私は子どもの頃から不器用な上に運動が苦手。当然、図工も体育も惨憺たる有様でした。大人になってしまえば「別にそれくらい苦手でも・・・」と思いますが、当時は結構真剣にコンプレックスを抱いていたものです。子どもの頃って、器用で運動神経の良い子が人気者になりがちせいもあるでしょう。
そんな私には、嫌でたまらない時間がいくつかありました。例えば創作ダンスの発表会や、連帯責任を問われる大縄跳び。それから、先生による「はい、〇人組を作ってー」の一言。特に最後の場合、自分の努力ではどうにもならない、同級生の顔ぶれ等に依るところも大きいため、余計に憂鬱だった気がします。でも、こんな「〇人組を作って」が起こったら、憂鬱じゃ済まされませんよね。今回取り上げるのは木爾チレンさんの『二人一組になってください』です。
こんな人におすすめ
女子高生達のデスゲーム小説に興味がある人
さあ、特別授業を始めましょう---――卒業式当日、女子校のとあるクラスで、突如として生き残りを賭けたデスゲームが始まった。主催者からの要求は、クラス内で二人一組を作り続けること。あぶれた者、課されたルールを破った者は次々死んでいき、少女達は否応なしにゲームを続けることとなる。交錯する打算と裏切り、友情と秘密。すべては、クラスで行われていたいじめの償いをさせるため・・・・・果たして生き残るのは誰なのか。少女達の決死の攻防戦を描く、ノンストップ・サスペンス
思えば、大規模なデスゲーム小説を読むのはずいぶん久しぶりです。この手のジャンルの場合、超有名な高見広春さんの『バトル・ロワイアル』を筆頭に、<生き残れるのはたった一人>というのがセオリー。一方、本作の場合、タイトルが示す通り<二人一組を作り続ける=最後に残った二人は生還できる>という設定です。私はこういう設定はあまり読んだことがなかったので、なかなか新鮮でした。
舞台となるのは、京都にある私立の女子校。卒業式当日、コサージュを付けて教室に集まった三年一組の生徒達は、担任の女性教師からこう告げられます。「このクラスにはいじめがありました。加害者は死刑になるべきです。そのため、これから皆さんには特別授業を受けてもらいます」。その<特別授業>とは、最後の一組が決まるまで、クラス内で二人一組を作り続けること。当然、ある者は冷笑し、ある者は反発するわけですが、コサージュに仕掛けられた罠により、二人一組を作れなかった生徒やルール違反を犯した生徒は次々と死亡。生き残るため、ゲームを続けざるを得なくなります。右往左往する同級生達を、一歩引いた位置から見つめる、<亡霊ちゃん>こと美心。クラスのスクールカースト最下層だった美心ですが、このデスゲーム、彼女にとっては相当に有利なルールが課されていて・・・・・ゲームを制し、生き残ることができるのは一体誰なのでしょうか。
何よりまず「ほほう」と思ったのは、前述した<二人一組を作り続ける>というゲーム内容です。「なーんだ、それなら友達の多いカースト上位者が勝つに決まってるじゃん」と思いそうですが、それは早とちり。課されたいくつかのルールの中に<一度組んだ相手と再び組むのはNG>という項目があるのです。どれだけ人気者だろうと、ゲームが進み、生徒が死んでいくにつれ、組める相手は減る一方。つまり、このゲームを制するためには<現在、誰が生き残っているか><自分は今まで誰と組んだか><どういう順序で組み続ければ長く生き残れるか>を正確に把握・計算する必要があるわけです。中盤、このことをまったく考えていなかった生徒(カースト位置は中の上)が、組める相手がいなくなり、パニック状態のまま死亡する下りに感情移入してしまいました。こういうデスゲームが現実にあるとしたら、私はこのパターンで死にそうな気がする・・・・・
そして、この手のジャンルで忘れちゃいけないのが、デスゲームを通じて浮き彫りになる参加者達の人間模様です。中学時代のいじめを機にカースト最下層になってしまった美心や、そんな美心に自然に声をかける花恋、勝気なカースト上位者のリサ辺りが目立つけれど、個人的に興味を引いたのは中性的で学校の王子様的存在である螺良と、厨二病全開の言動によりカースト三軍のポジションに甘んじている刹那。どちらもなかなか印象的なキャラ設定ながら、本人の内面を描いた章がないため、影が薄く感じたのが残念でした。この二人に限らず、全部で二十七人のクラス中、内面描写のある生徒って二十人足らずなんですよ。できればキャラクター全員の心理をしっかり読みたかったのですが、なかなか難しいのかもしれませんね。それを思うと、クラス全員の背景をしっかり描ききった『バトル・ロワイアル』って凄かったんだなぁ。
引っかかる点を挙げるとすれば、失格となった生徒の死に方でしょうか。各自に付けられたコサージュが爆発したり炎上したり毒が流れ出したりするという仕掛けなのですが、こんなハイテク機器を一介の教師がどうやって作ったかが完全に謎。というか、このゲーム自体、一個人がセッティングするのは無理な気がしますが・・・その辺は突っ込むだけ野暮なのでしょう。スピード感と読みやすさは保証するので、だれることなく一気読みできると思いますよ。
冒頭のカースト表がものすごく役に立つ度★★★★☆
エピローグが不穏すぎる・・・度★★★★★
生死をかけた罰ゲーム?!
昔読んだ金沢伸明さんの「王様ゲーム」に似ていると思いました。
読んでいてデスゲームには違いないですが、何故かデスゲームとは微妙にニュアンスが別の意味のように感じました。
確かに女子校生たちの心理背景は個別に描かれていてそこは良かったですが、あまりにもあちこち飛びすぎて主幹が無いことは無いですが、他の生徒の心理とそれぞれの事情に薄められたと思います。
これもまた何故このような設定になったのか?という背景と根拠がない。
「王様ゲーム」「お梅は呪いたい」のような短くてもその始まりのようなストーリーが欲しいと思います。
「武闘刑事」と「嘘と隣人」読み終えました。
お梅は、次こそ呪いたいも借りてきました。
ゲームのシステムが、個人で行うにはあまりにハイレベルすぎて、「???」となることもしばしばでした。
仲良しに見えて内心で嫌っているとか、ちょっとしたやり取りを大事な思い出として記憶しているとか、学生時代の人間関係あるあるエピソードは良かったと思います。
「武闘刑事」、こちらも読了しました。
「嘘と隣人」は直木賞候補になりましたね。
結果を見るのが楽しみです。