残念ながら私は画才に恵まれませんでした。子どもの頃から、図画工作や美術は苦手な教科の筆頭格。教室の後ろに自分の絵を飾られることが本気で憂鬱だったものです。
そんな私ですが、絵を見る方は結構好きです。正確には、絵そのものを見るというより、絵に関する背景やエピソードを知ることが好きなんですよ。ゴヤの<カルロス四世の家族>にはひっそりとゴヤ本人も描き込まれているとか、ダ・ヴィンチの<最後の晩餐>の向かって右側三人は「誰が裏切り者なんだ?」ではなく「今、キリスト先生が何て仰ったか聞き取れなかった!」と騒いでいるとか、夢中になって調べました。こうしたエピソードは、単に面白いだけでなく、画家の宗教観や死生観、当時の社会情勢などを知る手掛かりにもなるんですよね。今回ご紹介する作品にも、絵に込められた様々な思いや秘密が登場します。近藤史恵さんの『幽霊絵師火狂 筆のみが知る』です。
こんな人におすすめ
・絵にまつわる不思議なミステリーが読みたい人
・市井の人々が出てくる時代小説が好きな人