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「老い蜂」 櫛木理宇

一昔前、<お年寄り>という言葉が持つイメージは、貫禄や老練、泰然自若といったものでした。最近はどうでしょうか。老害、暴走老人、シルバーモンスター・・・残念ながら、そんなマイナスイメージのある単語が飛び交っているのが現状です。もちろん、老若男女問わず、非常識で悪質な人間はいつの時代も大勢いました。ただ、感情をコントロールする前頭葉の機能は、ただでさえ加齢により低下するもの。加えて、核家族化や非婚化が進む現代において、かつてのように家族と暮らすことができず、コミュニケーション能力が一気に衰えて暴走するお年寄りが増えたことは事実だと思います。

これまでこのブログでは、中山七里さんの『要介護探偵の事件簿』や宮部みゆきさんの『淋しい狩人』といった、老いてなお気力も知力も若者に負けず、経験を活かして活躍するお年寄りの小説を取り上げてきました。こんなお年寄りばかりなら何の問題もないのですが、悲しいかな、善人もいれば悪人もいるのが世の常です。今回は、読者の背筋を凍らせるような老人が出てくる作品をご紹介します。櫛木理宇さん『老い蜂』です。

 

こんな人におすすめ

老人ストーカーが絡んだサイコスリラーに興味がある人

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「たまごの旅人」 近藤史恵

コロナ禍でできなくなったこと、制限されるようになったことはたくさんあります。例えば、大人数が集まっての会食。例えば、屋内でのイベント。海外旅行もその一つです。海外の場合、衛生状態や医療体制が日本とは違うこともあり、いつになったら自由に行き来できるようになるのか、皆目見当もつきません。

不自由の多い昨今ですが、本の中でなら、昔と同じく気ままに海外を楽しむことができます。異国情緒を堪能できる作品と言えば、以前、当ブログで貫井徳郎さんの『ミハスの落日』を取り上げました。貫井作品の中でも三本の指に入るくらい好きな小説ですが、全体的に苦い後味の話が多く、中には苦手と感じる読者もいるかもしれませんね。でも、こちらは後味爽やかなので万人向けだと思いますよ。近藤史恵さん『たまごの旅人』です。

 

こんな人におすすめ

海外旅行を通して描かれる成長物語が読みたい人

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「黄泉路の犬---南方署強行犯係」 近藤史恵

私は子どもの頃からずっとペット禁止のマンション住まいだったこともあり、動物を飼った経験がありません。ですが、身近には動物好きの人が多く、ペットにまつわるあれこれを聞く機会もしょっちゅうありました。自分を無心に慕ってくれる生き物と暮らすのは、とても幸せなことでしょう。

とはいえ、悲しいかな、ペットに関する悲しい話もたくさんあります。例えば保健所での殺処分問題や、多頭崩壊問題。無機物であるゴミの処分問題だって深刻なのですから、相手が生き物となると、その酷さはとても言葉で語り尽くせるものではありません。こうした問題を扱った書籍となると、どうしてもノンフィクション寄りになりがちですが、今回は小説をご紹介したいと思います。近藤史恵さん『黄泉路の犬-――南方署強行犯係』です。

 

こんな人におすすめ

日本のペット問題を扱った小説に興味がある人

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「殺人依存症」 櫛木理宇

本の内容と、その本を読むタイミングというのは、密接な関係があります。例えば、大きな物事に臨む時はスカッとする勧善懲悪ストーリーがいいとか、落ち込んでいる時は悪人が出てこないハートフルコメディがぴったりとか。たかが本、されど本。読書には人の気分を左右する不思議な力があるものです。

実は私、この読書タイミングの見計らい方がものすごく下手。ずいぶん昔の話ですが、所用で飛行機に乗らなくてはならないというのに、直前になってアメリカ同時多発テロに関する本を読んでしまい、貧血起こしそうになりながら搭乗したのは懐かしい思い出です。最近も、読むタイミングを誤ってしまったせいでキツい思いをしました。櫛木理宇さん『殺人依存症』です。

 

こんな人におすすめ

人間の怖さをとことん描いたサスペンスが読みたい人

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「死んでもいい」 櫛木理宇

これは小説に限った話ではありませんが、この世には<万人受けするジャンル>と<そうでないジャンル>の二種類があります。前者はコメディやヒューマンストーリー、後者はイヤミスやホラー。好みはあるにせよ、ユーモラスなほのぼの小説を読んで吐き気を催す人は少ないでしょうが、イヤミスやホラーだとそれがあり得ます。

しかし、だからといって取っつきにくいジャンルを避けまくるのはもったいないと思います。後味悪かろうがグロテスクだろうが、面白い作品は面白いもの。読んでみたら意外と好みだった、ということもあり得ない話じゃありません。そこでお勧めは短編小説。陰鬱な小説を何百ページも読むのはきつくても、ボリュームが少ない短編ならけっこうさっくり読めてしまうこともありますよ。イヤミスは怖そう、でも興味はある・・・という方は、この作品で様子見してみてはどうでしょうか。櫛木理宇さん『死んでもいい』です。

 

こんな人におすすめ

人間の暗黒面を描いたイヤミス短編集が読みたい人

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「螺旋階段のアリス」 加納朋子

世界各国には様々な童話があります。勧善懲悪のヒーロー話からおどろおどろしい怪異譚、くすりと笑えるほのぼのストーリーまで、その作風は千差万別。物語として面白いだけでなく、現代にも通じる教訓や風刺が込められているものも多く、大人になってから読んでも楽しめます。

