ミステリー

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「クール・キャンデー」 若竹七海

「イヤミス」というジャンルが流行り始めて、もうずいぶん経ちます。文字通り、「読むと嫌な気分になるミステリー」の略で、最初にこの用語を使ったのは批評家の霜月蒼氏とのこと。代表的な作家としては、湊かなえ、真梨幸子、沼田まほかるなどが挙げられます。

かくいう私自身、イヤミスが大好きで、有名作品は一通り読んでいると思います。そこで今日は、個人的に「イヤミスの女王」と思っている作家、若竹七海さん「クール・キャンデー」を紹介します。

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「欲しい」 永井するみ

「欲しい物はありますか?」と聞かれて、皆さんは何と答えるでしょうか。お洒落な服?新しい車?素敵な恋人?私は美味しい特大スイーツと答えるかもしれません(笑)

欲しい物を求める気持ちは、人間なら誰でも持つもの。今日は、人間の尽きぬ欲望を描いた名作、永井するみさん「欲しい」を紹介します。

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「紫のアリス」 柴田よしき

皆さんはどんな童話が好きですか?「白雪姫」「赤ずきん」「ヘンゼルとグレーテル」etcetc。私も子どもの頃、図書館から何冊も童話を借りてきては、夢中になって読みました。

でも、童話って、けっこう残酷な要素が多いですよね。最近は、童話の持つグロテスクな部分をクローズアップした作品も多く、ハマる大人も多いようです。今日は、童話の不気味さをテーマにした作品として、柴田よしきさんの初期の名作、「紫のアリス」を紹介します。

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「嗤う淑女」 中山七里

「悪女」と聞くと、どんな女性を思い浮かべるでしょうか。武器を手に刃向う相手をバッタバッタとなぎ倒す女丈夫?それとも、色仕掛けで男性を手玉に取るセクシータイプ?

私のイメージする「悪女」は、決してスポットライトを浴びることなく、人から恨みを買うこともなく、水面下でひっそりと行動し利益を得るタイプです。そんな女性が登場する作品、「どんでん返しの帝王」の異名を取る、中山七里さん「嗤う淑女」を紹介します。

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「殺意の集う夜」 西澤保彦

「嵐の山荘」と聞けば、胸ときめかせるミステリファンも多いと思います。かくいう私もその一人です。閉ざされた場所、繋がらない連絡手段、次々死んでいく関係者たち・・・考えただけでワクワクしますよね。

とはいえ、この手のネタは様々な創作物で使われているため、生半可なアイデアでは読者を驚かせることはできません。ありきたりな「嵐の山荘」小説に飽きた方は、これなんてどうでしょう。<SF新本格ミステリー>という分野を確立した、西澤保彦さん「殺意の集う夜」です。

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「いつもの朝に」 今邑彩

皆さんに兄弟姉妹はいるでしょうか?いるとして、その仲は良好ですか?私は一人っ子なので、昔から兄弟姉妹のいる家庭が羨ましかったものです。

親子とも友達とも違う兄弟姉妹。では、その相手に恐ろしい出生の秘密があったとしたらどうするでしょう?今日は、血の繋がりの因縁を描いたミステリ、2013年に早すぎる死を迎えた今邑彩さん「いつもの朝に」を紹介します。

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「白椿はなぜ散った」 岸田るり子

誰かに恋をすること、その人を大切に想うことって素敵です。小説でも漫画でも映画でも、恋の甘さや美しさを描いた作品はたくさんあります。

でも、恋愛って本当に甘く美しいだけのものでしょうか?誰かを想う気持ちがやがて歪み、暴走していくこともまたありうるでしょう。というわけで、今回ご紹介するのは、医学分野にも造詣の深い作家・岸田るり子さん「白椿はなぜ散った」です。

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「木曜組曲」 恩田陸

「女の敵は女」「女同士の腹の探り合いってすごく怖い」こういうフレーズを耳にすることってよくあります。同じ女として微妙な気持ちになる反面、一理あると思ってしまうこともまた事実。女性同士の掛け合いって、男女のやり取りでは決して出ない、ある種の緊張感があると思います。

そんな女性の心理戦を心行くまで味わいたい時は、これなんてどうでしょう。「ノスタルジアの魔術師」と称される恩田陸さんの初期の傑作、「木曜組曲」です。

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「愚行録」 貫井徳郎

皆さん、自分をどんな人間だと思いますか?親兄弟、友達、恋人の真実の姿を知っていると断言できますか?あるいは、周りの人達は自分の本当の姿を理解してくれていると言い切れますか?

できる、と言いたいところだけど、なかなか難しいのが人間というもの。ほんの少し見方を変えるだけで、まったく違った姿が見えてきても不思議ではありません。というわけで、今日ご紹介するのがこの作品、貫井徳郎さん「愚行録」です。

 

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