サスペンス

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「まりも日記」 真梨幸子

ペットを飼うことは、ここで書ききれないほどの幸せをもたらしてくれます。毎日同じ屋根の下で寝起きし、食事をし、一緒に遊んだり、気まぐれに振り回されたり、甘えておねだりされたり・・・・・こんな風に家族として過ごしていれば、ペットの死により心を病む人がいるというのも頷けます。

ですが、ペットがもたらすのは喜びばかりではありません。どんな物事もそうであるように、辛いこと、大変なことも山ほどあります。体力的な辛さとか、精神的なプレッシャーとか、色々ありますが、突き詰めていけば最終的にお金の問題になるのではないでしょうか。動物を飼うためにはふさわしい住環境や餌を準備しなくてはなりませんし、病気や怪我をするたび、高額の医療費がかかります。こうやって列挙しただけでは苦労が分かりにくいかもしれませんが、この本を読めば少しはイメージが湧くかも・・・・・真梨幸子さん『まりも日記』です。

 

こんな人におすすめ

猫を絡めたイヤミスが読みたい人

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「ため息の時間」 唯川恵

小説にせよ漫画にせよ映画にせよドラマにせよ、フィクションの世界での恋愛は、女性メインのストーリーになりがちです。男性より女性の方が恋愛のあれこれに対する関心度合が高く、読者・視聴者として取り込みやすいからでしょうか。そして、メインターゲットが女性である以上、女性中心の物語にした方がより共感を呼ぶのかもしれません。

ですが、当たり前の話ながら、男性だって恋をします。それは小説内でも同じで、金城一紀さんの『GO』、村山由佳さんの『天使の卵』、盛田隆二さんの『ありふれた魔法』などでは、恋に落ちた男性の悲喜こもごもが丁寧に描かれていました。そう言えば、この方にも男性の恋愛をテーマにした作品があるんですよ。唯川恵さん『ため息の時間』です。

 

こんな人におすすめ

愛に翻弄される男達の短編集が読みたい人

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「悪の芽」 貫井徳郎

学生だった頃を振り返ってみると、一番ぎすぎすして精神的にきつかったのが中学時代。ただ、一番後悔が多いのは小学校時代です。何しろ小学生と言えば、まだ幼児に毛が生えたようなもの(言い過ぎ?)。後になってみれば、よくあんなこと言えたよな、なんであんなことしちゃったんだろう・・・と頭を抱えてしまうようなこともありました。

小学生時代が出てくる小説としては、過去にブログでも取り上げた加納朋子さんの『ぐるぐる猿と歌う鳥』や降田天さんの『女王はかえらない』があります。他には湊かなえさんの『贖罪』、湯本香樹実さんの『夏の庭-The Friends』、朱川湊人さんの『オルゴォル』etcetc。イヤミスもあれば成長物語もありますが、どれも小学生特有の未熟さ、幼さが描かれていました。この作品でも、あまりに幼稚な小学生時代の罪が丁寧に描写されていましたよ。貫井徳郎さん『悪の芽』です。

 

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子ども時代の罪と後悔をテーマにしたミステリーが読みたい人

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「ミニ・ミステリ100」 アイザック・アシモフ他編

皆さんは公共交通機関で移動中、何をして時間を潰しますか?スマホで動画鑑賞やゲームをする人、クロスワードパズルをする人、睡眠不足解消のため眠る人・・・過ごし方は人それぞれです。私の場合、ほぼ迷わず読書一択。昔、新幹線での出張が多い仕事をしていた時は、どの本を持って行くかを考えるのが最優先の検討事案でした(笑)

とはいえ、休日に自宅でゆっくり読むのと違い、交通機関内での読書は時間の制限があります。周囲の雑音等もありますし、集中力が続かないことだってあるかもしれません。そうなると、読破するのに時間がかかり、何十ページも前の伏線を覚えておく必要がある長編小説は読みにくいもの。そんな時には、一話一話の区切りがつけやすい短編集、特にショートショートがお勧めです。この作品は、移動中にぱぱっと読むのにぴったりですよ。アイザック・アシモフ他『ミニ・ミステリ100』です。

 

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ブラックな味わいのショートショートが読みたい人

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「ポーカー・レッスン」 ジェフリー・ディーヴァー

海外の創作物が日本でヒットする要因は何でしょうか。内容が肝心なのは言うまでもありませんが、翻訳の出来も、かなり重要な位置を占めます。学生時代、授業でやった英語一つ取っても、訳する人間が違えばニュアンスが大きく変わるもの。まして、商業的な作品、それも映像で物語を説明できない小説となると、翻訳のレベルが成功の鍵と言っても過言ではありません。

日本における翻訳者といえば、『ハリー・ポッターシリーズ』の松岡佑子さんのエピソードが有名です。日本語の一人称の多さや訛りを利用した訳し方は、老若男女問わず多くの読者を楽しませてくれました。もちろん、日本では他にも優れた翻訳者がたくさん活躍されていますよ。そんな翻訳の妙を堪能できる作品がこれ、ジェフリー・ディーヴァー『ポーカー・レッスン』です。

