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「おそろし~三島屋変調百物語」 宮部みゆき

あけましておめでとうございます。2023年が始まりました。2022年を振り返ってみると、収束の気配が見えないコロナ、ロシアのウクライナ侵攻、安倍元首相の銃殺事件と、気持ちが塞ぐニュースが多かったです。今年こそは明るい兆しが見えますように。それはきっと、全人類共通の願いでしょう。私にできることは少ないかもしれませんが、自分と家族の健やかな生活を守るよう心掛けつつ、読書も楽しんでいきたいです。

さて、年末年始という時期は、一年で一番、日本の伝統文化を感じる時期だと思います。着物姿の人が増え、お蕎麦やお節といった和食が多く供され、寺社仏閣での行事の多さも年間最多ではないでしょうか。こういう時期ですので、本もまた日本の文化を感じられる時代小説を取り上げようと思います。宮部みゆきさん『おそろし~三島屋変調百物語』です。

 

こんな人におすすめ

切なく温かい怪談小説が読みたい人

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「嘘つきジェンガ」 辻村深月

<詐欺>とは、人を騙し、金品を奪ったり損害を与えたりする犯罪のことです。強盗やひったくりなどとの違いは、被害者と加害者がある種のコミュニケーションを取っていることが多いという点でしょう。結婚詐欺などをはじめ、被害者が加害者に愛情や信頼を抱くケースもあり、立件が難しいこともしばしばのようです。

詐欺をテーマにした小説といえば、以前、当ブログで乃南アサさんの『結婚詐欺師』を取り上げました。あとは、ちょっとコミカルなものなら道尾秀介さんの『カラスの親指』、ホラーなら貴志祐介さんの『黒い家』、どんでん返しミステリーなら歌野晶午さんの『葉桜の季節に君を想うということ』etcetc。どれも面白い作品ばかりです。それからこれも、詐欺という犯罪の性質を活かした佳作でした。辻村深月さん『嘘つきジェンガ』です。

 

こんな人におすすめ

詐欺をテーマにした心理小説が読みたい人

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「イヤミス短編集」 真梨幸子

今まで知らなかった作家さんの存在を認知し、その面白さを知る。本好きにとっては無上の喜びの一つです。この<はいくる>のような読書ブログやレビューサイトの存在意義は、そうした喜びのために在るといっても過言ではありません。

その一方、すでによく知っていた作家さんに改めて<ハマり直す>のもそれはそれで楽しいです。本当に面白い作品の良さは、後日読み直しても薄れるものではないですし、年齢を重ねたことでより理解が深まるということもあると思います。最近、私は真梨幸子さんにハマり直し、著作の再読を続けています。先日読んだこれは、展開をほぼ忘れていたこともあり、初読みの時と同じように楽しめました。『イヤミス短編集』です。

 

こんな人におすすめ

不幸が詰まったイヤミス短編集が読みたい人

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「彼女の背中を押したのは」 宮西真冬

本好きなら誰しも一度は憧れるであろう職場、それは<図書館>と<書店>だと思います。この二つの内、図書館は自治体運営であることが多く、採用枠がとても少ないですが、書店は多いとは言えないまでもそれなりに求人があります。周囲を本で囲まれ、手を伸ばせばすぐそこに大量の本がある生活。本好きにとっては夢のような場所でしょう。

ですが、どの職業もそうであるように、書店という仕事は楽しいことだけではありません。実際、求人情報の口コミ掲示板などを見れば、書店稼業の過酷さの一端を垣間見ることができます。とはいえ、玉石混交のネット情報じゃイマイチ大変さが伝わってこないな・・・という方は、これを読んでみてはどうでしょうか。宮西真冬さん『彼女の背中を押したのは』です。

 

こんな人におすすめ

家庭や仕事に悩む女性を描いたヒューマンミステリーが読みたい人

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「終活中毒」 秋吉理香子

コロナ禍が起こったせいもあるでしょうか。周囲で<終活>という言葉を聞く機会が増えました。ただ言葉を聞くだけでなく、実際に終活を始めたという経験談を耳にすることもしばしばです。意外に、まだ寿命のことなど心配する必要がなさそうな世代の人が終活を始めるケースも多いようですね。もっとも、この世のありとあらゆる事象の内、<死>は思い通りにならないものの筆頭格。体力も気力も十分ある内に準備しておく方が合理的なのかもしれません。

人生を終わらせるための準備ということもあり、終活をテーマにした小説は、どうしても重くしんみりした雰囲気になりがちです。もちろん、それはそれでとても面白いのですが、「終活には興味あるけど、今日はさらりと軽く読書したいな」という気分の時もあるでしょう。そんな時は、これ。秋吉理香子さん『終活中毒』です。

 

