先日、生まれて初めて七面鳥を食べました。味は結構淡泊だったけれど、脂身が少ないのでガッツリ食べても胃もたれしませんし、グレービーソースとの相性も良くてなかなか美味!「七面鳥はあまり日本人の口に合わないかも・・・」という噂を聞いていましたが、予想していたよりずっと気に入りました。
七面鳥は日本での生産量が少なく、鶏と比べると手に入りにくいこともあり、日本国内を舞台とした小説に登場する機会は少ないです。ではどこに出てくるかというと、私的登場率NO.1はイギリスが舞台、それもクリスマスシーズンを扱った作品だと思います。この作品もそうでした。イギリスのホラーアンソロジー『ミステリアス・クリスマス 7つの怖い夜ばなし』です。
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海外のホラー短編集に興味がある人
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「昔は普通にあったけど、近頃は見なくなったなぁ」と思うものって色々あります。読書界隈で例を挙げると、代本板と、本の背表紙裏に貼ってあった貸出カード。特に前者は、学生時代に散々利用したので、消えてしまった少し寂しい気もします。
この話題で私がもう一つ思い浮かべるもの、それは<ミニ文庫>です。文字通り小さな文庫本で、サイズはせいぜい胸ポケットに入る程度。短編が一~二話収録されている程度のボリュームですが、とにかく持ち運びしやすいので、移動中の読書に重宝しました。神坂一さんの『スレイヤーズシリーズ』や、高橋克彦さんの『幻少女』といった印象に残る作品もたくさんあったなぁ。最近、久しぶりにミニサイズの文庫を読む機会があり、なんだか懐かしかったです。今回取り上げるのは、背筋さんの『口に関するアンケート』です。
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仕掛け満載の短編ホラーが読みたい人
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<何かを始めようとした時に限って、別のことに目がいってしまう>という経験をお持ちの方、一定数いらっしゃると思います。よく聞くのは、<勉強を始めた途端、部屋の掃除をしたくなった>とかですね。普段は特に気にならないのに、一体どうしてなんでしょう?
私の場合、一番よくあるのは<掃除を始めたら本棚の本が目についてしまい、つい読みふけってしまった>というパターンです。こういう時に目がいくのは、大抵、ずいぶん昔に読んだので細部を忘れてしまっている本。時間が経って読み返すと、また新たな面白味や驚きがあるんですよ。つい先日も、片付け中にこれを見つけてやらかしてしまいました。今邑彩さんの『よもつひらさか』です。
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後味の悪いホラーサスペンス短編集が読みたい人
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電子書籍の台頭が著しいこのご時世。とはいえ、私個人としては、本は紙で読むのが好きです。ちょっとしたコラムやレビューくらいの分量ならいいのですが、単行本一冊分ともなると、画面越しに読むうちに頭と目が疲れてくるんですよ。DVDやCDのレンタルショップはネット配信の勢いに押されているようですが、本屋と図書館は決してなくならないでほしいと切に願います。
また、紙の本が好きな理由は、疲労のせいだけではありません。これもまた個人的な好みですが、紙の本の方が<仕掛け>の面白さが増す気がするからです。仕掛けについて詳しく説明するとネタバレになってしまいますが、折原一さんの『倒錯の帰結』や道尾秀介さんの『N』のように、文章だけでなく本全体にネタが仕込んである小説といえば分かりやすいでしょうか。もちろん、プロの手にかかれば電子書籍でも仕掛けを施すことは可能なのでしょうが、やっぱり紙のページをめくりながら「あー、そういうことか!」となる楽しさは格別なんです。今回ご紹介する作品も、最後まで読んで初めて仕掛けに気づき、「騙されたー!」となりました。澤村伊智さんの『頭の大きな毛のないコウモリ』です。
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後味の悪いホラー短編集が読みたい人
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私の個人的な意見ですが、フィクション世界におけるジャンルの中で、<ホラー>というのはやや特殊な位置付けにある気がします。作品に求められるのは、<恐怖><怖気><震撼>といったネガティブな感情。最近はホラーも細分化してきて、ミステリー的な謎解きがあったり、恋愛要素が絡んだりするケースも多々ありますが、根本にあるのが<恐ろしさ>という点は変わりません。
そのせいかどうなのか、色々なジャンルに挑戦されている作家さんでも、「ホラーだけはまだ・・・」ということが一定数あるように思います。その一方、「〇〇先生、ホラー初挑戦!」というような作品は、普段とは違う、新鮮なカタルシスをもたらしてくれることもしばしばです。この作品を読んだ時も、相当な衝撃でしたよ。林真理子さんの『聖家族のランチ』です。
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家族の崩壊をテーマにしたホラーが読みたい人
