かつて、漫画家の藤子・F・不二雄さんは、SFのことを<S(すこし)F(不思議)>と解釈しました。その言葉通り、この方の作品は『ドラえもん』に代表されるように、日常の中に不思議要素が混ざっていることが多いです。『スターウォーズ』のような壮大なSF叙事詩もいいけれど、身近なところから非日常を感じさせてくれる作品もまた面白いですよね。
日常の中に非日常が混じった作品は<エブリデイ・マジック>と呼ばれ、海外でも広く認知されています。一般家庭に魔女がやって来る『メアリー・ポピンズ』、森の中に不思議な生き物が棲むジブリ映画『となりのトトロ』、特殊な力を持ちながら一般社会に交じって生きる人々を描いた恩田陸さんの『常野物語』等々、名作がたくさんあります。今回取り上げる作品も、ジャンル分けするとこれに入るのかな。芦沢央さんの『魂婚心中』です。
こんな人におすすめ
現実と少し違う世界のSF短編集に興味がある人

「お気に入りの作品に出てくる土地を見てみたい」「あの作者が愛した店に行ってみたい」。そう願うファンは少なくないと思います。かくいう私もその一人。映画『ロード・オブ・ザ・リングシリーズ』の大ファンでもあるため、お金を貯めて、いつかニュージーランドの撮影地すべてを回るのが生涯の夢です。
私が人生で初めて行った外国はハワイです。特大サイズの料理に、日本のそれとは色合いが違う海や浜辺、華やかな民族衣装を着た現地の人々・・・ドラマや漫画で見るような光景にワクワクしっぱなしだったことを覚えています。
巷でよく言われる話ですが、日本人は宗教に対するハードルが低い民族です。何しろ国内に存在する神様の数は八百万。仏教やキリスト教の宗教施設がご近所同士ということも珍しくなく、カレンダーを見れば世界各国の宗教行事が目白押し。「宗教?まあ、各自で好きなように信じればいいじゃん」という風土があります。身びいきかもしれませんが、こういう精神性って大好きです。
私の個人的な意見ですが、フィクション世界におけるジャンルの中で、<ホラー>というのはやや特殊な位置付けにある気がします。作品に求められるのは、<恐怖><怖気><震撼>といったネガティブな感情。最近はホラーも細分化してきて、ミステリー的な謎解きがあったり、恋愛要素が絡んだりするケースも多々ありますが、根本にあるのが<恐ろしさ>という点は変わりません。
因習ミステリー、因習サスペンス、因習ホラー・・・悪しき習慣をテーマにした作品は、こうした呼ばれ方をすることが多いです。都会ではダメというわけではないのでしょうが、設定の都合上、閉鎖的な田舎が舞台となる傾向にあるようですね。行動の不自由さ、人間関係の濃密さ、外部からの情報伝達の遅さなどが、作品の陰湿な雰囲気を盛り上げてくれます。
血が繋がった肉親同士が争うことを<骨肉の争い>と呼びます。<骨肉>とは<骨と肉のような間柄>を指すとのことで、推察するに<極めて身近な、生死を共有することもあり得る関係>という意味でしょう。文字からして血生臭さが漂ってくるようで、先人の表現って秀逸だなと感心させられます。
シリーズ物の作品には、しばしば<大きな変化がなく、決まった流れを繰り返す>というパターンが存在します。よく<サザエさん時空>と呼ばれる、日常系の作品に多いパターンですね。現実には往々にして悲劇的な変化が多い分、物語には不変・不動が求められるのかもしれません。
私は読む本を選ぶ時、必ずあらすじをチェックします。「好きな作家さんの作品は事前情報ゼロで楽しみたい!」という方も多いのでしょうが、私は大まかなところを把握してから読み始めたいタイプ。ばっちり好みに合いそうな話だった時は、読書前のワクワク感もより高まります。
私は、一人の作家さんにハマると、その方の作品をひたすら読み続ける傾向にあります。近藤史恵さん、真梨幸子さん、乃南アサさん等々、ふとした瞬間に熱が再燃し、延々と読み返したものです。図書館の貸し出し履歴を見ると、当時の私がどの作家さんにハマっていたか一目瞭然で、ちょっと面白かったりします。