 

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どんでん返しの短編ミステリーを堪能したい人

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「トゥインクル・ボーイ」 乃南アサ

サスペンスやホラーにおける子どもの役割は、大抵二分されます。登場人物達に未来や希望を感じさせる清涼剤的存在か、子ども特有の残酷さや凶暴さを発揮する恐怖の対象か。どちらも面白いですが、イヤミス大好きな私としては、後者の子どもに惹かれてしまいます。

とはいえ、いつもいつも映画『オーメン』のダミアンのように超自然的な力で大人を殺害していく子どもばかりでは食傷してしまうというもの。冷酷さや大胆さだけでなく、幼稚さや浅はかさがあってこその子どもです。そんな子どもの恐ろしさを描いた作品といえばこれ、乃南アサさん『トゥインクル・ボーイ』です。

 

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子どもが抱える闇をテーマにした短編集が読みたい人

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「ボーダレス」 誉田哲也

本好きなら恐らく誰もが持つ娯楽、それが本屋巡りです。当たり前の話ですが、本屋は見渡す限り本、本、本。新刊コーナーをチェックしたり、気になる本をめくって内容を確認したりするだけで、時間はあっという間に潰れます。コロナ禍ではどうか分かりませんが、以前は店内の各所にソファやテーブルが設置され、購入前に座ってゆっくり読むこともできました。初めて本屋で閲覧席を見た時、ここは地上の楽園かと思ったことを、今でもよく覚えています。

そして、本屋巡りの楽しみの一つに、特設コーナーの存在があります。季節や社会情勢、大きな賞の受賞など、その時々の状況に応じてテーマが設けられ、相応しい本が集められた特設コーナー。書店員さんが工夫を凝らした演出も多く、ここで読みたい本を見つけることも多いです。今回ご紹介する本も、とある本屋の特設コーナーで見つけました。誉田哲也さん『ボーダレス』です。

 

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群像劇から成るサスペンスが読みたい人

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「殺人依存症」 櫛木理宇

本の内容と、その本を読むタイミングというのは、密接な関係があります。例えば、大きな物事に臨む時はスカッとする勧善懲悪ストーリーがいいとか、落ち込んでいる時は悪人が出てこないハートフルコメディがぴったりとか。たかが本、されど本。読書には人の気分を左右する不思議な力があるものです。

実は私、この読書タイミングの見計らい方がものすごく下手。ずいぶん昔の話ですが、所用で飛行機に乗らなくてはならないというのに、直前になってアメリカ同時多発テロに関する本を読んでしまい、貧血起こしそうになりながら搭乗したのは懐かしい思い出です。最近も、読むタイミングを誤ってしまったせいでキツい思いをしました。櫛木理宇さん『殺人依存症』です。

 

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人間の怖さをとことん描いたサスペンスが読みたい人

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「死んでもいい」 櫛木理宇

これは小説に限った話ではありませんが、この世には<万人受けするジャンル>と<そうでないジャンル>の二種類があります。前者はコメディやヒューマンストーリー、後者はイヤミスやホラー。好みはあるにせよ、ユーモラスなほのぼの小説を読んで吐き気を催す人は少ないでしょうが、イヤミスやホラーだとそれがあり得ます。

しかし、だからといって取っつきにくいジャンルを避けまくるのはもったいないと思います。後味悪かろうがグロテスクだろうが、面白い作品は面白いもの。読んでみたら意外と好みだった、ということもあり得ない話じゃありません。そこでお勧めは短編小説。陰鬱な小説を何百ページも読むのはきつくても、ボリュームが少ない短編ならけっこうさっくり読めてしまうこともありますよ。イヤミスは怖そう、でも興味はある・・・という方は、この作品で様子見してみてはどうでしょうか。櫛木理宇さん『死んでもいい』です。

 

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人間の暗黒面を描いたイヤミス短編集が読みたい人

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「OJOGIWA」 藤崎翔

古今東西、数多く存在する<心中>の形の中で、<ネット心中>の異質さは際立っています。そもそも<心中>とは、引き裂かれそうな恋人同士があの世で結ばれることを願ってとか、家族が生活苦から逃れるためとか、そこに何らかの個人的な感情が絡むもの。一方、ネット心中の場合、縁もゆかりもない人間達が「一人で死ぬのは嫌だから」という動機で集まり、一緒に死ぬもの。当然、お互いに対する深い愛憎はありません。インターネットが発達し、何の接点もない人間同士が簡単にコミュニケーションを取れるようになったからこそ現れた心中方法です。

世相を反映しているとも言えるネット心中ですが、それが登場する小説となると、私はあまり読んだことがありませんでした。ぱっと思いつくのは、樋口明雄さんの『ミッドナイト・ラン!』くらいでしょうか。なので、この小説を見つけた時は「おおっ」と思いました。藤崎翔さん『OJOGIWA』です。

 

こんな人におすすめ

スピーディなエンタメ・サスペンス小説が読みたい人

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