ミステリー

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「静おばあちゃんにおまかせ」 中山七里

最近は元気なお年寄りが多いです。ただ体力的に元気なだけでなく、積み重ねてきた経験と知恵をもとに若者顔負けの活躍をするお年寄りには憧れちゃいますね。当ブログでもお年寄りが奮闘する本をいくつか紹介しましたが、それらはすべておじいちゃんが主役でした。

もちろん、おばあちゃんが活躍する小説もたくさんあります。世界的に有名なアガサ・クリスティの『ミス・マープル』シリーズを筆頭に、梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』、天藤真さんの『大誘拐』、松尾由美さんの『ハートブレイク・レストラン』エトセトラエトセトラ。どの作品にも個性豊かで魅力的なおばあちゃんが登場しますが、これに出てくるおばあちゃんも負けていません。中山七里さん『静おばあちゃんにおまかせ』です。

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「二年半待て」 新津きよみ

ここ数年、「○活」という言葉を聞く機会が急激に増えました。就職活動を略した「就活」はずいぶん昔から使われていましたし、二〇一二年には、人生の最期を自分の望むように準備する「終活」がユーキャン新語・流行語大賞のトップテンに選ばれています。人生のターニングポイントに関するものばかりではなく、朝に勉強や運動を行う「朝活」、体を温めて健康を増進する「温活」などもあります。

留まるところを知らず、あらゆる分野に広がっていく「〇活」。当然、小説のテーマになることも多いですね。そんな様々な「〇活」を取り上げた作品といえばこれ。新津きよみさん『二年半待て』です。

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「レイクサイド」 東野圭吾

旅行、合宿、キャンプ・・・どことなく冒険の香りが漂う言葉です。日常を離れ、普段暮らしているのとは別の場所で寝起きする。子どもはもちろん、わくわくする大人も大勢いるでしょう。

日常から離れるというシチュエーションのせいか、旅行や合宿を扱った創作物はたくさんあります。世界的に有名な映画『13日の金曜日』はキャンプに来た若者たちと殺人鬼の攻防を描いていますし、高見広春さんの『バトル・ロワイアル』、群ようこさんの『かもめ食堂』、柴田よしきさんの『夢より短い旅の果て』などでは、登場人物たちは家を離れて旅に出ます。恋愛、ヒューマンドラマ、ホラーと、どんなジャンルにも繋げることのできる「旅」ですが、ミステリーならこれはどうでしょうか。東野圭吾さん『レイクサイド』です。

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「消人屋敷の殺人」 深木章子

ミステリーの世界には、「面白いけど非現実的」なネタが多々あります。たとえばダイイングメッセージ。たとえば見立て殺人。「閉鎖空間での人間消失」もその一つです。

閉ざされた状況下で忽然と人間が消える・・・実際にはまず起こりえなさそうな設定ですが、フィクションの世界なら話は別。とはいえ、非現実的なネタである以上、理由やトリックにそれなりの説得力を持たせなければ、読者は白けるばかりです。最近読んだ作品は、なかなか練られた佳作でしたよ。深木章子さん『消人屋敷の殺人』です。

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「かがみの孤城」 辻村深月

何でも願い事を一つ叶えてあげる・・・物語によくあるシチュエーションです。もしそんな局面に直面した時、人は何を願うのでしょうか。私は想像力貧困ですので、いざそういう状況になったら、「家内安全、無病息災」くらいしか思いつかないかもしれません(笑)

しかし、世の中には、切実に叶えたい願いを持つ人もいます。どうにもならない現実に苦しみ、人ならざるものの力を借りてでもそれを打開したいと願う子どももいます。今日取り上げる小説には、そんな子どもたちが登場します。辻村深月さん『かがみの孤城』です。

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「ジゼル」 秋吉理香子

幼稚園の頃、バレエを習っていたことがあります。きっかけは曖昧ですが、たぶん、綺麗な衣装に憧れたとか何とかいう理由でしょう。残念なことに長続きしませんでしたが、間近で見たチュチュやジョーゼットが素敵だったことは今でも覚えています。

その優雅な美しさで人々を魅了するバレエ。しかし、人間が行うものである以上、優雅なばかりではいられません。見えない所で必死に足を動かす白鳥のように、バレエ界には水面下での熾烈な戦いや争い、感情のぶつかり合いが満ちています。最近読んだ小説により、そのことがよく分かりました。秋吉理香子さん『ジゼル』です。

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「素敵な日本人」 東野圭吾

新年あけましておめでとうございます!このブログも開設して一年半を過ぎました。ここまで続けてこられたのは、お付き合いくださる皆さんのおかげです。拙い文章と内容ばかりですが、2018年もどうぞよろしくお願いします。

新しい年を迎えてすぐは何かと慌ただしく、ゆっくり読書する時間を取ることが難しいかもしれません。そういう時は、重厚な大長編より、さっくり読める短編の方が手を出しやすいのではないでしょうか。それならこの短編集がお薦めですよ。東野圭吾さん『素敵な日本人』です。

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「婚活中毒」 秋吉理香子

人はなぜ結婚したいと思うのでしょうか。子どもが欲しいから?社会的な信用を得たいから?一人でいるのは孤独だから?理由は様々でしょうが、突き詰めればすべて「幸せになりたいから」に繋がると思います。

しかし、幸せと不幸せは表裏一体。幸福を得るために取った行動のせいで、思わぬ泥沼にはまってしまうことだってありえます。今回取り上げるのは、婚活の予想外の落とし穴を描いたミステリー、秋吉理香子さん『婚活中毒』です。

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「殺人鬼フジコの衝動」 真梨幸子

殺人鬼。これほど禍々しい響きを与える言葉ってそうそうないんじゃないでしょうか。「殺人」だけでも十分恐ろしいのに、その後に「鬼」が付くなんて。何より恐ろしいのは、そんな殺人鬼が現実にもしっかり存在することでしょう。

一方、フィクションの世界に登場する殺人鬼は、決して恐ろしいだけの存在ではありません。貴志祐介さん『悪の教典』の蓮見聖司然り、トマス・ハリス『羊たちの沈黙』のレクター博士然り、殺人鬼たちはその残酷さを以て読者を惹きつけます。そんな小説界の殺人鬼名鑑には、彼女の名前も載せるべきでしょう。真梨幸子さん『殺人鬼フジコの衝動』に登場するフジコです。

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「満願」 米澤穂信

短編小説と長編小説、どちらが好きですか?私はというと、どちらも好き(笑)それぞれに面白さがあり、どちらが優れていると決められるものではありません。

ただ、個人的な意見として、ミステリーやホラーのジャンルでびしっと決まる短編小説を書くのは難しい気がします。トリックや人間関係が入り組んでいる場合が多い分、少ないページでまとめるのが大変に思えるのです。そんな困難を乗り越え、面白い短編小説を集めた作品はたくさんありますが、今日ご紹介するのはこれ。「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」でいずれも一位を獲得した、米澤穂信さん『満願』です。

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