ホラー

はいくる

「5分で読める!ぞぞぞっ怖いはなし」 このミステリーがすごい!編集部

季節は夏真っ盛り。毎年思うことですが、なんだか年々夏の暑さが増している気がします。コロナの影響でマスク着用が一般的になったことも、息苦しさを増加させているのかもしれません。

直射日光の回避やまめな水分補給等、暑さ対策としてできることは色々ありますが、できれば肉体面だけでなく精神面でも涼を取りたいのが人情というもの。日本の暑気払いといえば、怪談話で肝を冷やすのがお約束です。というわけで、今回取り上げるのは、「このミステリーがすごい!」編集部による『5分で読める!ぞぞぞっ怖いはなし』。ぞっとして、夏の暑さを吹き飛ばしましょう。

 

こんな人におすすめ

後味の悪いホラー短編集が読みたい人

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「真夜中の時間割-転校生2-」 森真沙子

病院・廃屋と並ぶホラー作品の定番スポット、それが学校です。一説によると、平日の昼は大勢の子どもが出入りして賑やかなのに対し、夜や休日はほぼ無人状態になるギャップが恐怖心をかき立てるのだとか。確かに、無人島で物音がしなくても何とも思わないでしょうが、日中ワイワイと騒がしい学校がしんと静まり返っていると、不安や恐怖がより増す気がします。

学園ホラーの主役は、専ら生徒が務めることが多いです。大人と違って経験値が足りず、思慮深さに欠ける一方、熱意や行動力があるところが主役に向いているのかもしれません。とはいえ、教師主役のホラーでも、面白い作品がたくさんありますよ。今回ご紹介するのは、教師が中心となって展開する学園ホラー、森真沙子さん『真夜中の時間割-転校生2-』です。

 

こんな人におすすめ

教師が主役の学園ホラー短編集に興味がある人

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「禁じられたソナタ」 赤川次郎

ホラー作品には、登場人物達を恐怖のどん底に突き落とすモンスターがしばしば出てきます。このモンスターの種類は、大きく分けて二種類です。一つ目は、<誰が><なぜ><どのように>モンスターになってしまったか、はっきり分かるタイプ。映画『13日の金曜日』シリーズに登場するジェイソンや、鈴木光司さんによる『リング』の貞子がこれに当たります。モンスターの正体やそうなった理由が明確に存在するため、登場人物達の謎解きを見るのも楽しみの一つです。

もう一つは、登場人物達を苦しめるモンスターの正体が、はっきりとは分からないタイプ。例を挙げると、綾辻行人さんの『殺人鬼』シリーズなどでしょうか。作中でモンスターの正体は分かるものの、大前提となるすべての発端や、凶行に走る理由はあやふやなまま。登場人物達を襲う理不尽な恐怖の数々が、ものすごく恐ろしかったです。今回取り上げる作品にも、そうした正体不明の怪異が出てきました。赤川次郎さん『禁じられたソナタ』です。多少ネタバレがありますので、未読の方はご注意ください。

 

こんな人におすすめ

化物が出てくるホラー小説が好きな人

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「押入れのちよ」 荻原浩

先日、<ジェントルゴースト・ストーリー>という言葉を知りました。意味は<優しい幽霊の物語>といったところでしょうか。人を祟ったり呪ったりしない、心優しい幽霊が出てくるほのぼのストーリーを指すそうです。こういう幽霊のことを、怪談研究家の東雅夫さんは<優霊>と訳したそうですが、実に名訳だと思います。

幽霊ならぬ優霊物語といえば、赤川次郎さんの『ふたり』、加納朋子さんの『ささらさや』、辻村深月さんの『ツナグ』などが思い浮かびます。どの作品に登場する霊達も、憎悪や恨みにとらわれることなく、遺された大事な人への愛情に溢れていました。最近読んだこの本に出てくる霊も、優霊と言っていいのではないでしょうか。荻原浩さん『押入れのちよ』です。

 

