サスペンス

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「ホテル・ピーベリー」 近藤史恵

私が人生で初めて行った外国はハワイです。特大サイズの料理に、日本のそれとは色合いが違う海や浜辺、華やかな民族衣装を着た現地の人々・・・ドラマや漫画で見るような光景にワクワクしっぱなしだったことを覚えています。

とはいえ、どの国もそうであるように、ハワイは桃源郷というわけではありません。人間が集まって暮らしを営む以上、暗い面や怖い面があって当然です。先日読んだ小説では、ハワイの明るい陽射しの下、冷ややかで薄暗い人間模様が繰り広げられていました。今回は、近藤史恵さん『ホテル・ピーベリー』を取り上げたいと思います。

 

こんな人におすすめ

・ハワイが登場する小説に興味がある人

・海外が舞台のサスペンスが好きな人

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「教祖の作りかた」 真梨幸子

巷でよく言われる話ですが、日本人は宗教に対するハードルが低い民族です。何しろ国内に存在する神様の数は八百万。仏教やキリスト教の宗教施設がご近所同士ということも珍しくなく、カレンダーを見れば世界各国の宗教行事が目白押し。「宗教?まあ、各自で好きなように信じればいいじゃん」という風土があります。身びいきかもしれませんが、こういう精神性って大好きです。

それは創作の世界においても同様で、日本人をメインに据えた作品の場合、「そんな理由で宗教と関わっちゃうの!?」と驚かされるケースも珍しくありません。荻原浩さんの『砂の王国』なんて、その代表例と言えるでしょう。それから、今日ご紹介する作品もそうでした。真梨幸子さん『教祖の作りかた』です。

 

こんな人におすすめ

色と欲に満ちたイヤミスが読みたい人

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「聖家族のランチ」 林真理子

私の個人的な意見ですが、フィクション世界におけるジャンルの中で、<ホラー>というのはやや特殊な位置付けにある気がします。作品に求められるのは、<恐怖><怖気><震撼>といったネガティブな感情。最近はホラーも細分化してきて、ミステリー的な謎解きがあったり、恋愛要素が絡んだりするケースも多々ありますが、根本にあるのが<恐ろしさ>という点は変わりません。

そのせいかどうなのか、色々なジャンルに挑戦されている作家さんでも、「ホラーだけはまだ・・・」ということが一定数あるように思います。その一方、「〇〇先生、ホラー初挑戦!」というような作品は、普段とは違う、新鮮なカタルシスをもたらしてくれることもしばしばです。この作品を読んだ時も、相当な衝撃でしたよ。林真理子さん『聖家族のランチ』です。

 

こんな人におすすめ

家族の崩壊をテーマにしたホラーが読みたい人

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「鬼の哭く里」 中山七里

因習ミステリー、因習サスペンス、因習ホラー・・・悪しき習慣をテーマにした作品は、こうした呼ばれ方をすることが多いです。都会ではダメというわけではないのでしょうが、設定の都合上、閉鎖的な田舎が舞台となる傾向にあるようですね。行動の不自由さ、人間関係の濃密さ、外部からの情報伝達の遅さなどが、作品の陰湿な雰囲気を盛り上げてくれます。

この手の作品で大事なのは、いかに魅力的な因習を作り出すかということ。横溝正史御大の『金田一耕助シリーズ』は言うに及ばず、三津田信三さんの『のぞきめ』といい道尾秀介さんの『背の眼』といい、読者を惹きつけてやまない因縁話が登場しました。それから、この話に出てくる因習もなかなかのものでしたよ。中山七里さん『鬼の哭く里』です。

 

こんな人におすすめ

限界集落を舞台にした因習ミステリーが読みたい人

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「骨と肉」 櫛木理宇

血が繋がった肉親同士が争うことを<骨肉の争い>と呼びます。<骨肉>とは<骨と肉のような間柄>を指すとのことで、推察するに<極めて身近な、生死を共有することもあり得る関係>という意味でしょう。文字からして血生臭さが漂ってくるようで、先人の表現って秀逸だなと感心させられます。

人類にとって不変の問題なだけあり、骨肉の争いをテーマにした作品はたくさんあります。古くはシェイクスピアの『リア王』、ちょっとユーモラスな雰囲気なら明野照葉さんの『骨肉』、ホラー寄りなら三津田信三さんの『刀城言耶シリーズ』等々、様々な状況下で肉親同士が生々しい争いが繰り広げられてきました。どんなトラブルだろうと、フィクションと思えばそれなりに面白く読めてしまうのが人情というもの。とはいえ、先日読んだ作品の骨肉の争いは、あまりに酷すぎてフィクションと分かっていても辛かったです。櫛木理宇さん『骨と肉』です。

 

