今、人類は一丸となってコロナウィルスと戦っています。世界各国ではロックダウンの措置が講じられ、オリンピックは延期となり、日本でも非常事態宣言の発令や衛生用品の買い占めなど、平時では考えられなかった事態が次々起こっています。毎日ニュースを見るたび、ウィルスの恐ろしさを実感するとともに、不眠不休で働いてくれている医療従事者や物流業界の方々に頭が下がる思いです。
ですが、嬉しい知らせを聞くこともあります。国内の感染者数は今のところ減少傾向にありますし、非常事態宣言は解除され、以前の日常が戻りつつあると感じる機会も増えました。もちろん、まだまだ油断は禁物ですが、一時の酷い状況を思えば、いい傾向と見ていいでしょう。本好きの私としては、ずっと休館中だった図書館でまた本が借りられるようになったことが嬉しいです。特にこの本は発売前からチェックしていたこともあり、受け取った時は思わずガッツポーズしてしまいました。真梨幸子さんの『坂の上の赤い屋根』です。
こんな人におすすめ
猟奇殺人事件をめぐるイヤミスが読みたい人
すべてはあの赤い屋根の家から始まった--―――評判の良い医者夫妻が、実の娘とその恋人によって惨殺された<文京区両親強盗殺人事件>。十八年後、事件をテーマにした小説が連載され始めたことをきっかけに、封じられていた過去が甦る。あの事件の元凶は一体何だったのか。周囲の尊敬を集めていた夫婦は、なぜかくも残虐な殺され方をされたのか。事件を巡り関係者達のエゴが錯綜する中、浮かび上がってきた真相とは・・・・・
私の図書館ライフ再開にぴったりの、インパクトのある作品でした。真梨さんの場合、決して作中に救いや希望を用意せず、ひたすらドロドロイヤミス路線を貫いているところが清々しいですね。本作も相変わらずの真っ黒ぶり、登場人物達は全員どうしようもない奴ばかりで、安定の真梨ワールドを堪能できます。
人望厚い医者夫妻が全身を切り刻まれ、コンクリート詰めにされて殺された<文京区両親強盗殺人事件>。犯人の二人組の内、被害者夫妻の娘である彩也子は無期懲役、その恋人の大渕は死刑判決を受け、すべては終わったかに見えました。十八年後、若き新人作家が事件を描いた小説の連載を始めるまでは。事件を追う作家、各々の打算を抱えて暗躍する編集者達、無罪判決のため奔走する死刑囚の妻・・・・・彼らの思惑が交錯し、新たな悲劇を招くことになるのです。
物語の中心となる<文京区両親強盗殺人事件>の概要からも分かる通り、残酷度はかなり高いです。この夫妻が殺害される場面をはじめ、作中に何度も出てくる殺人、暴力、セックス、排泄などの描写が生々しいやら泥臭いやら・・・肉体的な面だけでなく、見栄や妄執、憎悪、嫉妬、劣等感といった精神面の描き方もかなり強烈。食前はもちろん、食後もすぐには読まない方がいいかもしれません。
とはいえ、それらをただの趣味の悪いグロ場面にせず、きちんと物語として昇華させているのが真梨さんのすごいところですね。些細な描写が伏線だったり、さりげなく叙述トリックが用意されていたりと、読者を飽きさせないための仕掛けはバッチリです。読了後に読み返してみると、実は第一章がものすごく重要だったんだよなぁ。
あと、真梨さんの小説の場合、登場人物は嫌な奴ばかりなのに、共感できる点もそれなりにあるのが面白いです。どれだけ卑屈な真似をしようとのし上がりたい新人作家とか、過去の栄光が忘れられずあがく元カリスマ編集者とか、親兄弟へのコンプレックスに苦しみつつ死刑囚と獄中結婚した妻とか、「もし自分がこの立場なら、こんな風になってしまうかも・・・」と、ちらっとだけど思ってしまうんですよ。こういう所が、どれだけグロかろうと後味悪かろうと、真梨さんの小説を読んでしまう理由なんでしょう。
ちなみに、人間関係がこれでもかこれでもかと乱れまくる真梨作品としては珍しく、本作の主要登場人物は七人とやや少なめ。ただ、事件に大きく関係しない端役キャラまでやたら個性豊かなこと、時系列が前後すること、<私><わたし>といった一人称が多用され、語り手の性別までぼかされていることなどから、油断すると物語のテンポについていけなくなるかもしれません。他の真梨作品同様、できれば時間に余裕がある時、じっくり腰を据えて読むことをお勧めします。
ろくでなしばかりで黒幕が分からない・・・度★★★★★
大事なのは生活環境よりも家庭環境!度★★★★☆
図書館が開館して何よりです。昔住んでいた北九州市にクラスターが発生して心配です。十分にお気を付けて。
なかなか壮絶なミステリーで真梨さんらしい残酷な描写がありそうです。
先日読み終えた柚月裕子さんの「孤狼の血」シリーズ、極道・愚連隊の残酷さとは別の残酷さがありそうです。残酷な描写は苦手ですが読まされてしまう筆力に感心します。こちらの図書館は入場制限がありますが、思ったより人が少ないです。
遊びに行っているのか?と思いました。
「孤狼の血」シリーズとは違い、鬱々と内にこもる残酷さのオンパレードでした。
それでも、相変わらずの牽引力でぐいぐい読ませてくれます。
真相のびっくり度合もなかなかのものでしたよ。
北九州でコロナ第二波が懸念されていますね(汗)
とはいえ、まだまだ油断大敵なのは世界のどこでも同じこと。
引き続き、手洗いうがいや三密回避を心がけていこうと思います。
しんくんさんもお気を付けて!