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私は読む本を選ぶ時、必ずあらすじをチェックします。「好きな作家さんの作品は事前情報ゼロで楽しみたい!」という方も多いのでしょうが、私は大まかなところを把握してから読み始めたいタイプ。ばっちり好みに合いそうな話だった時は、読書前のワクワク感もより高まります。
ですが、世間には、あらすじからは予想もつかないような方向に進んでいく作品も存在します。私がこの手の作品で真っ先に思いつくのは、鈴木光司さんの『リングシリーズ』。おどろおどろしいジャパニーズホラーかと思いきや、続編『らせん』『ループ』と進むにつれてどんどん新事実が発覚し、SF小説の様相を呈してくる展開が衝撃的でした。それからこの本も、あらすじから想像していた話とは全然違う方向に進んでいきます。澤村伊智さんの『斬首の森』です。
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予想もできないようなホラーミステリーが読みたい人
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ホラーやイヤミスの世界において、<子ども>というのは特別な存在になりがちです。子どもは可能性の塊であり、未来の象徴。そのせいか、モンスターや殺人鬼が跋扈し、多数の犠牲者が出る中、子どもだけはなんとか生き残るという展開も多いです。
その一方、子どもが容赦なく犠牲になる話も一定数あります。命の価値は平等とはいえ、やはり子どもが惨い末路を辿ると、絶望感が一気に高まるんですよね。櫛木理宇さん、澤村伊智さん、三津田信三さん等の作品で、生還フラグが立っている子どもが呆気なく死に、一体何度打ちのめされたことか・・・・・そう言えば、この方の作品も、子どもが過酷な結末を迎える傾向にある気がします。今回取り上げるのは、朱川湊人さんの『いっぺんさん』です。
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郷愁漂うホラー短編集に興味がある人
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<群衆事故>という事故があります。文字通り、統制・誘導されていない群衆によって引き起こされる事故のことで、集団の密度が高ければ高いほど発生リスクが高まるのだとか。二〇二二年に韓国で起きた梨泰院群衆事故は記憶に新しいですし、日本でも二〇〇一年に兵庫県明石市で花火大会帰りの群衆が歩道橋に殺到し、十一名の死者を出す大惨事になっています。
これは群衆事故に限った話ではありませんが、悲惨な事故が起こった場合、<なぜそんなことが起こったか>を調べるのはとても大事なことです。そして、フィクション作品の場合、大抵この<なぜ>の部分にとんでもない謎や秘密が仕掛けられていることが多いです。では、この作品はどうでしょうか。今回は、恩田陸さんの『Q&A』を取り上げたいと思います。
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インタビュー形式で進むホラーミステリーが好きな人
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クリエイターは作品を創り出して当然と思われがちですが、人間である以上、創作ペースには個人差があります。心身や周辺環境等の事情により、思うように仕事ができないことだってあるでしょう。シリーズ作品の連載が中断されたり、新作が出ないことがあっても、あまりピリピリせず気長に待った方が、消費者にとっても気楽です。
とはいえ、好きな作家さんの作品がどんどん出たら嬉しいのが人情というもの。おまけにそのレベルが高いなら、これほど幸せなことはありません。多作な作家さんと言えば、最近なら中山七里さん辺りが挙がりそうですが、この方だって負けてはいませんよ。今回ご紹介するのは澤村伊智さんの『すみせごの贄』です。
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『比嘉姉妹シリーズ』が好きな人
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傑作選。読んで字のごとく、特定のジャンルや著者の作品の中から、良作を選りすぐったもののことです。基本、すでに世に出ている作品から選ばれるので、新作だと思って手を伸ばしたら「知ってるやつばかりじゃん!」とショックを受けることもあり得ます。
とはいえ、対象作品を読み尽くしていない場合は、傑作選はとても有難い存在です。何しろ収録されているのは、ほぼ確実にレベルの高い作品ばかり。読んでガッカリする可能性は低いです。「この人の作品、他にはどんなのがあるんだろう」「こういうジャンルってあんまり知らないから、とりあえずお勧め作品を読んでみたいな」という時にはぴったりですよ。例えば、「今までイヤミスを読んだことってなかったから、お勧めがあれば読んでみよう」という方には、これなんていかがでしょうか。「このミステリーがすごい!」編集部による『3分で不穏!ゾクッとするイヤミスの物語』です。
こんな人におすすめ
イヤミス専門のアンソロジーが読みたい人
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