サスペンス

はいくる

「5分で読める!背筋も凍る怖いはなし」 『このミステリーがすごい!』編集部 編

角川文庫、講談社、集英社、新潮社、岩波書店・・・・・日本には、様々な出版社が存在します。作家やジャンルと比べ、出版社を基準に読む本を選ぶという人は少ないかもしれませんが、意外に会社ごとにカラーが違って面白いですよ。図書館と違い、書店では出版社ごとに棚が分かれていることが多いため、時間をかけてぐるぐる見て回るのも楽しみの一つです。

最近、私が注目しているのは<宝島社>。「別冊宝島」を創刊し、日本のムック文化発展に多大な貢献をした会社です。最近では、「このミステリーがすごい!」大賞を創設した出版社と言えば、ぴんと来る方も多いのではないでしょうか。私は宝島社が出版するショートショート集が大好きで、新刊情報をまめにチェックしています。先日読んだショートショート集も、期待通りの面白さでした。「このミステリーがすごい!」編集部による『5分で読める!背筋も凍る怖いはなし』です。

 

こんな人におすすめ

短時間で読めるホラー小説集が読みたい人

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「変な家」 雨穴

一昔前、小説家としてデビューするための方法は、主に三つでした。新人賞を受賞すること。自ら作品を出版社に持ち込むこと。自費出版すること。そこに加え、近年は新たなデビューへの道ができました。それは、インターネット上で小説を公開することです。小説投稿サイトなどを使えば公開は容易、閲覧者から感想をもらいやすいといったメリットがある反面、容易ゆえに競争相手が凄まじく多いこと、ネット界特有の誹謗中傷に晒される危険もあることなど、それなりにデメリットもあります。もっとも、どんな物事にも長所短所は必ずあるわけですから、プロ作家になるための手段が増えるのはやはり喜ばしいことなのでしょう。

ネット上で著作を公開し、評判を集めてデビューした作家さんとしては、住野よるさんがいます。新人賞を獲れなかった『君の膵臓を食べたい』を、小説投稿サイト<小説家になろう>に投稿したところ大人気となり、見事デビューを果たしたのだとか。それからこの作品も、ネット上で評判を集めて書籍化されたそうですよ。YouTuber兼ウェブライターでもある雨穴さん『変な家』です。

 

こんな人におすすめ

家にまつわるサイコサスペンスが読みたい人

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「老い蜂」 櫛木理宇

一昔前、<お年寄り>という言葉が持つイメージは、貫禄や老練、泰然自若といったものでした。最近はどうでしょうか。老害、暴走老人、シルバーモンスター・・・残念ながら、そんなマイナスイメージのある単語が飛び交っているのが現状です。もちろん、老若男女問わず、非常識で悪質な人間はいつの時代も大勢いました。ただ、感情をコントロールする前頭葉の機能は、ただでさえ加齢により低下するもの。加えて、核家族化や非婚化が進む現代において、かつてのように家族と暮らすことができず、コミュニケーション能力が一気に衰えて暴走するお年寄りが増えたことは事実だと思います。

これまでこのブログでは、中山七里さんの『要介護探偵の事件簿』や宮部みゆきさんの『淋しい狩人』といった、老いてなお気力も知力も若者に負けず、経験を活かして活躍するお年寄りの小説を取り上げてきました。こんなお年寄りばかりなら何の問題もないのですが、悲しいかな、善人もいれば悪人もいるのが世の常です。今回は、読者の背筋を凍らせるような老人が出てくる作品をご紹介します。櫛木理宇さん『老い蜂』です。

 

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老人ストーカーが絡んだサイコスリラーに興味がある人

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「嗤う淑女 二人」 中山七里

<クロスオーバー>という手法があります。これは異なる作品同士が一時的にストーリーを共有する手法のことで、主にアメリカンコミックの世界で発達したのだとか。映画化もされた『アベンジャーズシリーズ』で、アイアンマンやハルク等、違う作品のキャラクター達が共演して大活躍したことは、ご存知の方も多いと思います。

もちろん、小説分野でもクロスオーバー作品はたくさん存在します。その中で一つ挙げてみろと言われたら、中山七里さんの作品を出す方が多いのではないでしょうか。『静おばあちゃんと要介護探偵』では高円寺静と香月玄太郎が共闘し、『作家刑事毒島』には『刑事犬養隼人シリーズ』の登場人物が多数出てきます。それからこの作品でも、意外すぎるキャラ同士が共演しているんですよ。今回は、中山七里さん『嗤う淑女二人』を取り上げたいと思います。この作品の性質上、『連続殺人鬼カエル男シリーズ』のネタバレに触れざるを得ないので、未読の方はご注意ください。

 

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最恐悪女の無双ぶりを読みたい人

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「出版禁止 いやしの村滞在記」 長江俊和

新年明けましておめでとうございます。二〇一六年に開設した当ブログは、あと数カ月でめでたく六年目を迎えます。開始当初は、三日坊主になるのではないか、ちょっと不安だったものですが、閲覧してくれる皆様のおかげでここまで続けることができました。相変わらず趣味丸出しの偏ったレビューサイトになると思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

