フィクション作品、特にミステリーやサスペンスの世界において、数多くの登場人物達が死体と出くわします。常識的に考えれば、そこで真っ先にすべきことは<救急・警察に通報する>一択なものの、創作の世界となると話は別。主人公がどうにか死体を処分しようと苦悩するところから物語が始まる、という展開も珍しくありません。
ここで問題となるのが、死体の処分方法です。燃やす、沈める、バラバラにする等々、様々なやり方がありますが、一番よくあるのは<埋める>ではないでしょうか。土がある場所を掘りさえすればOK!とにかく死体を見えない状態にできる!というお手軽感(?)のせいかもしれませんね。とはいえ、物事はそんなに都合良く進まないのが世の中の常。目先の欲に振り回されたおかげで、とんでもない事態に陥ってしまうこともあり得ます。今回取り上げるのは、そんな修羅場に巻き込まれてしまった人間の悲喜劇、藤崎翔さんの『モノマネ芸人、死体を埋める』です。
こんな人におすすめ
コミカルなクライムサスペンスが読みたい人
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現代には、エンターテインメントが溢れています。漫画に小説、ドラマ、映画、ゲームetc。漫画一つ取っても、紙媒体もあれば電子書籍もありと、その数はまさに無数。この分だと、三年後、五年後には、きっとまた新しい娯楽が誕生していることでしょう。
これだけ数が多いと、当然ながら、詳しい分野と疎い分野が出てきます。私の場合、このところドラマに触れる機会がめっきり減りました。お気に入りの小説や漫画について調べた時、「え、これって映像化していたんだ!しかもとっくに放映終了してる!」と驚くこともしばしば・・・この作品も、知らない間にドラマ化されていたと最近知りました。永嶋恵美さんの『泥棒猫ヒナコの事件簿 別れの夜には猫がいる』です。
こんな人におすすめ
・後味の良いサスペンス短編集が読みたい人
・『泥棒猫ヒナコの事件簿シリーズ』のファン
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「昔はよく見聞きしたけど、今はめっきり減ったよなぁ」と思う物事って、色々あります。その中の一つが、ミス・コンテスト。独身女性が優勝を目指して競い合うイベントで、ミス・ユニバースやミス・日本が有名ですね。一時期は様々な自治体や学校がコンテストを開催していましたが、ルッキズムやジェンダーレスといった問題から、昨今はその数も激減したようです。
現実のミスコンに対する賛否はひとまず置いておくとして、多くの女性が一堂に会して競うというシチュエーションは、小説の舞台にぴったり。林真理子さんの『ビューティーキャンプ』では、美の世界に生きる女性達の悲喜こもごもがリアリティたっぷりに描かれていました。私はイヤミス好きなので、ミステリーやサスペンスの分野で何か読みたいなと思っていたら・・・先日、見つけました。秋吉理香子さんの『殺める女神の島』です。
こんな人におすすめ
・ミスコンを扱った作品に興味がある人
・クローズドサークルもののミステリーが好きな人
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物語を創る上で、テーマ設定はとても重要です。中には、特にテーマを決めず自由気ままに創作するケースもあるでしょうが、これは恐らく少数派。「身分違いの恋を書こう」とか「サラリーマンの下剋上物語にしよう」とか、最初に設定しておくことの方が多いと思います。
古今東西、大勢のクリエイターが様々なテーマを基に創作活動を行ってきたわけですから、その数はまさに天井知らず。となると、当然のごとく、ウケがいいテーマと、そうでもないテーマが出てきます。前者の代表格と言えば、やはり<時事ネタ>ではないでしょうか。今この時、世間を騒がせている問題をテーマにすることで、より多くの注目を集めることができます。今回取り上げる作品も、今という時代を象徴するようなテーマ選びがなされていました。結城真一郎さんの『#真相をお話しします』です。
こんな人におすすめ
世相を反映したどんでん返しミステリーに興味がある人
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新興宗教。読んで字の如く、伝統宗教(カトリック教会、十三宗五十六派の仏教、イスラム教、ヒンドゥー教etc)と比べ、成立時期が新しい宗教のことです。<時期が新しい>という基準がかなり曖昧な関係上、国内外合わせて相当な数の宗教団体がこれに該当します。
言うまでもなく、新興宗教自体は悪でも違法でもありません。前述した伝統宗教も、成立当初は新興宗教でした。ですが、オウム真理教のテロやヘヴンズ・ゲートの集団自殺、アガドンサンの連続不審死といった事件が目に付き、新興宗教に対して懐疑的な視線が集まりがちなこともまた事実。それはフィクションの世界でも同様で、澤村伊智さんの『邪教の子』や貫井徳郎さんの『慟哭』には、怖気が走りそうなほど異常な宗教団体が出てきました。先日読んだ作品に登場する新興宗教も、読んでいて非常に胸糞悪かったです。今回は、櫛木理宇さんの『凶獣の村 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』をご紹介しようと思います。
こんな人におすすめ
・新興宗教を扱ったサスペンス小説に興味がある人
・『鳥越恭一郎シリーズ』のファン
