ホラー

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「聖家族のランチ」 林真理子

私の個人的な意見ですが、フィクション世界におけるジャンルの中で、<ホラー>というのはやや特殊な位置付けにある気がします。作品に求められるのは、<恐怖><怖気><震撼>といったネガティブな感情。最近はホラーも細分化してきて、ミステリー的な謎解きがあったり、恋愛要素が絡んだりするケースも多々ありますが、根本にあるのが<恐ろしさ>という点は変わりません。

そのせいかどうなのか、色々なジャンルに挑戦されている作家さんでも、「ホラーだけはまだ・・・」ということが一定数あるように思います。その一方、「〇〇先生、ホラー初挑戦!」というような作品は、普段とは違う、新鮮なカタルシスをもたらしてくれることもしばしばです。この作品を読んだ時も、相当な衝撃でしたよ。林真理子さん『聖家族のランチ』です。

 

こんな人におすすめ

家族の崩壊をテーマにしたホラーが読みたい人

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「斬首の森」 澤村伊智

私は読む本を選ぶ時、必ずあらすじをチェックします。「好きな作家さんの作品は事前情報ゼロで楽しみたい!」という方も多いのでしょうが、私は大まかなところを把握してから読み始めたいタイプ。ばっちり好みに合いそうな話だった時は、読書前のワクワク感もより高まります。

ですが、世間には、あらすじからは予想もつかないような方向に進んでいく作品も存在します。私がこの手の作品で真っ先に思いつくのは、鈴木光司さんの『リングシリーズ』。おどろおどろしいジャパニーズホラーかと思いきや、続編『らせん』『ループ』と進むにつれてどんどん新事実が発覚し、SF小説の様相を呈してくる展開が衝撃的でした。それからこの本も、あらすじから想像していた話とは全然違う方向に進んでいきます。澤村伊智さん『斬首の森』です。

 

こんな人におすすめ

予想もできないようなホラーミステリーが読みたい人

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「いっぺんさん」 朱川湊人

ホラーやイヤミスの世界において、<子ども>というのは特別な存在になりがちです。子どもは可能性の塊であり、未来の象徴。そのせいか、モンスターや殺人鬼が跋扈し、多数の犠牲者が出る中、子どもだけはなんとか生き残るという展開も多いです。

その一方、子どもが容赦なく犠牲になる話も一定数あります。命の価値は平等とはいえ、やはり子どもが惨い末路を辿ると、絶望感が一気に高まるんですよね。櫛木理宇さん、澤村伊智さん、三津田信三さん等の作品で、生還フラグが立っている子どもが呆気なく死に、一体何度打ちのめされたことか・・・・・そう言えば、この方の作品も、子どもが過酷な結末を迎える傾向にある気がします。今回取り上げるのは、朱川湊人さん『いっぺんさん』です。

 

こんな人におすすめ

郷愁漂うホラー短編集に興味がある人

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「Q&A」 恩田陸

<群衆事故>という事故があります。文字通り、統制・誘導されていない群衆によって引き起こされる事故のことで、集団の密度が高ければ高いほど発生リスクが高まるのだとか。二〇二二年に韓国で起きた梨泰院群衆事故は記憶に新しいですし、日本でも二〇〇一年に兵庫県明石市で花火大会帰りの群衆が歩道橋に殺到し、十一名の死者を出す大惨事になっています。

これは群衆事故に限った話ではありませんが、悲惨な事故が起こった場合、<なぜそんなことが起こったか>を調べるのはとても大事なことです。そして、フィクション作品の場合、大抵この<なぜ>の部分にとんでもない謎や秘密が仕掛けられていることが多いです。では、この作品はどうでしょうか。今回は、恩田陸さん『Q&A』を取り上げたいと思います。

 

こんな人におすすめ

インタビュー形式で進むホラーミステリーが好きな人

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「すみせごの贄」 澤村伊智

クリエイターは作品を創り出して当然と思われがちですが、人間である以上、創作ペースには個人差があります。心身や周辺環境等の事情により、思うように仕事ができないことだってあるでしょう。シリーズ作品の連載が中断されたり、新作が出ないことがあっても、あまりピリピリせず気長に待った方が、消費者にとっても気楽です。

とはいえ、好きな作家さんの作品がどんどん出たら嬉しいのが人情というもの。おまけにそのレベルが高いなら、これほど幸せなことはありません。多作な作家さんと言えば、最近なら中山七里さん辺りが挙がりそうですが、この方だって負けてはいませんよ。今回ご紹介するのは澤村伊智さん『すみせごの贄』です。

 

こんな人におすすめ

『比嘉姉妹シリーズ』が好きな人

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「3分で不穏!ゾクッとするイヤミスの物語」 このミステリーがすごい!編集部