そんな童話の中でも、『不思議の国のアリス』のシュールさは群を抜いていると思います。主人公・アリスが見た夢の話なだけあって、登場人物の背丈が伸びたり縮んだりするわ、動植物がいきなり喋るわ、道具が擬人化するわとやりたい放題。この奇妙さのせいか、『不思議の国のアリス』がゲームや小説のモチーフとして使われる場合、どことなく不気味で謎めいた作品になることが多いようですね。例を挙げると、小林泰三さんの『アリス殺し』や、当ブログでも取り上げた柴田よしきさん『紫のアリス』といったところでしょうか。もちろんそれはそれで面白いのですが、不気味なのは苦手という読者のため、今回はほっこりと希望のある作品をご紹介したいと思います。加納朋子さん『螺旋階段のアリス』です。

 

こんな人におすすめ

日常の謎を扱ったミステリー短編集が読みたい人

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「二百十番館にようこそ」 加納朋子

<ニート>の正式名称をご存知でしょうか。<Not in Education,Employment or Training>の略称で、勉強することも就労することも職業訓練を受けることもない者を指します。年齢は、一般的には十五歳から三十四歳までと定義されているとのこと。「五体満足な人間が、教育や勤労の義務も果たさずだらだらしているなんて」と、世間の厳しい目に晒されることが多い立場です。

ニートが小説の主要登場人物になる場合、いかにして彼(彼女)はニート生活に終止符を打つかがポイントになることが多いです。例を挙げると、里見蘭さんの『さよなら、ベイビー』や、過去にブログで取り上げた近藤史恵さんの『歌舞伎座の怪紳士』がそれに当たりますね。上記の作品の主人公達は、それぞれ思いがけない形で再出発の機会を掴み、一歩を踏み出します。では、この作品の主人公はどうでしょうか。加納朋子さん『二百十番館にようこそ』です。

 

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ニートの再出発を描いたヒューマンドラマが読みたい人

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「虜囚の犬」 櫛木理宇

相手の人となりや行動を表現するための比喩として、しばしば動物が用いられます。「ライオンのような雄姿だ」となれば<勇ましく堂々とした態度>、「まるでねずみのような奴」なら<こそこそと卑しい様子>となるでしょう。実際にその動物がそういう性質かどうかは、それこそ個体差もあるのでしょうが、動物が持つイメージというのはあると思います。

では、<犬>はどうでしょうか。犬は忠誠心や家族愛が強く、命を賭して主人を守ることさえある頼もしい存在。反面、強者に服従する性質から、「あいつ、犬みたいに尻尾振りやがって」等、力に屈する態度の喩えとして用いられることもあります。この作品を読んでいる間、私の頭には鎖に繋がれ屈服させられる犬の姿がずっと浮かんでいました。櫛木理宇さん『虜囚の犬』です。

 

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洗脳をテーマにしたイヤミスが読みたい人

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「ナルキッソスの鏡」 小池真理子

この世には数えきれないほどの主義・傾向がありますが、その中でも<ナルシズム>の認知度の高さは群を抜いていると思います。これはギリシャ神話に登場する美少年・ナルキッソスが、泉に映る自分の姿に恋したエピソードに由来し、自分自身を強く愛する精神状態と指すとのこと。あまりによく知られた用語なので、「あの人ってナルシストだよね」「今の言い方、ナスルシストっぽかったかな」等々、日常会話に登場する機会も多いです。

そして、<自分を強く愛する>という特徴が描写しやすいからか、ナルシストが登場する作品もたくさんあります。『ちびまる子ちゃん』の<花輪クン>のように、コミカルな自分大好き人間として描かれることが多い気がしますが、語源であるナルキッソスが自分を愛するあまり死を遂げたことを考えると、本来のナルシズムとはもっと真摯で頑ななもののように思います。今回ご紹介するのは、小池真理子さん『ナルキッソスの鏡』。あまりに深く自分を愛した者の運命が印象的でした。

 

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人の狂気をテーマにしたサイコサスペンスが読みたい人

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「うちの父が運転をやめません」 垣谷美雨

高齢者ドライバーによる事故が取り沙汰されるようになったのはいつからでしょうか。正確なところは分かりませんが、ここ数年で、メディアが高齢者による事故を大きく取り上げる率は確実に上がっている気がします。年齢を重ねると、視力や筋力が落ちたり、反応速度が遅くなったりして、事故を引き起こす危険性が高まるとのこと。普通に扱えば便利な車も、ひとたび間違いを犯せば、走る凶器になりかねません。

しかし、だからといって「高齢者は運転させるな」と主張するのはあまりに一方的というものです。加齢により体力が落ちると、若者のように「これくらいの荷物、歩いて持ち運べるさ」「電車乗り継いで三十分の距離なんて近い近い」というわけにはいきません。居住地や家族構成、生活パターンなどによっては、運転しないと生活することが不可能というケースだってあるでしょう。そもそも、昨今やたら高齢者ドライバーの事故が多い気がするのは、車離れによる若者の事故率低下のせいであって、発生件数自体は数十年前から変わっていないんだとか。そうなると、単純に高齢者ドライバーだけを非難するわけにはいきませんね。今回は、そんな高齢者ドライバー問題について考えさせられる作品をご紹介します。垣谷美雨さん『うちの父が運転をやめません』です。

 

こんな人におすすめ

高齢者ドライバー問題を絡めたヒューマン小説が読みたい人

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