新興宗教。読んで字の如く、伝統宗教(カトリック教会、十三宗五十六派の仏教、イスラム教、ヒンドゥー教etc)と比べ、成立時期が新しい宗教のことです。<時期が新しい>という基準がかなり曖昧な関係上、国内外合わせて相当な数の宗教団体がこれに該当します。
言うまでもなく、新興宗教自体は悪でも違法でもありません。前述した伝統宗教も、成立当初は新興宗教でした。ですが、オウム真理教のテロやヘヴンズ・ゲートの集団自殺、アガドンサンの連続不審死といった事件が目に付き、新興宗教に対して懐疑的な視線が集まりがちなこともまた事実。それはフィクションの世界でも同様で、澤村伊智さんの『邪教の子』や貫井徳郎さんの『慟哭』には、怖気が走りそうなほど異常な宗教団体が出てきました。先日読んだ作品に登場する新興宗教も、読んでいて非常に胸糞悪かったです。今回は、櫛木理宇さんの『凶獣の村 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』をご紹介しようと思います。
こんな人におすすめ
・新興宗教を扱ったサスペンス小説に興味がある人
・『鳥越恭一郎シリーズ』のファン
この村には、一体何が巣食っているのだろうか---――元刑事が殺害され、その孫娘が誘拐されるという凶悪事件が発生。直ちに厳戒態勢が敷かれ、鳥越恭一郎も捜査に当たる。事件現場となった村は、とある新興宗教の本拠地であり、かつて未解決の少女誘拐殺人事件が起きた場所でもあった。その事件を追っていたのが殺害された元刑事と分かり、関連性を疑う捜査陣。鳥越は頼れる相棒の鴉達の協力のもと、村の暗部へと切り込んでいくが・・・・・果たして鳥越は彼の地に棲む獣を捕らえ、少女を救うことができるのか。大人気シリーズ第三弾
一~一年半に一作のペースで順調に刊行されている本シリーズ。恐らく、櫛木理宇さんも筆が乗っているんでしょうね。本作でも鳥越は相変わらず超絶イケメン、鴉達との信頼関係もばっちりの上、なんと人間の相棒まで登場します。ファンには嬉しい一冊でした。
引退した元刑事の三ツ輪が殺害され、七歳になる孫娘の楓花が誘拐されるという凶悪事件。捜査に駆り出された鳥越は、殺害現場である胎岳村でかつて未解決の少女誘拐殺人事件が起きているということ、現役時代の三ツ輪が事件を追っていたこと、村は<十雪会>という新興宗教団体が牛耳っていることを知ります。では、過去の誘拐殺人事件と今回の事件に繋がりがあるのか。鳥越は、コンビを組む元マル暴刑事・長下部と共に捜査を開始。現地を根城とする鴉達の力も借り、少しずつ真相に迫っていくのですが・・・・・
一作目は老人問題、二作目は放火ときて、本作のテーマとなるのは新興宗教。櫛木理宇さんだからそうなるだろうなと思っていましたが、この宗教団体のイカレっぷりが凄まじく、読んでいて気が滅入りっぱなしでした。子どもを親と引き離し、<自然が一番>という方針のもと身なりすらろくに整えず、予防接種も外部医療機関の受診も禁止。当然、乳幼児の死亡率は高く、その一方で教祖や幹部達は王様気取りでやりたい放題。終盤、一連の事件の根幹ともいえる過去の悲劇が鳥越の口から明らかになるのですが、それが本当に惨たらしくて・・・・・現実に起こる宗教絡みの事件を思うと、これらが決してフィクションと言い切れないところが恐ろしいです。
そんな凶悪事件に挑む鳥越とコンビを組むのは、元マル暴捜査員であり、今はゴンゾウ(能力はあるのに働かない刑事)と化した刑事・長下部です。思えば過去二作で鳥越とコンビを組んだのは、どちらも後輩刑事でした。対して本作の長下部は鳥越より年上であり、刑事としての経験値も上。登場当初は不愛想で無理解な相棒と思えたものの、次第に鳥越と協力し合い、思わぬユーモラスな一面さえ見せるようになります。なんとなんとなんと!人間に心を開けないと自認していた鳥越が、長下部を自宅に招き、鴉との交流を打ち明けるまでの信頼関係を築くんですよ。『灰いろの鴉』『業火の地』での鳥越の孤独を知っている読者としては、なんとも感慨深かったです。
唯一の難点としては、現在と過去の事件、新興宗教、違法組織との繋がり等、織り込まれたテーマが多く、登場人物の名前や関係性を把握するのが大変というところでしょうか。櫛木理宇さんの作品は比較的閉鎖的な状況で進んでいくことが多い分、こういう複雑な展開は珍しい気がします。実際の分量以上に盛りだくさんの内容なので、じっくり腰を据えて読んだ方がいいかもしれません。四作目でも長下部が登場してくれることを期待!
もはや鴉に給料払ってもいいレベル度★★★★☆
プロローグとエピローグの繋がりに拍手喝采!度★★★★★
鴉刑事・鳥越恭一郎の第3弾が出たのですね。
前回までは後輩と組んでいましたが、先輩で経験豊富と刑事とのコンビはなかなか面白そうです。
癖が強そうで扱いが難しそうですが、意外に鳥越とは相性が良さそうです。
早速、予約します。
~と思ったら図書館に入っていなかったのでリクエストします。
また一番で読めそうです。
中山七里さんのドクターデスの再臨もリクエストしてます。他にリクエストしていないので一番に読めそうです。
変な家2は予約が遅れた為、時間はかかりそうです。
新登場の長下部は、能力的にも性格的にも鳥越と合っている感じがしました。
二作目に出てきたバー・ジャルダンのママがプライベートで、長下部は公で、鳥越と信頼を強めていってくれたらいいなと思います。
私の方は湊かなえさんの「人間標本」と藤崎翔さんの「お梅は呪いたい」が予約順位一番目まで来ました。
反対に、柚月裕子さんの「風に立つ」は百番目。
読める日はまだ先のようです。
3作目も面白かったです。
毒には毒を持って制す~の言葉がピッタリ来ると感じました。
長下部と鴉を上手く使いこなす鳥越の采配が見事でした。
癖の強い鴉とベテラン刑事を仲間として接する鳥越の手法こそ理想的だと感じました。
オウム真理教の縮小版、勧誘の手口、教団の暴走など櫛木理宇さん独特のドギツイ設定に、鴉と長下部と犯人を追い詰めていく過程はホーンテッド・キャンパスを思い出しました。
安定の面白さでしたよね。
長下部も鴉も頼りになるし、プロローグ~エピローグの繋がり方も見事だと思いました。
諸悪の根源には、もっと痛い目を見てほしかった気もしますが・・・