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<事件解決>とは、果たしてどのタイミングを指すのでしょうか。<捜査>という観点からいうと、犯人を逮捕したタイミング。もっと踏み込むなら、逮捕後、裁判によって動機や犯行方法等がすべて明らかとなり、然るべき刑を科されたタイミングだと考える人が多い気がします。
ただ、創作の世界に関して言えば、必ずしも逮捕や裁判が事件解決の必須条件となるわけではありません。登場人物の会話や独白、回想等で真相発覚・事件解決となることもあり得ます。「で、この後どうなるの!?」「犯人は捕まったの!?」というモヤモヤ感を残すことが多いため、イヤミスやホラーのジャンルでしばしば出てくるパターンですね。消化不良という批判を浴びがちですが、私はこういう後味の悪さが大好きです。そして、登場人物のやり取りで謎解きするという作風なら、やっぱりこの方でしょう。今回は、西澤保彦さんの『謎亭論処(めいていろんど) 匠千暁の事件簿』を取り上げたいと思います。
こんな人におすすめ
・多重解決ミステリーが読みたい人
・『匠千暁シリーズ』が好きな人
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薔薇という花には、とにかく豪奢で華麗なイメージが付きまといます。華やかな色合いや、花びらが重なったフォルムがそうさせるのでしょうか。エジプト女王のクレオパトラ七世やナポレオンの最初の妻・ジョゼフィーヌ等、薔薇を愛した歴史上の人物も大勢います。
と同時に、薔薇は時に、<不吉><残酷>の象徴としても扱われます。日本の桜と同様、あまりに鮮烈な美しさが、逆に見る者に不安を覚えさせるのかもしれませんね。創作の世界においても、殺人鬼が薔薇を好んでいたり、吸血鬼が薔薇から生命力を吸い取るシーンがあったりと、禍々しく不気味な小道具として登場しがちです。この作品でも、薔薇がゾッとするような使われ方をしていました。近藤史恵さんの『薔薇を拒む』です。
こんな人におすすめ
不穏な雰囲気のゴシックサスペンスが好きな人
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傑作選。読んで字のごとく、特定のジャンルや著者の作品の中から、良作を選りすぐったもののことです。基本、すでに世に出ている作品から選ばれるので、新作だと思って手を伸ばしたら「知ってるやつばかりじゃん!」とショックを受けることもあり得ます。
とはいえ、対象作品を読み尽くしていない場合は、傑作選はとても有難い存在です。何しろ収録されているのは、ほぼ確実にレベルの高い作品ばかり。読んでガッカリする可能性は低いです。「この人の作品、他にはどんなのがあるんだろう」「こういうジャンルってあんまり知らないから、とりあえずお勧め作品を読んでみたいな」という時にはぴったりですよ。例えば、「今までイヤミスを読んだことってなかったから、お勧めがあれば読んでみよう」という方には、これなんていかがでしょうか。「このミステリーがすごい!」編集部による『3分で不穏!ゾクッとするイヤミスの物語』です。
こんな人におすすめ
イヤミス専門のアンソロジーが読みたい人
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これまでミステリーやホラー小説のレビューで散々「仰天しました」「まんまと騙されました」「驚きでひっくり返りそうでした」と書いてきたことからも分かるように、私は物事の裏を読むのが苦手です。小説にしろ映画にしろ、どんでん返し系の作品はほぼ一〇〇パーセント引っかかり、ラストで絶句するのがいつものパターン。なんならティーンエイジャー向けに書かれたヤングアダルト小説にすら、しっかり騙されてしまいます。
とはいえ、それなりに長い読書人生の中には、珍しくトリックを見破れた経験も少ないながら存在します。作者の術中にまんまとはまり、ラストでびっくりするのも楽しいですが、隠された真相に気付くのもそれはそれでオツなもの。今日取り上げる作品は、ものすごく久しぶりにトリックを看破することができて嬉しかったです。真梨幸子さんの『さっちゃんは、なぜ死んだのか?』です。
こんな人におすすめ
社会背景を活かしたイヤミスに興味がある人
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二〇二四年三月、映画『変な家』が公開されました。YouTubeの動画時代から雨穴さんの作品の大ファンだった私は、すっかりメジャーになって・・・と感無量。動画版があまりに完成されていたこともあり、ホラー寄りのアレンジがなされた映画版は賛否両論あるようですね。『変な家』の場合、<短編動画→後日談を付けて長編小説化→ホラー風の映画化>という順に進んできたので、余計に意見が分かれるのかもしれません。私としては、「動画や小説とは違うけど、独立した作品としては面白い!」という感じでした。
とはいえ、「雨穴さんの作品の持つじわじわこみ上げるような怖さは、大画面じゃ再現しきれない」と感じるファンも一定数いることでしょう。私自身、そういう気持ちが一切ないと言えば嘘になってしまいます。映画版に物足りなさを感じた時は、この作品がお勧めですよ。今回ご紹介するのは雨穴さんの『変な家2』です。
こんな人におすすめ
家にまつわるサイコサスペンスが読みたい人
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