傑作選。読んで字のごとく、特定のジャンルや著者の作品の中から、良作を選りすぐったもののことです。基本、すでに世に出ている作品から選ばれるので、新作だと思って手を伸ばしたら「知ってるやつばかりじゃん!」とショックを受けることもあり得ます。

とはいえ、対象作品を読み尽くしていない場合は、傑作選はとても有難い存在です。何しろ収録されているのは、ほぼ確実にレベルの高い作品ばかり。読んでガッカリする可能性は低いです。「この人の作品、他にはどんなのがあるんだろう」「こういうジャンルってあんまり知らないから、とりあえずお勧め作品を読んでみたいな」という時にはぴったりですよ。例えば、「今までイヤミスを読んだことってなかったから、お勧めがあれば読んでみよう」という方には、これなんていかがでしょうか。「このミステリーがすごい!」編集部による『3分で不穏!ゾクッとするイヤミスの物語』です。

 

こんな人におすすめ

イヤミス専門のアンソロジーが読みたい人

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「暗黒祭」 今邑彩

創作の世界には<因習村もの>というジャンルが成立します。古いしきたりや伝説に支配される土地を舞台にした作品のことで、どちらかといえば<閉鎖的><因縁深い>といったマイナスイメージの描写が多い気がしますね。一部例外はあるものの、基本的に都市部から遠く離れ、外部への連絡・避難手段に乏しい田舎が舞台となる傾向にあるようです。

この手のジャンルで一番有名なのは、国内では満場一致で横溝正史御大による『金田一耕助シリーズ』ではないでしょうか。それから、小野不由美さんの『屍鬼』や三津田信三さんの『刀城言耶シリーズ』も該当するでしょうね。長年に渡ってその土地に染み込んできた罪業や因縁がテーマとなる分、すっきり解決して大団円!ではなく、後味の悪いラストを迎えるケースが多いように思います。では、今回取り上げる作品はどうでしょうか。今邑彩さん『蛇神シリーズ』の完結編『暗黒祭』です。

 

こんな人におすすめ

・因習が絡む土着ホラーが好きな人

・『蛇神シリーズ』のファン

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「ジャンル特化型 ホラーの扉:八つの恐怖の物語」 株式会社闇(編集) 

本を知るきっかけには、どんなものがあるでしょうか。本屋や図書館に並んでいるのを見たり、人からお勧めされたり、テレビで紹介されていたり・・・まさに千差万別、百人いれば百通りのきっかけがありそうです。

私の場合、ここ最近は<動画で取り上げられていた>というパターンが増えてきました。特に見る機会が多いのがYouTube。世界中の人が利用しているだけあって、本について触れた動画も結構多く、意外な良作に出会えたりします。今回取り上げる作品も、YouTubeの動画をきっかけに知りました。株式会社闇編集による『ジャンル特化型 ホラーの扉:八つの恐怖の物語』です。

 

こんな人におすすめ

バラエティ豊かなホラー短編集が読みたい人

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「ヨモツイクサ」 知念実希人

かなりのホラー好きを自認する私が最初にハマったホラー作品は、ゲーム『バイオハザード』でした。幽霊でも妖怪でもなく、ウィルスのせいで巻き起こる阿鼻叫喚の数々がものすごく新鮮で、すっかり夢中になったものです。賛否両論あるようですが、映画版も結構好きなんですよ。

思えば『バイオハザード』以降、<バイオホラー>というジャンルが世間に広く知れ渡った気がします。これは生物技術が絡んだホラー作品のことで、ウィルス、細胞、未知の生命体といった要素がテーマとなることが多いです。心霊はあまり登場せず、科学や物理が通用する敵がメインな分、派手なアクションが繰り広げられることもしばしばですね。先日読んだ作品もそうでした。知念実希人さん『ヨモツイクサ』です。

 

こんな人におすすめ

・バイオホラー作品が好きな人

・アイヌ文化に興味がある人

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「依頼人は死んだ」 若竹七海

探偵に向いている資質とは、一体どんなものでしょうか。調査対象をどこまでも追跡できる体力?些細な異変を見逃さない観察力?怪しまれずに周囲に溶け込める社交性?どれも必要でしょうが、一番大事なのは、何があっても動じずに調査を続けるしぶとさだと思います。

古今東西、小説の中で探偵役を務める登場人物達は皆、並々ならぬしぶとさを持っていました。有栖川有栖さんの『作家アリスシリーズ』に登場する火村英生は、銃を突きつけられても犯人追及の手を緩めないし、柴田よしきさんの『花咲慎一郎シリーズ』の花咲慎一郎は、暴力団幹部に命を握られながらも問題解決のため奔走します。それから、しぶとい探偵といえばこの人を忘れちゃいけません。若竹七海さんの『葉村晶シリーズ』に登場する葉村晶。今回取り上げるのは、シリーズ第二弾『依頼人は死んだ』です。

 

こんな人におすすめ

・皮肉の効いたミステリー短編集が好きな人

・女性探偵の物語に興味がある人

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