ミステリーやホラーの分野に登場しがちなアイテムといえば、鏡や鍵。それから、<絵>も結構な頻度でキーアイテムとなっている気がします。一枚の絵で一つの世界が表現できること、小説と違って視覚に訴えかけられることが多用される理由でしょうか。
絵が重要な使われ方をする小説と言えば、ダン・ブラウンによる『ダ・ヴィンチ・コード』が世界的に有名です。原作自体も十分耳目を集める有名作品ですが、トム・ハンクス主演で映画されたことでさらに知名度を上げました。それから国内作品としては、原田マハさんの『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』などを挙げる方も多いでしょう。個人的には、今日取り上げる作品も、上記の名作と肩を並べられるくらい面白いミステリーだと思います。雨穴さんの『変な絵』です。
こんな人におすすめ
不気味な絵が絡んだミステリーに興味がある人
悲運の死を遂げた妊婦が遺した六枚の絵、失踪した男児が描いた絵の中の不気味な影、惨殺された教師が一枚の絵に込めた思い、母殺しの少女が描いた絵から浮かび上がる真意・・・九枚の絵は、一体何を語るのか。すべての謎を解いた時に明かされる、禍々しい真実とは。人気オカルトライター・雨穴が贈る、衝撃の絵画ミステリー
前作『変な家』は会話形式で物語が進み、全体的にホラーの色合いが濃い作品でした。対して本作は、よりミステリー小説としての側面が強くなっていたと思います。情景やトリック、登場人物達の心理描写も一段と巧みになっており、「さすが雨穴さん!」と唸らされました。
「第一章 風に立つ女の絵」・・・オカルトサークルに所属する大学生・佐々木は、ある時、後輩の勧めで不思議なブログを読むことになる。それは、一人の男が、妻との何気ない日常を綴ったブログだった。幸せな日々、妻の妊娠と出産、思いがけない妻の死、唐突なブログの終了。後日、佐々木に対し、後輩はブログの夫婦に対する恐ろしい考察を語り始め・・・・・
サスペンスホラーの雰囲気は、この章が一番強いと思います。どうということもない愛妻日記だったはずのブログと、ブログ主の妻が描いた六枚の絵。そこから見えてくる禍々しい可能性にゾッとすること請け合いです。なお、この話のみ、YouTubeで雨穴さんにより動画化されています。小説版とは少し雰囲気が違うので、興味のある方はぜひ視聴してみてください。
「第二章 部屋を覆う、もやの影」・・・五歳の優太を女手一つで育てるパート主婦・直美。ある日、直美は保育園で優太が描いた絵を見せてもらう。それは、自宅であるマンションを描いた絵だが、なぜか直美達が住んでいる部屋の部分が灰色で塗り潰されていた。優太は何を思ってこんな描き方をしたのだろう。不審に思っていた矢先、優太が失踪してしまい・・・・・
第一章がサスペンスホラーなら、この章はどんでん返しのある叙述ミステリー。終盤、ある人物の台詞で世界がひっくり返る仕掛けはお見事の一言です。真実が分かってみると、愛情たっぷりに見えた言動の一つ一つがなんだか不気味・・・子ども達が健やかに暮らしていることが救いです。
「第三章 美術教師 最期の絵」・・・岩田は念願だった新聞社に入社したにも関わらず、記者ではなく総務局員になってしまい、意気消沈。実は岩田には、記者として調べたい未解決事件があった。高校時代の恩師・三浦が山中で惨殺死体となって発見された殺人事件だ。三浦は殺される前、一枚の絵を描き遺しているのだが・・・
この章から、一気にトリック重視のミステリー色が濃くなります。雨穴さんの作品は、動画時代から、悪意や狂気を中心に据えた作風が多かったので、こういう話が出てきたことは嬉しい驚きです。さらに、第一章、第二章に出てきた事件も、ここで急展開を迎えます。なるほど、あの彼女が、後々あの女性になるわけね。
「最終章 文鳥を守る樹の絵」・・・実母を殺した少女が描いた一枚の絵。少女は長ずるにつれ美しい女性となり、結婚し、一児を得る。彼女は幸せになった、はずだった。夫の暴力的な部分に気付いた彼女が選んだ引き返せない道。愛する家族を守るために踏み出した禁断の一歩とは・・・・・
この章で、一章から三章までの事件すべてが繋がり、真相が判明します。犯人の境遇は同情すべき点がないわけでもないけど、唯一、あの殺人だけは弁解の余地ないよな・・・理性を失った人間の恐ろしさに慄然とさせられますが、子どもには希望があって良かったです。それにしても、若き日の栗原さん、相変わらず名探偵!あまりに凄すぎて、レビューサイトなどで真犯人説が出てしまうのはご愛敬ですね。
ところで、読了してから気づきましたが、前作と違って本作には雨穴さん本人は作中に登場しません。雨穴ワールドの名探偵・栗原さんの若い頃の物語という設定だからかな。小説としての面白さは抜群だけど、雨穴さんファンとしてはちょっと寂しい・・・『変な〇〇』シリーズの三作目が出るなら、今後は雨穴さんにも元気な姿を見せてほしいです。
各章の繋がり方がお見事です度★★★★☆
第一章のブログは実在するので要チェック!度★★★★★
昨年から予約していますがまだ廻って来ないです。
嘘つきジェンガはやっと届きました。
新作がすぐ届く図書館ですらこれですのでよほど人気があると思いました。
絵に呪いがあるのか、絵を媒体にして何か企んでいるのか、背景に何があるのか?大変興味深いです。
話の繋がりが楽しみです。
「変な家」より小説としての完成度が増し、とても面白かったです。
「変な家」の映画化も進んでいるし、テレビドラマ「何かおかしい」も高評価のようだし、雨穴さんの活躍の場がますます広がりそうですね。
「嘘つきジェンガ」の感想、楽しみにしています。
やっと届きました。
長く待っただけあって期待以上でした。
最初は衝撃的な内容で気分が悪くなりましたが、見事な繋がりと巧みな文章に感心しながら一気読みでした。
酷い内容でしたが救いのあるラストで安心しました。
変な家のように素人が見ても違和感持つような図面でなく、詳しく説明して何回も見直してやっと理解出来る内容を理解して、自分の注意力がいかに足りないかを思い知らされました。
これは待つ甲斐がありますよね。
第二章、登場人物のイメージがガラリと変わるカラクリが一番印象に残っています。
「変な~」シリーズ、これからも続いてほしいです。