サスペンス

はいくる

「三匹の子豚」 真梨幸子

桃太郎、かぐや姫、シンデレラ、眠れる森の美女・・・・・世界各国には様々な童話が存在します。一見、非現実的なフィクションと思われがちですが、童話には現実世界でも通用する教訓が込められているもの。だからこそ、何百年、何千年にも渡って各地で伝わり続けてきたのでしょう。

そんな童話の初版を調べてみると、子どものトラウマになりかねないほど残酷なものが多いです。『白雪姫』の初版で、悪いお妃が焼けた鉄靴を履かされ死ぬまで踊らされるという展開など、そのいい例と言えるでしょう。上記の特性から、童話を現代風にアレンジした小説はたくさんあります。『ヘンゼルとグレーテル』『赤ずきん』『ラプンツェル』などはモチーフになりやすいので、今回は目新しい作品を取り上げたいと思います。真梨幸子さん『三匹の子豚』です。

 

こんな人におすすめ

母と娘にまつわる愛憎劇が読みたい人

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「唐沢家の四本の百合」 小池真理子

「嫁姑の仲よきはもっけの不思議」などという言葉もあるように、嫁と姑というのは多かれ少なかれ揉めるものと思われがちです。赤の他人の同性同士が身内になるという状況のせいでしょうか。もちろん、嫁姑関係が円満にいっている家庭もたくさんあるんでしょうが、小説やドラマの中には、確執を抱えた嫁と姑が大勢登場します。

一方、舅となると、創作物に限って言えば意外なくらい存在感が薄いケースが多いです。嫁いびりをするどころか、台詞があるかないかよく分からないような場合も少なくありません。そんないまいち影の薄い舅にスポットライトを当てるため、今回は小池真理子さん『唐沢家の四本の百合』を取り上げたいと思います。

 

こんな人におすすめ

家庭内サスペンス小説が読みたい人

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「充ち足りた悪漢たち」 赤川次郎

子どもという存在は無邪気なもの、裏表なく素直なもの・・・そんなイメージを抱いている人は多いでしょうし、実際にそういう面もあります。しかし、油断は禁物です。無邪気さや素直さは、残酷さや遠慮のなさに繋がるもの。「なんでそんなことをしてしまったの」と大人を唖然とさせる子どもは、現実にも存在します。

この手の<残酷な子ども>を描いた作品で私が一番衝撃を受けたのは、S.キングの『トウモロコシ畑の子どもたち』とスペインのホラー映画『ザ・チャイルド』。集団で襲って来る子どもたちと、訳も分からぬまま惨殺されていく大人たちの描写が凄惨で、しばらく呆然としてしまいました。この二作品はグロテスクな部分が多く、かなり人を選ぶと思うので、今回はもう少しマイルドな<怖い子どもたち>を紹介したいと思います。赤川次郎さん『充ち足りた悪漢たち』です。

 

こんな人におすすめ

子どもの恐ろしさをテーマにした短編集が読みたい人

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「10分間ミステリー」 『このミステリーがすごい!』大賞編集部 編

芥川龍之介賞、直木三十五賞、吉川英治文学賞、山本周五郎賞・・・・・文壇には様々な文学賞があります。インターネットなどを経て人気を集める作家さんや作品も増えてきましたが、それでもやはりこうした文学賞には価値があるもの。権威ある賞の受賞をきっかけにデビューした作家さんは大勢います。

そんな文学賞の中で、私が一番注目しているのは『このミステリーがすごい!』大賞です。二〇〇二年に創設された新しい賞ですが、海堂尊さんの『チーム・バチスタの栄光』や柚月裕子さんの『臨床心理』、中山七里さんの『さよならドビュッシー』など、受賞を機にスターダムの仲間入りをした人気作家さんも多いです。今回は、そんな『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家さんがずらりと並んだアンソロジーをご紹介します。『10分間ミステリー』です。

 

こんな人におすすめ

ショートショートが詰まった短編集が読みたい人

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「怖い女の話」 柴田哲孝

今までこのブログでは、<怖い女>が登場する小説をたくさん取り上げてきました。別に狙ったわけではありませんが、それらの小説の大半は、作者が女性だった気がします。女性作家の手で綴られる女の狂気や愛憎の恐ろしさはやはり格別。読んでいて鳥肌が立ちそうになることすらあるほどです。

その一方、男性作家が描く<怖い女>の中にも、強烈な猛者がうようよいます。男性作家の場合、悪女に翻弄される男性被害者の描写にも力が入るんですよね。この辺りは、中山七里さんの『嗤う淑女』や、五十嵐貴久さんの『リカ』などを読めば実感できると思います。例に挙げた二作品は、どちらも一人の<怖い女>が活躍(?)する話なので、今回は多種多様な<怖い女>が登場する作品をご紹介します。作家だけでなく冒険家としての顔も持つ、柴田哲孝さん『怖い女の話』です。

 

