ホラー

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「ざんどぅまの影」 澤村伊智

物語の世界には<前日譚>というものがあります。これは、読んで字のごとく、本編開始前の出来事を語った作品のこと。言葉自体は、二〇二三年時点で主な国語辞典には掲載されていないため、比較的新しくできた造語のようです。

ですが、前日譚という概念は、古くから存在しました。世界的な有名作品でいうと、C・S・ルイス『ナルニア国物語』には『魔術師のおい』が、J・R・R・トールキン『指輪物語』には『ホビットの冒険』が、それぞれ前日譚として刊行されています。日本だと、東野圭吾さん『マスカレード・ホテル』の前日譚に当たる『マスカレード・イブ』や、中山七里さん『さよならドビュッシー』の前日譚に当たる『要介護探偵の事件簿』など、名作がたくさんありますよ。それからこれも、とても面白い前日譚でした。澤村伊智さん『ざんどぅまの影』です。

 

こんな人におすすめ

『比嘉姉妹シリーズ』が好きな人

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「このショッピングモールは迷子を歓迎しています」 ヨシモトミネ

子どもの頃から海外ドラマや洋画が好きだった私の憧れの場所、それはショッピングモールです。当時、私が知っている小売店といえば、日用品ならスーパーで、改まった品ならデパート。それに不満があったわけではありませんが、画面の中で海外のティーンエイジャーたちが言う「土曜にショッピングモールで待ち合わせしましょう」「モールに新しいお店ができたって」などというやり取りが、やたらお洒落に思えたものです。

現在では、日本各地にたくさんのショッピングモールが存在します。買い物ができ、食事を済ませられ、映画やゲームや習い事を楽しむことができる性質上、昼夜問わず大勢の人々でごったがえすることも珍しくありません。でも、そんな中にこんなショッピングモールがあったとしたら・・・・・気軽に利用することを躊躇ってしまうのではないでしょうか。今回は、ヨシモトミネさん『このショッピングモールは迷子を歓迎しています』をご紹介したいと思います。

 

こんな人におすすめ

モキュメンタリーホラーが好きな人

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「3分で読める!一日の終わりに読むお酒の物語」 「このミステリーがすごい!」編集部

実は私、お酒がまったく飲めません。若い頃は「練習すれば強くなる」という言葉を信じてせっせと飲んでいましたが、どれだけ経っても、一口二口飲んだだけで胸やけと眩暈のダブルパンチ。血縁者にも下戸が多いので、遺伝なのかもしれません。現在はすっかり諦めの境地に達し、お酒の場でもノンアルコールを貫いています。

ただ、こういう体質のせいもあってか、飲酒を楽しむことに対して憧れはあります。その点、小説の中なら、お酒の味や心地良い酔いを体験できていいですね。先日読んだ小説にも、お酒がたくさん出てきました。今回は、「このミステリーがすごい!」編集部による『3分で読める!一日の終わりに読むお酒の物語』を取り上げたいと思います。

 

こんな人におすすめ

お酒がたくさん登場するミステリー短編集に興味がある人

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「幸福な生活」 百田尚樹

日本国内において、小説は単行本出版→数年経ってから文庫化という流れになることが多いです。出版社にしてみれば、まず儲けが出る単行本を出し、人気・評価が安定した頃を見計らって文庫版を出版した方が、高い収益を見込めるのでしょう。単行本より文庫の方が安いし、収納スペースも小さくて済むし、持ち運びもしやすいから、買うならやっぱり文庫版で!!という方は、将来の文庫化を楽しみに待つしかありません。

かくいう私も、文庫化を楽しみにしている方です。その理由は、前述した値段や場所の問題に加えてもう一つ。文庫化に当たって、単行本未収録の短編やあとがきが追加されることがしばしばあるからです。昔から、こういうボーナス要素に弱い人間なんですよ。今回取り上げる作品にも、文庫化の際、短編が一話追加されていてお得感ありました。百田尚樹さん『幸福な生活』です。

 

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ラスト一行の衝撃が売りの短編小説に興味がある人

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「ととはり屋敷」 澤村伊智

フィクションの世界には、魅力溢れる主人公がたくさん登場します。そして、主人公が強烈な個性の持ち主だった場合、その家族もまた印象的なキャラクターだというパターンがしばしばあります。この場合、家族をメインに据えたスピンオフが生まれやすく、読者としては二度美味しいですね。

<主人公の家族もまた・・・>というケースで有名なのは、かのシャーロック・ホームズの兄であるマイクロフト・ホームズでしょう。ホームズをも凌ぐ頭脳の持ち主でありながら行動力がなく、人付き合いを嫌う者が集う会員制クラブを創設するような変わり者。ドラマ・映画版でも、ホームズ同様に強烈なキャラクターとして描写されることが多いです。家族関係を知ると、お気に入りキャラクターの背景をより深く知ることができるんですよ。今回は、大好きなキャラクターの家族について扱った作品を取り上げたいと思います。澤村伊智さん『ととはり屋敷』です。