こんな人におすすめ

劣悪な家庭問題をテーマにしたサスペンスに興味がある人

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「斬首の森」 澤村伊智

私は読む本を選ぶ時、必ずあらすじをチェックします。「好きな作家さんの作品は事前情報ゼロで楽しみたい!」という方も多いのでしょうが、私は大まかなところを把握してから読み始めたいタイプ。ばっちり好みに合いそうな話だった時は、読書前のワクワク感もより高まります。

ですが、世間には、あらすじからは予想もつかないような方向に進んでいく作品も存在します。私がこの手の作品で真っ先に思いつくのは、鈴木光司さんの『リングシリーズ』。おどろおどろしいジャパニーズホラーかと思いきや、続編『らせん』『ループ』と進むにつれてどんどん新事実が発覚し、SF小説の様相を呈してくる展開が衝撃的でした。それからこの本も、あらすじから想像していた話とは全然違う方向に進んでいきます。澤村伊智さん『斬首の森』です。

 

こんな人におすすめ

予想もできないようなホラーミステリーが読みたい人

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「暗黒の羊」 美輪和音

私は、一人の作家さんにハマると、その方の作品をひたすら読み続ける傾向にあります。近藤史恵さん、真梨幸子さん、乃南アサさん等々、ふとした瞬間に熱が再燃し、延々と読み返したものです。図書館の貸し出し履歴を見ると、当時の私がどの作家さんにハマっていたか一目瞭然で、ちょっと面白かったりします。

ただ、こういう読み方には、弊害が一つあります。一人の作家さんに注目するあまり、その他の作家さんの情報に疎くなり、「え!いつの間に新刊出ていたの!?」ということがしばしばあるということです。今回取り上げる作品も、刊行されていたことに気付いておらず、著作一覧のページを見てものすごく驚きました。美輪和音さん『暗黒の羊』です。

 

こんな人におすすめ

人の闇を描いたサイコサスペンス短編集に興味がある人

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「モノマネ芸人、死体を埋める」 藤崎翔

フィクション作品、特にミステリーやサスペンスの世界において、数多くの登場人物達が死体と出くわします。常識的に考えれば、そこで真っ先にすべきことは<救急・警察に通報する>一択なものの、創作の世界となると話は別。主人公がどうにか死体を処分しようと苦悩するところから物語が始まる、という展開も珍しくありません。

ここで問題となるのが、死体の処分方法です。燃やす、沈める、バラバラにする等々、様々なやり方がありますが、一番よくあるのは<埋める>ではないでしょうか。土がある場所を掘りさえすればOK!とにかく死体を見えない状態にできる!というお手軽感(?)のせいかもしれませんね。とはいえ、物事はそんなに都合良く進まないのが世の中の常。目先の欲に振り回されたおかげで、とんでもない事態に陥ってしまうこともあり得ます。今回取り上げるのは、そんな修羅場に巻き込まれてしまった人間の悲喜劇、藤崎翔さん『モノマネ芸人、死体を埋める』です。

 

こんな人におすすめ

コミカルなクライムサスペンスが読みたい人

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「泥棒猫ヒナコの事件簿 別れの夜には猫がいる」 永嶋恵美

現代には、エンターテインメントが溢れています。漫画に小説、ドラマ、映画、ゲームetc。漫画一つ取っても、紙媒体もあれば電子書籍もありと、その数はまさに無数。この分だと、三年後、五年後には、きっとまた新しい娯楽が誕生していることでしょう。

これだけ数が多いと、当然ながら、詳しい分野と疎い分野が出てきます。私の場合、このところドラマに触れる機会がめっきり減りました。お気に入りの小説や漫画について調べた時、「え、これって映像化していたんだ!しかもとっくに放映終了してる!」と驚くこともしばしば・・・この作品も、知らない間にドラマ化されていたと最近知りました。永嶋恵美さん『泥棒猫ヒナコの事件簿 別れの夜には猫がいる』です。

 

こんな人におすすめ

・後味の良いサスペンス短編集が読みたい人

・『泥棒猫ヒナコの事件簿シリーズ』のファン

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「殺める女神の島」 秋吉理香子

「昔はよく見聞きしたけど、今はめっきり減ったよなぁ」と思う物事って、色々あります。その中の一つが、ミス・コンテスト。独身女性が優勝を目指して競い合うイベントで、ミス・ユニバースやミス・日本が有名ですね。一時期は様々な自治体や学校がコンテストを開催していましたが、ルッキズムやジェンダーレスといった問題から、昨今はその数も激減したようです。

現実のミスコンに対する賛否はひとまず置いておくとして、多くの女性が一堂に会して競うというシチュエーションは、小説の舞台にぴったり。林真理子さんの『ビューティーキャンプ』では、美の世界に生きる女性達の悲喜こもごもがリアリティたっぷりに描かれていました。私はイヤミス好きなので、ミステリーやサスペンスの分野で何か読みたいなと思っていたら・・・先日、見つけました。秋吉理香子さん『殺める女神の島』です。

 

こんな人におすすめ

・ミスコンを扱った作品に興味がある人

・クローズドサークルもののミステリーが好きな人

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