サスペンス

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「変な地図」 雨穴

地図。その名の通り、土地の情報を記号や文字などを用いて平面上に表した図面のことです。文明の進歩に伴い、地図も進化してきましたが、原型となるものは旧石器時代から存在したのだとか。地理を視覚的に理解させ、適切な移動や情報分析を可能とする地図は、社会に必要不可欠な道具です。

現代において<地図>といえば、スマホやタブレット、パソコン上で簡単に検索でき、望めば目的地までナビしてくれる優れものですが、一昔前は違いました。必要な情報を得るため、紙の地図をじっくり眺め、ああでもないこうでもないと試行錯誤する必要があったのです。不便といえば不便なのかもしれませんが、そういう時代だからこそできる地図の使い方もあったのではないでしょうか。この小説を読んで、そんな風に思いました。今回は、雨穴さん『変な地図』を取り上げたいと思います。

 

こんな人におすすめ

・閉鎖的な村が登場するミステリーが好きな人

・『変な~シリーズ』のファン

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「悪女たちのレシピ」 秋吉理香子

料理というのは、意外とサスペンスと相性がいい要素です。食欲は人間の三大欲求の一つ。そして、殺意や憎悪、妄執、狂気といったサスペンスに欠かせない感情も、悲しいかな、人間と切っても切り離せません。不可欠なもの同士、しっくり馴染むのは、ある意味で当然なのかもしれませんね。

料理と絡んだミステリーやサスペンス小説といえば、一番最近読んだのは近藤史恵さんの『ときどき旅に出るカフェ』。美味しそうな料理と、居心地良さそうなカフェの情景、温かみと同時に時折ほの暗さを感じさせる人間模様の描写が秀逸でした。それから今回ご紹介する小説にも、作中に料理がたくさん登場します。秋吉理香子さん『悪女たちのレシピ』です。

 

こんな人におすすめ

女性の殺意をテーマにしたサスペンスに興味がある人

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「閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書」 知念実希人

何らかの事件が起こった際、ニュースに以下のフレーズが出てくることがしばしばあります。「精神鑑定の結果を踏まえ、その他の証拠を総合的に考慮した上で・・・」「被告の精神鑑定を行った医師に尋問を行い・・・」。この<精神鑑定>とは、裁判所が被告人等の精神状態・責任能力を判断するため、精神科医といった鑑定人に命じる鑑定の一つ。結果如何によっては裁判所の判断が大きく変わることも有り得る、重要な行為です。

何かと賛否両論を巻き起こしがちなテーマですが、それだけ世間の関心を集めるだけあって、精神鑑定が登場するフィクション作品もたくさんあります。私の場合、強烈に印象に残っているのは日本映画『39 刑法第三十九条』。練られた脚本といい、堤真一さんや鈴木京香さんら俳優陣の熱演といい、何年経っても忘れられない名作です。小説では、山田宗樹さんの『鑑定』も、発想の活かし方が面白かったですよ。先日読んだ小説でも、精神鑑定が大きな役割を果たしていました。知念実希人さん『閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書』です。

 

こんな人におすすめ

モキュメンタリ―ホラー小説が好きな人

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「ボッコちゃん」 星新一

日本人は、神様との距離がとても近い民族です。この世のありとあらゆるものに神様が宿り、人間と絡むエピソードも実に豊富。神様と人間が結婚したり、いたずら好きの神様が人間にやり込められたり、神様がだまし討ちにされたりと、他宗教からすれば信じられないような話が山ほどあります。

神様との距離が近いせいか、日本では生きた人間を神様扱いすることも珍しくありません。菅原道真や徳川家康のように、本当に神社に祀られる例もありますし、特定の分野で多大な功績を挙げた人間を<〇〇の神様>と称することも多々あります。後者の場合、神社に祀るよりハードルが低いこともあって該当者数も多く、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。今日は、<ショートショートの神様>と称される星新一さんの短編集『ボッコちゃん』を取り上げたいと思います。

 

こんな人におすすめ

完成度の高いショートショート集に興味がある人

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「拷問依存症」 櫛木理宇

フィクションの世界には、<ダークヒーロー>というキャラクターが存在します。読んで字の如く<闇のヒーロー>のことで、正義と相対する立場ながら確固たる信念を持っていたり、悲劇的な過去ゆえに悪側になってしまったり、違法な手段を使いながら人を救ったりするキャラクターを指します。例を挙げると、映画『スターウォーズシリーズ』のダース・ベイダーや、大場つぐみさん原作による漫画『DEATH NOTE』の主人公・夜神月などですね。これらのキャラクターは、どうかすると正義側の主人公より人気を集めることもあったりします。