 

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『比嘉姉妹シリーズ』が好きな人

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「鬼門の村」 櫛木理宇

ホラー作品の定番シチュエーションの一つに<謎の多いアルバイトをする>というものがあります。<家や学校といった日常生活の場を離れる><金銭を得る以上、多少不可解なことがあっても我慢してしまう><正社員に比べると、就労環境に対する事前確認が甘くなりがち>といった、ホラーにぴったりの要素を揃えやすいからでしょうか。好条件のアルバイト先に出向いてみると、意味不明な仕事を任される。さらにそこに奇妙なルールや禁止事項を加えれば、あら不思議、王道をいくザ・ホラーの出来上がりです。

この手の話で有名なものとしては、Web発祥の怪談であり、映画化もされた『リゾートバイト』があります。また、私が大好きな三津田信三さんも『のぞきめ』、『怪談のテープ起こし』収録の「留守番の夜」などでこのテーマを扱っています。どれも魅力的な作品でしたが、最近読んだこの作品の面白さはピカイチでした。櫛木理宇さん『鬼門の村』です。

 

こんな人におすすめ

因縁深い村ホラーが読みたい人

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「トンネルに消えた女の怖い話」 クリス・プリーストリー

以前、インターネット上で<特に理由はないけど、なぜか不安になる写真>という特集を見たことがあります。夜霧に包まれた児童公園や建設中の無人の駅、倉庫の中にずらりと並ぶマネキン人形、夕焼けで赤く染まるシャッター通りと化した商店街など、なんとなく胸がざわつく写真の数々が印象的でした。

その中で、私が一番はっきり記憶しているのは、夜中のトンネルを写した写真です。真っ暗で、出口が見えず、圧迫感と閉塞感を感じさせるせいでしょうか。実際、福岡県の旧犬鳴トンネルや北海道の常紋トンネルのように、心霊スポットとして有名なトンネルも数多く存在します。今回は、トンネルが登場するホラー小説をご紹介します。クリス・プリーストリー氏『トンネルに消えた女の怖い話』です。

 

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後味の悪いホラー短編集に興味がある人

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「船乗りサッカレーの怖い話」 クリス・プリーストリー

海は、不思議で神秘的な物語の宝庫です。今なお未解明な部分が多く、人類を圧倒することさえあるのだから当然かもしれません。感動的なヒューマンストーリーや心躍るファンタジー冒険譚への登場率が高い一方、救いのないホラーの舞台になりがちなのも、そういう特性ゆえではないでしょうか。

そんな海での怪談話の語り手として一番ぴったりくる人間、それは船乗りだと思います。何しろ船を使って海を渡るのが仕事。修羅場の一つや二つくぐっていて不思議はありませんし、その中で不気味な体験をすることだってきっとあるでしょう。今回は、船乗りが語る怪談をテーマにした作品を取り上げたいと思います。クリス・プリーストリー氏『船乗りサッカレーの怖い話』です。

 

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海を舞台にしたホラー短編集に興味がある人

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「おしまいの日」 新井素子

ホラーの中には、<サイコロジカルホラー>というジャンルがあります。サイコロジカル(心理的)という単語が付くだけあって、人間の狂気がテーマとなっており、日本では<サイコホラー>と省略されることが多いです。モンスターが大暴れするタイプのホラーとは異なり、じわじわネチネチと精神を蝕まれるような恐怖描写が特徴です。

この手のジャンルの有名どころといえば、我孫子武丸さん『殺戮にいたる病』、貴志祐介さん『黒い家』、中山七里さん『連続殺人鬼カエル男シリーズ』などがあります。海外作品だと、『サイコ』や『ミザリー』などは映画版も有名ですね。サイコホラーにおける重要なポイントは、怨霊や呪いといったオカルト要素ではなく、生身の人間による恐怖を演出すること。その点、今日ご紹介する作品はとても秀逸だと思います。新井素子さん『おしまいの日』です。

 

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女性の静かな狂気を描いたサイコホラーに興味がある人

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「モンタギューおじさんの怖い話」 クリス・プリーストリー

私が、日本のイラストレーターさんで「この方が挿画を担当していたら、何はともあれあらすじをチェックする」というのは、北見隆さん。不思議で、幻想的で、どこか不穏さを感じさせるタッチが大好きなんですよ。事前情報ゼロの状態にもかかわらず、北見隆さんのイラストだったからこそ手に取り、その面白さに魅了された作品もたくさんあります。

同様の存在が海外にも存在します。それが、デイヴィッド・ロバーツ氏。雰囲気としては、最恐の絵本作家と名高いエドワード・ゴーリー氏の絵と通ずるもののある、静寂と不気味さ漂う画風が堪らなく好きなんです。今回取り上げる作品も、デイヴィッド・ロバーツ氏がイラストを担当していると知って読み始め、結果、大満足でした。クリス・プリーストリー氏『モンタギューおじさんの怖い話』です。

 

こんな人におすすめ

イギリスのゴシックホラー短編集に興味がある人

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