こんな人におすすめ

終活をテーマにした短編集が読みたい人

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「帝冠の恋」 須賀しのぶ

かつて、中国の思想家・荘子は言いました。「ものは見方によってすべてが変わる」。まったくもってその通りで、同じ物事でも、どういう立場から見るか、どういう人間の口で語られるかで、解釈が変わってきます。時には白と黒が反転することさえ珍しくありません。

創作の世界において、これは特に歴史関係の分野でよく表れると思います。大河ドラマ『麒麟がくる』では、<織田信長を討った逆賊>と評価されがちな明智光秀を主役に据え、その強さや聡明さを丁寧に描きました。また、鈴木由紀子さんの『義にあらず---吉良上野介の妻』では、赤穂浪士人気の影で悪役扱いされる吉良上野介の妻目線で、忠臣蔵事件が語られます。もちろん、当事者達がとっくに亡くなっている以上、何が真実かは分からないわけですが、それでもなお「この人達は本当にこう思っていたんだろうな」と思わせるだけの説得力がありました。今回取り上げるのも、しばしば敵役として描写されがちな女性を主人公にした小説です。須賀しのぶさん『帝冠の恋』です。

 

こんな人におすすめ

19世紀ヨーロッパを舞台にした歴史ロマン小説に興味がある人

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「掬えば手には」 瀬尾まいこ

<テレパシー>という超能力があります。これは、心の中の思いが、言葉や身振り手振りを使わずに他人に伝わる能力のこと。SF作品などで敵相手に大立ち回りするような派手さはないものの、実生活では結構便利そうな能力に思えます。

テレパシーが登場する小説としては、筒井康隆さんの『七瀬三部作』と宮部みゆきさんの『龍は眠る』がぱっと思い浮かびました。どちらにも、己の能力に苦しみ、葛藤する超能力者が登場します。では、この作品ではどうでしょうか。瀬尾まいこさん『掬えば手には』です。

 

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テレパシーが絡んだヒューマンストーリーが読みたい人

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「さんず」 降田天

自殺はいけないこと。これは老若男女問わず誰もが断言することだと思います。その理由は色々あるでしょうが、多いのは「親からもらった命を粗末にしちゃだめ」「生きたくても生きられない人がいるのだから」辺りでしょうか。キリスト教圏なら「神が禁じているから」なんて理由もありそうです。

とはいえ、「いけないんだ。じゃあ、やめましょう」とはいかないのが人間というもの。特に東洋の場合、<殉死><切腹>などの慣習があり、のっぴきならない事態に直面した人間が自殺することを美徳とする時代さえありました。そういう意味で、欧米と比べると、自殺という行為との距離が近いような気がします。今日は、自殺をテーマにしたミステリーを取り上げたいと思います。降田天さん『さんず』です。

 

こんな人におすすめ

自殺を巡るミステリーが読みたい人

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「スイート・マイホーム」 神津凛子

私は本が好きですが、映画も負けず劣らず好きです。昔、家の近所に映画館やレンタルビデオショップがあったこともあり、一時は週に何度も映画鑑賞に出かけたり、興味のある映画のDVDを片っ端から借りたりしていました。おかげでバイト代が全然貯まりませんでしたが、今振り返っても、あれはあれで楽しかったです。

今まで見た映画の中、印象的だったものを思い浮かべてみると、意外に<芸能人が監督をしている>というケースが多いことに気付きました。もはや歴史に残るレベルの大物であるチャールズ・チャップリンやクリント・イーストウッドはもちろんのこと、日本にも北野武さんや伊丹十三さんなど、名作を撮影された監督兼芸能人が存在します。品川ヒロシさんの『ドロップ』『漫才ギャング』も面白かったなぁ。最近、好きな作品を好きな俳優が監督を務めて映画化すると知り、楽しみにしています。神津凛子さん『スイート・マイホーム』です。

 

こんな人におすすめ

家にまつわるモダンホラーが読みたい人

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「紙の梟 ハーシュソサエティ」 貫井徳郎

「悪法もまた法なり」。かつて、学者ソクラテスが言ったとされている言葉です(本当に言ったかどうかは諸説あり)。実際にはかなり哲学的な意味があるようですが、今はストレートに「たとえ間違った法律でも、法治国家である以上は従わないといけませんよ」という意味で使われることが多いようですね。確かに、各自が勝手に「あの法律は変だから守らない!」「こんな間違った法律に従う必要はない!」などと言い出したら、社会は成り立ちません。法律が間違っているなら、定められた法改正の手続きを取れというのは、決しておかしな話ではないでしょう。

しかし、法律を作るのが人間である以上、完璧にはなり得ないというのもまた事実です。法律が誰かを救う一方、また別の誰かを苦しめていたとしたら・・・・・少年法をはじめ、多くの法律が長年論争の種になるのは、この辺りが原因ではないでしょうか。今回取り上げるのは、貫井徳郎さん『紙の梟 ハーシュソサエティ』。法と社会の在り方について考えさせられました。

 

こんな人におすすめ

死刑をテーマにしたサスペンス短編集が読みたい人

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