では、ダークヒーローと、ただの悪党の違いは何でしょうか。もちろん、法律上の定義などはありませんが、一般的には、何らかの背景なり美学を持ち、人を救うこともあり得るのが<ダークヒーロー>、目先の利益に溺れるのが<小悪党>という分け方をされている気がします。闇側の存在とはいえ、<ヒーロー>の名を冠するからには、ちんけな小物ではダメということでしょう。それならば、果たして今日ご紹介する作品の登場人物は、ダークヒーローといえるのでしょうか。今回は、櫛木理宇さん『拷問依存症』を取り上げたいと思います。

 

<こんな人におすすめ>

・報復をテーマにしたイヤミスに興味がある人

・『依存症シリーズ』が好きな人

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「パズラー 謎と論理のエンタテイメント」 西澤保彦

二〇二五年最後の一日となりました。今年も色々あったものの、無事にブログを続けることができて感無量です。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

何かと慌ただしいご時世ですが、小説界隈に関していえば、個人的に一番衝撃的だったのは作家・西澤保彦さんが亡くなられたことです。まだ六十代。多作な作家さんだし、てっきり今後も新作がたくさん楽しめると思っていたのに、本当にショックです。心よりご冥福をお祈りするとともに、哀悼の意を表するため、今年の「はいくる」は西澤保彦さんの短編集『パズラー 謎と論理のエンタテイメント』で締めようと思います。

 

こんな人におすすめ

アクロバティックなミステリー短編集が読みたい人

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「見てはいけない」 山口恵以子

今年も残すところあとわずか。世間はすっかりクリスマスおよび年末ムードです。師走、などと言われるほど忙しない時期ですが、こういうバタバタした感じ、結構好きだったりします。

イルミネーションなどで華やかな季節ですが、私はこの時期に、どこか薄暗く寒々しいものを感じます。気温の低さや、日照時間の短さが原因でしょうか。先日読んだ作品は、そんな気分にぴったりの一冊でした。山口恵以子さん『見てはいけない』です。

 

こんな人におすすめ

愛憎絡み合うサスペンス短編集に興味がある人

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「七月の鋭利な破片」 櫛木理宇

振り返ってみると、子ども時代の行事は圧倒的に夏が多かった気がします。日が長いこと、日没後も屋外活動がしやすいこと、冬と比べると感染症による体調不良者も出にくいこと等が理由でしょうか。暑すぎて真夏は外出すらままならない現代とは、ずいぶん違ったものだなと思います。

創作の世界においても、子どもないし子ども時代が絡んだ作品では、夏の行事が重要な役割を果たすことがしばしばあります。恩田陸さん『蛇行する川のほとり』では演劇祭準備のための夏合宿が、東野圭吾さん『レイクサイド』では避暑地でのお泊り夏期講習が、ミステリーの舞台となりました。夏のきらきらした眩しさと、絡み合う人間模様の生々しさが、いい対比になっていたと思います。今回取り上げる作品では、夏の林間学校での惨劇が描かれていました。櫛木理宇さん『七月の鋭利な破片』です。

 

こんな人におすすめ

子どもが絡んだサスペンスミステリーに興味がある人

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「嘘つきたちへ」 小倉千明

「嘘ついたら針千本飲ます」「嘘つきは地獄で閻魔様に舌を抜かれるよ」。誰しも人生で一度や二度、こうしたフレーズを見聞きしたことがあると思います。嘘というのは、事実とは異なる言葉を言って他者を騙すことなわけですから、基本的には良くないものとされがちです。昔からある民話にも、嘘つきがひどい目に遭い、正直者が報われるというパターンは山ほどあります。

とはいえ、すべての嘘が悪いものなのか、断罪されるべきものなのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。時には誰かのためを思って嘘をつくことだってあるでしょう。一言で<嘘>といっても、そこには無数の背景や事情が存在するのです。今回は、様々な嘘が出てくる作品を取り上げたいと思います。小倉千秋さんの『嘘つきたちへ』です。

 

こんな人におすすめ

嘘と騙しに満ちたミステリー短編集に興味がある人

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「6月31日の同窓会」 真梨幸子

記憶力はそこそこいいと自負している私ですが、それでも覚えるのが苦手なものがいくつかあります。その内の一つは、月ごとの日の数。「九月は三十日までで、十月は三十一日で・・・」というのが、本当に苦手なんです。<西向く士(にしむくさむらい)→二、四、六、九、十一月は日数が少ない月>という語呂合わせを考え出してくれた人には、感謝してもしきれません。

この日の数、サスペンスやホラーの分野では、意外と重要な要素となることが多いです。登場人物が異世界に迷い込んで、三月のカレンダーが三十日までなのを見て「あ!ここは現実世界じゃない!」と気づくというような展開、今までに何度か見ました。それから、今日ご紹介する作品でも、日付がキーワードになっているんですよ。真梨幸子さん『6月31日の同窓会』です。

 

こんな人におすすめ

女子校を中心に展開するイヤミスが読みたい人

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