サスペンス

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「カウントダウン」 真梨幸子

ある日突然、病気で余命宣告されたら。そんな状況に直面した時、人はどういう行動を取るのでしょうか。愛する人とたくさん思い出を作る?やり残した大仕事を片付ける?百人に聞けば百通りの答えが返ってくると思います。

悔いなく最期の瞬間を迎えるための活動「終活」は、今や社会現象となりつつあります。終活を通じて心の整理を行い、限りある人生を豊かに送る人もいるでしょう。反面、終活を行うことで、忘れたい過去を掘り返すことになったりして・・・そんな「黒い終活」を描いた作品がこれ。真梨幸子さん『カウントダウン』です。

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「BUTTER」 柚木麻子

バターたっぷりの料理は美味しいです。最近はバターを使わず、カロリーカットした

レシピが多いようですが、それだと時々物足りなくなりませんか?どちらかと言えばあっさり系の味が好きな私でさえ、たまにはバターをふんだんに使ったパスタやお菓子が食べたくなります。

とはいえ、バターの使い過ぎにはご用心。あまりに濃厚すぎる味わいの虜となり、後々後悔する羽目になったりして・・・そんな運命に陥った女性を描いた作品がこちら。柚木麻子さん『BUTTER』です。

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「青光の街(ブルーライト・タウン)」 柴田よしき

イギリスの女流作家、P・D・ジェイムズの著作に『女には向かない職業』という推理小説があります。この職業というのは「探偵」のこと。知力だけではなく、体力や筋力が求められることも多いであろう探偵稼業は、「女性には向かない」と思われがちだったのかもしれません。

とはいえ、そんな考え方があったのはもう昔の話。今や現実世界でもフィクションの中でも優秀な女探偵は数えきれないほど存在しますし、『女には向かない職業』の主人公も女性です。最近、魅力的な女探偵が登場する小説を読んだので紹介します。柴田よしきさん『青光の街(ブルーライト・タウン)』です。

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「サイレンス」 秋吉理香子

里帰り。この言葉を聞いて、どんなイメージが思い浮かぶでしょうか。久しぶりに会う家族との和気藹藹としたひと時?離れていた土地で過ごす気づまりな時間?私は今、生まれ育った地方で暮らしていますが、一時は遠方の地で働いていたことがあります。たまの休みに里帰りし、家族や幼馴染と過ごす時間は楽しいものでした。

考えてみれば、里帰りを心から楽しいと思えるのは幸せなことですよね。重苦しい気持ちを抱え、嫌々ながら帰郷するケースだってたくさんあると思います。ただ単に嫌なだけならまだしも、中には故郷で思いがけない恐怖が待ち受けていることだってあるのかも・・・・・今回取り上げるのは、そんな里帰りを扱った作品、秋吉理香子さん『サイレンス』です。

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「沈黙の教室」 折原一

ちょっと寂しい話ですが、私は同窓会にほとんど出たことがありません。小学校から大学まで、仲の良い友達数名と個人的に会いはするものの、クラス全体で集まった機会は数えるほど。幹事を決めずに卒業したり、取りまとめ役だった子が遠方に引っ越したりしたことが原因かもしれませんね。

かつて同じ教室で学んだ仲間たちが集まり、旧交を温め合う同窓会。和気あいあいと思い出話で盛り上がれれば、これほど楽しいものはないでしょう。ですが、もし同窓会に集う仲間たちに恨みを抱く者がいれば?そして、同窓会に乗じ、過去の復讐を企んでいたとしたら・・・?そんな復讐劇を描いたサスペンス小説をご紹介します。叙述トリックの名手として有名な折原一さん『沈黙の教室』です。

 

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「沈黙の町で」 奥田英朗

最近、棚の整理をしていたら、中学時代の文集を見つけました。何気なく眺める内、当時のことを色々思い出したんですが・・・あの時代は、社会人とはまた違う厳しさと残酷さがあったと、つくづく思います。体の成長に心がついていかず、行き場のないパワーを持て余す。中学生って、人生で一番不安定な時期なのかもしれません。

中学生たちの人間模様をテーマにした小説といえば、映画化もされた宮部みゆきさんの『ソロモンの偽証』などが有名ですね。ですが、リアリティという面を重視するなら、私はこちらの方が好きです。海外でも多くの作品が翻訳されている、奥田英朗さん『沈黙の町で』です。

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「間違われた女」 小池真理子

ストーカー。この言葉が日本で一般化したのは、二〇〇〇年前後からだと言われています。特定の相手を狙い、執拗につけ回し、心身に危害を加える。想像しただけで、身の毛がよだつような犯罪行為です。

ストーカーをテーマにした小説はたくさんありますが、国内のものでは、山本文緒さんの「恋愛中毒」、五十嵐貴久さんの「リカ」などが有名ですね。ですが、それより遥か以前、まだ「ストーカー」という言葉が定着していなかった頃に、ストーキングを題材にした作品が書かれていることをご存知でしょうか。得体の知れない相手につけ狙われる恐怖を味わえること間違いなし。直木賞受賞作家である、小池真理子さん「間違われた女」です。

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「絶対正義」 秋吉理香子

「正義のヒーロー」「正義感が強い」「正義の道を貫く」・・・どれも専ら良い意味を持つ言葉です。正義とは、漢字が示すとおり、正しく道理にかなうということ。それが悪いと言える人など、恐らく一人もいないでしょう。

でも、ちょっと考えてみてください。立ち居振る舞いすべてが正義を重んじ、ほんのわずかな不正も許さない人。正義を守るためなら、誰かの心を踏みにじっても構わないと思う人。もしそんな人と出会ったら、信頼より苦痛を感じてしまうのではないでしょうか。今日は、そんな「正義の化身」とも言える人が登場する作品を紹介します。「暗黒女子」の映画化も決まり、まさに乗りに乗っている秋吉理香子さん「絶対正義」です。

 

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「森に眠る魚」 角田光代

最初に受験をしたのは何歳の時ですか?私は私立中学を受験したので、十二歳の時です。残念ながら不合格だったものの、わざわざ家庭教師まで付けて応援してくれた両親には今でも感謝しています。

今や「お受験」という言葉はごく一般的なものとなり、早い子は幼稚園入園の段階から受験戦争に参戦します。そこで競われるのは、子どもの能力だけでなく親の熱意。今日は、お受験を機にもつれ、絡み合っていく人間模様を描いた作品をご紹介します。小説だけでなく、エッセイや翻訳など幅広い分野で活躍する、角田光代さん「森に眠る魚」です。

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「私が失敗した理由は」 真梨幸子

成功譚って面白いですよね。困難に負けず、逆境を跳ね除け、幸福への階段を上り詰めていくサクセスストーリーは、いつの世も人の心を惹きつけます。「サウンド・オブ・ミュージック」や「プリティ・ウーマン」が不朽の名作とされるのも、その辺りに理由があるのではないでしょうか。

では、失敗にまつわる物語はどうでしょう。登場人物はいかにして道を誤り、不幸になっていったのか。それだって、なかなか興味深いテーマだと思いませんか?というわけで、今日はこれです。イヤミス界の代表的作家として名高い真梨幸子さん「私が失敗した理由は」です。

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