毎年、その年最初の記事を書くたび、「新年くらいすっきりハッピーエンドのおめでたい小説を取り上げよう」と思うものの、なかなか実現していないのが現状です。ハッピーエンドの話も大好きなのですが、振り返ってみると、なぜかイヤミスやホラー寄りの読書歴になっているんですよね。それがこのブログの特色ということで、二〇二二年一発目はこの小説にしようと思います。長江俊和さん『出版禁止 いやしの村滞在記』です。

 

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ルポルタージュ風のどんでん返しミステリーが読みたい人

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「貴船菊の白」 柴田よしき

日本語って、とても美しい言語だと思います。もちろん、どの民族にとっても自国の言葉は誇れるものなのでしょうが、神々が出雲大社に集まる十月を<神無月>(出雲地方では神在月)と呼んだり、雪の結晶の多くが六角形をしていることから雪を<六花>と表現したりする感覚は、日本語独自のものではないでしょうか。こういう雅な表現が大好きな私は、学生時代、古文の資料集を読んで悦に入っていたものです。

美しい日本語が出てくる小説となると、夏目漱石や川端康成、梶井基次郎といった、一昔前の文豪達の作品がたくさん挙がります。そういうのは取っつきにくいからまずは現代の作家さんで・・・という場合は、江國香織さんの『すいかの匂い』、長野まゆみさんの『少年アリス』、恩田陸さんの『蛇行する川のほとり』など、日本語の涼やかさや気品高さをたっぷり堪能できますよ。それから、この作品の言葉選びもうっとりするほど魅力的でした。柴田よしきさん『貴船菊の白』です。

 

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京都を舞台にしたサスペンス短編集が読みたい人

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「夢にも思わない」 宮部みゆき

小説や漫画がシリーズ化するための条件は色々ありますが、まず第一は<一冊目が面白かったこと>だと思います。最初の一歩の出来が良く、人気を集めたからこそ続編が出るというのは自明の理。シリーズ作品の中で、一番好きなものとして第一作目を挙げる人が多いのは当然と言えるでしょう。

ですが、人の好みはそれこそ十人十色なので、「一作目も面白いけど、自分は続編の方が好き」ということも多々あります。私の場合、綾辻行人さんの『館シリーズ』は、日本ミステリー界に激震が走った一作目『十角館の殺人』より、六作目『黒猫館の殺人』の方が好きだったりします。それからこれも、続編の方が好みでした。宮部みゆきさん『夢にも思わない』です。

 

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ほろ苦い青春ミステリーが読みたい人

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「刑事のまなざし」 薬丸岳

ミステリーないしサスペンス作品に最も多く登場する職業は何でしょうか。仮にランキングを作ったとしたら、上位三位の中には<警察関係者>が入っていると思います。というか、上記のジャンルの作品で、主要登場人物の中に警察関係者が一人もいないケースの方がレアでしょう。

ただ、よく登場する職業なだけあって、マンネリ化を避けるためには、魅力的かつ個性的な味付けが必要となります。例えば、赤川次郎さんの『四字熟語シリーズ』に登場する大貫警部は、恐ろしく食い意地が張っている上に傲岸不遜。中山七里さんの『犬養隼人シリーズ』に登場するする犬養隼人は、元役者志望という経歴に加え、男の嘘には敏感だが女のそれは大の苦手という個性の持ち主。この作品に登場する刑事も、上記の二人と比べ強烈さでは負けるかもしれませんが、目を離せなくなる存在感を持っていました。薬丸岳さん『刑事のまなざし』です。

 

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人間の悲哀を描いたミステリーが読みたい人

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「ファミリー」 森村誠一

世界には何冊の本が存在するのでしょうか。現在の数は調べても分かりませんでしたが、二〇一〇年末のGoogleの調査によると、一億二九八六万四八八〇冊だそうです。それから十年以上の月日が流れているので、今はもっと数が増えているでしょう。では、その中で、私の大好きなフィクション小説の割合は?正確な数は不明なものの、相当数あることは間違いありません。

ただ、数が増えるとなると、当然、複数の小説でテーマがかぶるというケースが出てきます。この場合、同じテーマをどうやって上手く料理するかが作家の腕の見せ所。高見広春さんの『バトル・ロワイアル』と、スーザン・コリンズの『ハンガー・ゲーム』は、<公権力主宰のデスゲームに巻き込まれた少年少女達>という設定が共通しているものの、物語の展開やキャラクター設定はまるで別物です。この小説も、違う作家さんの作品とテーマは同じながら、まったく違う面白さを味わえました。森村誠一さん『ファミリー』です。

 

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家庭内サイコホラーが読みたい人

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「邪教の子」 澤村伊智

宗教とは本来、人を救い、拠り所となるための存在です。苦しいことがあれば乗り越えられるよう神に祈り、善行を積めば死後に天国に行けると信じる。そんな信仰心は、時に人に大きな力を与えました。「神様の加護があるのだから大丈夫」。そう確信し、自信を持って物事に臨めば、不安も緊張もなく一〇〇パーセント能力を発揮することも可能でしょう。

と同時に、悲しいかな、信仰心が残酷な事態を引き起こしてしまうこともあり得ます。古今東西、神の名のもとに起こった争いは数えきれませんし、カルト教団によるテロや集団自殺が決行されたこともあります。小説で宗教問題が取り上げられる場合、こうした異常さがクローズアップされることが多いようですね。今回ご紹介する小説もそうでした。澤村伊智さん『邪教の子』です。

 

こんな人におすすめ

新興宗教をテーマにしたダーク・ミステリーが読みたい人

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