成功譚って面白いですよね。困難に負けず、逆境を跳ね除け、幸福への階段を上り詰めていくサクセスストーリーは、いつの世も人の心を惹きつけます。「サウンド・オブ・ミュージック」や「プリティ・ウーマン」が不朽の名作とされるのも、その辺りに理由があるのではないでしょうか。
では、失敗にまつわる物語はどうでしょう。登場人物はいかにして道を誤り、不幸になっていったのか。それだって、なかなか興味深いテーマだと思いませんか?というわけで、今日はこれです。イヤミス界の代表的作家として名高い真梨幸子さんの「私が失敗した理由は」です。
流産、退職、不本意な引っ越し・・・様々な不幸の積み重ねにより、スーパーのパート従業員として鬱々とした日々を送る女性・落合美緒。だが、そんな彼女の毎日は、同僚だった女性が隣人一家殺害事件の犯人として逮捕されたことで一変する。身近で起こった大事件に「ときめき」を感じた美緒は、とある思惑を抱き、編集者として働く元カレに連絡する。人々の失敗談を集め、本を出版しようとする美緒を待ち受ける運命とは。
「身勝手で嫌な人間」を書かせたら、相変わらず天下一品の真梨幸子。ぶっ飛んだキャラが多いようでいて、「こんな人は現実には絶対にいない」と言い切れないところがまた怖いです。登場人物が多いためこんがらがりそうだったものの、最終的には問題なく読めました・・・・・だって、次から次へとキャラクターが死んでいくんですから(汗)
タイトル通り、本作には様々な「失敗」をした人々が登場しますが、その内容もまたバラエティ豊か。ベストセラー小説を出しつつも借金地獄に陥った女流作家、念願の引っ越しを目前に控えながら大量殺人犯として逮捕されたパート従業員、高級住宅街に住む主婦からホームレスに転落した女性など、よくもまあこれだけと思うくらい不幸な人物のオンパレードです。これらの登場人物一人一人に感じるちょっとした違和感が、ページをめくるにつれてどんどん大きくなり、最終的に結びつく展開には圧倒されました。
また、本作では「インターネット上で意見を言うこと」も一つのテーマになっています。私がこうして読書レビューを書いていることもそうですが、ネットで意見交換を行ったり、情報収集したりすることは楽しいもの。ですが、そのせいでもし他人、あるいは自分の運命が狂ってしまったら?ネタバレになるので詳細は控えますが、後半のとある展開には背筋が寒くなりました。人を傷つけるような発言は、たとえネット上でも行うべきではありませんね。
なお、作品には著者の真梨幸子さんおよび真梨さんの著作である「孤虫症」が登場します。基本的に自虐ネタ満載でクソミソにけなされるだけですので(笑)未読でも構いませんが、読んでおくとより面白さが増すでしょう。興味がある方は、ぜひご一読ください。
人の不幸は蜜の味度★★★★☆
失敗から学びなさい度★★★★☆
こんな人におすすめ
・人の成功譚じゃ満足できない人
・嫌な人間のオンパレードを堪能したい人
きついイヤミスですが面白そうです。
他の作品とリンクしているのですね。
リンクしている「孤虫症」から読んでみようと思います。
失敗から学ぶことの教訓が楽しみです。
何しろ前提が「失敗」なわけですから、イヤミス度も高かったです。
「孤虫症」は初期の作品なので荒削りな部分も多いですが、これはこれで面白いですよ。
お薦めです!