こんな人におすすめ

女性の狂気をテーマにしたサイコサスペンスが読みたい人

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「ぬるくゆるやかに流れる黒い川」 櫛木理宇

今更言うまでもない話ですが、殺人という犯罪は多くのものを奪っていきます。被害者本人の命や尊厳はもちろん、その家族の人生をも大きく揺るがし、ひっくり返し、時に破壊してしまうことすらあり得ます。昔見たドラマで、息子を殺された父親が言っていた「家族全員殺されたようなものだ」という台詞は、決して大げさなものではないのでしょう。

そんな被害者遺族の苦しみをテーマにした作品はたくさんあります。有名なものだと、東野圭吾さんの『さまよう刃』や『虚ろな十字架』、薬丸岳さんの『悪党』といったところでしょうか。今回取り上げる小説にも、理不尽な犯罪に傷つき苦しむ遺族が登場します。櫛木理宇さん『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』です。

 

こんな人におすすめ

歴史的要素の絡んだサスペンスが読みたい人

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「初恋さがし」 真梨幸子

ミステリーには、<主役にしやすい職業>というものがあります。高い調査能力や行動力を持ち、事件と関わる確率の高い職業の方が、物語を始めやすいですからね。たとえば刑事や弁護士、検事、ジャーナリストなどなど。探偵もその一つです。

日本の名探偵といえば金田一耕助や明智小五郎などが有名ですが、現代日本において探偵が堂々と大事件に関わる機会はそうそうありません。現代では<探偵事務所>や<興信所>の職員が、人探しや素行調査を行う過程で事件と関わるというパターンが多いです。加納朋子さんの『アリスシリーズ』、柴田よしきさんの『花咲慎一郎シリーズ』などがそうですね。今回ご紹介する小説もその一つ。真梨幸子さん『初恋さがし』です。

 

こんな人におすすめ

テンポの良いイヤミスが読みたい人

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「ブードゥー・チャイルド」 歌野晶午

生まれ変わり、輪廻転生、リインカーネーション。生き物が死後に再び肉体を得てこの世に戻ってくるという考え方は、世界中に存在します。この思想を信じるか否かでは意見が分かれるのでしょうが、私自身はかなり信じている方。実際、偶然や勘違いでは片づけられない事例もたくさんあるようです。

想像の余地が多いにあるテーマだからか、生まれ変わりをテーマにした創作物はたくさんあります。私のお気に入りは恩田陸さんの『ライオンハート』と北村薫さんの『リセット』。生まれ変わって大切な人と巡り合う奇跡に胸が熱くなりました。この二作品は、生まれ変わりの切なさや喜びを描いているので、今回は少し趣の異なる作品を取り上げたいと思います。歌野晶午さん『ブードゥー・チャイルド』です。

 

こんな人におすすめ

・生まれ変わりに興味がある人

・どんでん返しのある本格ミステリが好きな人

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「予言の島」 澤村伊智

<予言>という単語を聞いて多くの人が思い浮かべるのは、かの有名な<ノストラダムスの大予言>でしょう。<一九九九年七か月、空から恐怖の大王が来るだろう>という一文が<一九九九年に人類は滅びる>と解釈され、一時期、テレビや雑誌もその話題で持ちきりでした。かくいう私も、ハラハラドキドキしながら特集雑誌を買い求めた一人です。

こんな風に何かと世間の注目を集める<予言>ですが、これをテーマにした小説となると、あまりお目にかかったことがありません。関係者の中に預言者を名乗る人間がいるケースはありますが、大抵は詐欺まがいの手を使う小悪党というのがお約束。<未来を見通す>という能力の性質上、あまり大々的に取り上げると何でもありのハチャメチャ小説になってしまうからでしょうか。ですが、この小説に出てくる<予言>は一味違いました。澤村伊智さん『予言の島』です。

 

こんな人におすすめ

クローズド・サークルを扱ったホラーサスペンスが読みたい人

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「緋色の囁き」 綾辻行人

ミステリーにおけるトリックの一つに、<叙述トリック>というものがあります。一部の情報をわざと曖昧に記述し、読者に思い込みや先入観を抱かせてミスリードを誘うトリックのことです。男性かと思われた人物が実は女性だったり、同じ時代を生きる登場人物たちの物語と見せかけて、実は片方は数十年前の人物だったりと、色々な仕掛け方がありますね。

このテーマを得意とする作家さんといえば、折原一さん、歌野晶午さん、乾くるみさんなどが有名です。そしてもう一人、忘れちゃいけないのが大御所中の大御所が綾辻行人さん。社会派ミステリーが人気を集めていた時代に<新本格>という新たなジャンルを生み出した偉大な方です。綾辻さんといえば『館シリーズ』が有名ですので、今回はちょっと趣向を変えて『緋色の囁き』を取り上げたいと思います。

 

こんな人におすすめ

・叙述トリックが仕掛けられたミステリーが読みたい人

・少女の残酷さを描いた作品が好きな人

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