『密室の鎮魂歌』、西澤保彦さんの『夢は枯れ野をかけめぐる』等々、どれも面白かったです。今回取り上げるのは、今邑彩さん『人影花』。ゾッとさせられる作風と、北見さんのイラストの雰囲気がぴったり合っていました。

 

こんな人におすすめ

皮肉の効いたホラーミステリー短編集が読みたい人

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「結婚案内ミステリー風」 赤川次郎

<婚活>という言葉が一般的になったのは最近の話ですが、結婚に向けた色々な活動は、ずっと昔から存在していました。この手の活動で一番古いものは、恐らくお見合い。ですが、お見合いでは家族や仕事など、どこかで繋がりのある相手としか出会えません。そこで台頭してきたのが、結婚相談所です。相談所を介することで本来なら接点のなかった相手と知り合えること、家族や仕事絡みの義理がないので気楽なことがメリットとして挙げられるようですね。

私が今まで読んだ小説の中には、結婚相談所が登場するものもいくつかありました。例えば朝比奈あすかさんの『人生のピース』や平安寿子さんの『幸せ嫌い』、以前このブログでも紹介した、秋吉理香子さんの『婚活中毒』などなど。他にはどんな作品があったかなと考えた時、二十年以上前に読んだ小説にも結婚相談所が出てきたことを思い出しました。それがこれ、赤川次郎さん『結婚案内ミステリー風』です。

 

こんな人におすすめ

結婚にまつわるユーモアミステリーが読みたい人

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「暗い越流」 若竹七海

別の記事で、「小説が映像化されると、世間一般の認知度・関心度が一気に上がる」と書きました。<はいくる>の場合、それが一番顕著に表れたのは、山本文緒さんの『あなたには帰る家がある』。ドラマ化が発表されるや否や、記事の閲覧件数が一日で三千件を越し、仰天したものです。

ここ最近は、若竹七海さんの著作を検索してこのブログを見つける方が多いようです。これは恐らく、若竹さんの『葉村晶シリーズ』が、NHKで『ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~』としてドラマ化されたからでしょう。私も視聴しましたが、シシドカフカさんの乾いた演技が葉村晶のイメージにぴったりで、とても面白かったです。せっかくなので流れに便乗し、若竹七海さんの短編集『暗い越流』を取り上げたいと思います。

 

こんな人におすすめ

ブラックな短編ミステリーが読みたい人

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「逢魔」 唯川恵

本は好きだから国語も好き。でも古典は苦手・・・という人って多いのではないでしょうか。かくいう私もそうでした。何と言っても文体が違いますし、<音きこゆ>だの<さう思へ>だのといった文章を訳するだけで一苦労。学生時代の古典の先生が結構怖かったこともあり、作品を楽しむより授業を無事終えられるかどうかばかり気にしていました。

それが変わったのは、大和和紀さんの『あさきゆめみし』を読んだことがきっかけです。概ね原作の『源氏物語』に忠実ながら、現代でも分かりやすいオリジナルの描写やエピソードが挟まれていたことで、物語の世界観をすんなり受け入れることができました。この頃から段々と「古典も面白いじゃん!」と思い始めましたし、古典を下敷きにした創作物への興味も生まれました。今回ご紹介するのも、古典をモチーフにした小説です。唯川恵さん『逢魔』です。

 

こんな人におすすめ

・男女の愛憎をテーマにしたホラーが好きな人

・古典をアレンジした小説に興味がある人

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「極上の罠をあなたに」 深木章子

結婚や出産を経験してからというもの、昔と比べて家の衛生状態が気になるようになりました。エアコンや網戸、ベランダの汚れなど、自分一人の時は特に気にも留めていませんでしたが、同居人がいるとなると話は別。さっさと掃除してしまえれば話は簡単ですが、子どもが小さいとなかなか手が回りません。そういう時、我が家は近所の便利屋さんに頼むことにしています。それなりに料金はかかるものの、仕事は確実ですし、作業中、私は子どもの相手や他の家事を行えるところが有難かったです。

場合によっては人のプライベートに深く関わるところ、警察官や医者に比べると堅苦しさが少ない(と感じるのは私だけ?)ところなどから、便利屋はフィクションの世界に登場させやすい存在です。私がぱっと思いつくのは、三浦しをんさんの『まほろ駅前シリーズ』。瑛太さんと松田龍平さん主演で映画・ドラマ化されているので、ご存知の方も多いと思います。今回ご紹介する小説にも、印象的な便利屋が出てきました。深木章子さん『極上の罠をあなたに』です。

 

こんな人におすすめ

悪党だらけの連作ミステリーが読みたい人

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「さよならの儀式」 宮部みゆき

私は基本的にどんなジャンルの小説も抵抗なく読む人間ですが、改めて自分の読書歴を振り返ってみると、SF小説の読破率が低いことに気付きました。実際、このブログでも、SF小説の登場頻度は低いです。どうしてだろうと自分で考えた結果、「なんとなく感情移入しにくいから」ではないかなと推測・・・私の理解を遥かに超えたテクノロジーとかの話を持ち出されると、つい一歩引いてしまうみたいです。

逆に、私の頭でも設定や世界観が理解しやすいSF作品なら、楽しく読むことができます。筒井康隆さんの『時をかける少女』や重松清さんの『流星ワゴン』、東野圭吾さんの『パラレルワールド・ラブストーリー』などは、SFながら設定は現代に通じていて、共感できる部分が多かったですね。先日読んだSF作品もそうでした。宮部みゆきさん『さよならの儀式』です。

 

こんな人におすすめ

ビターなSF短編小説集が読みたい人

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「いつかパラソルの下で」 森絵都

小説のテーマになりがちな問題は色々あります。<親子の確執>はその筆頭格と言えるのではないでしょうか。近い血の繋がりがあり、本来なら愛情と信頼で結ばれるはずの親子。ですが、近いからこそ、場合によっては憎しみや葛藤の対象ともなり得ます。下田浩美さんの『愛を乞う人』や山崎豊子さんの『華麗なる一族』、唯川恵さんの『啼かない鳥は空に溺れる』などでは、そんな親子の愛憎劇が描かれました。

ただ、上記の例からも分かる通り、小説に出てくる親子の確執は<父と息子><母と娘>というケースが多い気がします。やはり同性同士の方が、反発や共感の情が湧きやすいからでしょうか。もちろん、それらもとても面白いのですが、今回はあえて<父と娘>の確執を取り上げた小説をご紹介します。森絵都さん『いつかパラソルの下で』です。

 

こんな人におすすめ

家族の確執をテーマにした小説が読みたい人

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