はいくる

「口に関するアンケート」 背筋

「昔は普通にあったけど、近頃は見なくなったなぁ」と思うものって色々あります。読書界隈で例を挙げると、代本板と、本の背表紙裏に貼ってあった貸出カード。特に前者は、学生時代に散々利用したので、消えてしまった少し寂しい気もします。

この話題で私がもう一つ思い浮かべるもの、それは<ミニ文庫>です。文字通り小さな文庫本で、サイズはせいぜい胸ポケットに入る程度。短編が一~二話収録されている程度のボリュームですが、とにかく持ち運びしやすいので、移動中の読書に重宝しました。神坂一さんの『スレイヤーズシリーズ』や、高橋克彦さんの『幻少女』といった印象に残る作品もたくさんあったなぁ。最近、久しぶりにミニサイズの文庫を読む機会があり、なんだか懐かしかったです。今回取り上げるのは、背筋さん『口に関するアンケート』です。

 

こんな人におすすめ

仕掛け満載の短編ホラーが読みたい人

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あの日、あの場所で何があったのか---――墓地での肝試しの後、一人の大学生が死んだ。その死に関わった五人の男女が、それぞれが知ることを語り合う。今の恋人、元恋人、友人、変わり果てた姿を発見した者・・・語りの中から見えてくる呪いの正体と、その顛末。話を終えた後、彼らはどんな結末を迎えるのか。現代ホラーの名手が贈る、傑作短編ホラー

 

ボリュームは約六十ページ、文字数もさほど多くないので、静かな環境で集中して読めば読了するのに三十分もかからないかもしれません。にもかかわらず、なんて濃厚な気色悪さ(褒めてます)!繰り返し出てくるセミの描写や、恐らく怪異と思われるものの造形に生理的嫌悪感をかき立てられること必至です。最初から最後まで<関係者達の一人称による語り>という形式で進む性質上、謎解きも捜査も行われず、本当に何があったかは想像するしかないという構成もJホラーっぽくて良かったです。

 

とにかく短いので、あらすじについて詳しく触れるのはやめておくとして・・・本作を語る上で欠かせないのは、あちこちに隠された仕掛けについてです。王道の叙述トリックに始まり、各自の語りの前に記載された数字、終盤で変わる文字の色、最後の最後に出てくるアンケート、表紙のイラスト・・・それらすべてに手掛かりが仕込まれていて、意味が分かった瞬間、読者をゾッとさせてくれます。真相を知り、その光景を思い浮かべながら本作を再読したら、きっと背筋が寒くなることでしょう。

 

さらに、仕掛けがあるのは紙媒体に限られないのが、この本のニクいポイントです。本作は<Audible>という、プロのナレーターが作品を朗読してくれるサービスでも配信されています。で、そこで本作を聞くと、語りが終わった後で<ある音>が収録されています。そこを聞いた上で巻末アンケートの最終設問を確認すると・・・・・「あー、そういうことか!!」と唸らされると同時に、あまりの逃れようのなさに呆然としてしまいました。私は基本、「この続きは映画で!」的な売り方は好きではないのですが、本作に関してはあまり抵抗を感じなかったです。たぶん、紙だけでもしっかり物語として完結しているからでしょうね。

 

注意点があるとすれば、裏表紙の仕掛け。ここにも仕込みがあるのですが、図書館で借りると表紙にブックカバーフィルムが貼ってあるため、分かりにくいかもしれません。本屋なら裏表紙を確認できるのでしょうが、何しろミニサイズのため配置場所が難しく、置いていない店舗も結構ある様子・・・そういえば昔、ミニ文庫はどこに置いてあったっけ?覚えている方、ぜひ教えてほしいです。

 

仕掛け仕掛け仕掛けのオンパレード!度★★★★★

考察サイトを読んで二度楽しい度★★★★★

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コメント

  1. しんくん より:

     この作家さんは近畿地方のある場所について~がイマイチだったので新しい作品は読んでいません。
     60ページとは直ぐに読み終わりそうですが、仕掛けが気になります。
     中山七里さんの鑑定人氏家京太郞の続編がもうすぐ出るので楽しみです。
     芥川賞作品のデートピアが届きました。
     最近、mixiのレビューで作品が検索しても出てこないのが続いて、日記で書いてます。原田ひ香さんの新作すら出てこないのは驚きました。

    1. ライオンまる より:

      私は好きですが、正直、かなり好みが分かれる作家さんだろうなと思います。
      氏家シリーズだけでなく、櫛木理宇さんの新作も二作出るようなので、今からわくわくしています。
      mixiのレビュー、出ないんですか!!
      色々と変わっていくようで、ずっとmixiユーザーだった身としてはちょっと寂しいです。

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