創作の世界には、<メタフィクション>という手法があります。これは、フィクション作品を「これは現実ではなく、作り物ですからね」とあえて表現・強調するやり方のこと。例えば、作中に作者自身が登場したり、キャラクターに自分がフィクション世界の生き物であると自覚しているような言動を取らせたり、ページや画面のこちら側に向けて「君はどう思う?」と語りかけさせたりすることなどが、メタフィクションに当たります。フィクション世界に現実の人間が入り込んだり、キャラクターがこちらに語りかけたりするなど、常識から考えてあり得ません。そんなありえない状況をわざわざ作ることで読者・視聴者を「おっ!」と思わせ、物語を盛り上げるのが、メタフィクションの狙いです。
あらゆる創作物でよく見られる手法ですが、小説に限定して例を挙げると、登場人物達が自分を小説内のキャラクターであると自覚している東野圭吾さんの『天下一大五郎シリーズ』、作者本人が主人公を務める澤村伊智さんの『恐怖小説 キリカ』、物語自体が作中作だった綾辻行人さんの『迷路館の殺人』等々、名作がたくさんあります。どれも面白い作品でしたが、個人的にメタフィクション作品の第一人者といえば、真っ先に思いつくのは三津田信三さんです。今回は、その著作の中から『誰かの家』を取り上げたいと思います。
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実話風ホラー短編集が読みたい人