こんな人におすすめ

バラエティ豊かなホラー短編集が読みたい人

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「闇祓」 辻村深月

道徳に反したやり方で相手を精神的に追い詰めるモラルハラスメント、性的な言動で相手に苦痛を与えるセクシャルハラスメント、職場内で権利や立場を利用した嫌がらせを行うパワーハラスメント、妊娠・出産・育児に関することで心身に不快な思いをさせられるマタニティハラスメント、教育現場において教職員がその権限を使って他者の修学や教育の邪魔をするアカデミックハラスメント・・・・・悲しいかな、この世にはたくさんのハラスメント、すなわち人権侵害が溢れています。もちろん、こうした嫌がらせ行為は大昔から存在したのでしょうが、今はインターネット文化が発展した分、より複雑かつ陰湿になってきた気がします。

一言でハラスメントと言ってもその種類は様々であり、当然、作中にハラスメント行為が出てくる小説もたくさんあります。というか、ハラスメント(嫌がらせ)が一切登場しない小説の方が逆に少ないかも?最近読んだ小説では、奥田英朗さんの『最悪』や垣谷美雨さんの『もう別れてもいいですか』で、読者をうんざりさせるようなハラスメントが描かれていました。それから、ちょっと毛色が違いますが、この作品のハラスメントにも背筋がゾワゾワしっぱなしでしたよ。辻村深月さん『闇祓』です。

 

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ハラスメントがテーマのホラーミステリー小説が読みたい人

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「5分で読める!背筋も凍る怖いはなし」 『このミステリーがすごい!』編集部 編

角川文庫、講談社、集英社、新潮社、岩波書店・・・・・日本には、様々な出版社が存在します。作家やジャンルと比べ、出版社を基準に読む本を選ぶという人は少ないかもしれませんが、意外に会社ごとにカラーが違って面白いですよ。図書館と違い、書店では出版社ごとに棚が分かれていることが多いため、時間をかけてぐるぐる見て回るのも楽しみの一つです。

最近、私が注目しているのは<宝島社>。「別冊宝島」を創刊し、日本のムック文化発展に多大な貢献をした会社です。最近では、「このミステリーがすごい!」大賞を創設した出版社と言えば、ぴんと来る方も多いのではないでしょうか。私は宝島社が出版するショートショート集が大好きで、新刊情報をまめにチェックしています。先日読んだショートショート集も、期待通りの面白さでした。「このミステリーがすごい!」編集部による『5分で読める!背筋も凍る怖いはなし』です。

 

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短時間で読めるホラー小説集が読みたい人

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「怖ガラセ屋サン」 澤村伊智

皆さんは、どんな都市伝説がお好きですか?国内外合わせると膨大な数の都市伝説が存在しますが、ホラー大好き人間な私は、やっぱり怪談系の都市伝説に惹かれます。口裂け女、赤マント、三本足のリカちゃん、さとるくん、ひきこさん・・・話を聞いた人のところに現れる<カシマさん>なんて、怖すぎてパニック起こしそうになったっけ。

都市伝説はインパクトがある上に想像の余地が多く、著者のオリジナリティを出しやすいからか、よく創作物のテーマになります。直木賞候補にもなった朱川湊人さんの『都市伝説セピア』や、ドラマ化された長江俊和さんの『東京二十三区女』などは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。どの作品でも、ゾクッとさせられる都市伝説がたくさん書かれていましたが、今日ご紹介するこの本も負けていませんよ。澤村伊智さん『怖ガラセ屋サン』です。

 

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恐怖をテーマにしたホラー短編集が読みたい人

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「ファミリー」 森村誠一

世界には何冊の本が存在するのでしょうか。現在の数は調べても分かりませんでしたが、二〇一〇年末のGoogleの調査によると、一億二九八六万四八八〇冊だそうです。それから十年以上の月日が流れているので、今はもっと数が増えているでしょう。では、その中で、私の大好きなフィクション小説の割合は?正確な数は不明なものの、相当数あることは間違いありません。

ただ、数が増えるとなると、当然、複数の小説でテーマがかぶるというケースが出てきます。この場合、同じテーマをどうやって上手く料理するかが作家の腕の見せ所。高見広春さんの『バトル・ロワイアル』と、スーザン・コリンズの『ハンガー・ゲーム』は、<公権力主宰のデスゲームに巻き込まれた少年少女達>という設定が共通しているものの、物語の展開やキャラクター設定はまるで別物です。この小説も、違う作家さんの作品とテーマは同じながら、まったく違う面白さを味わえました。森村誠一さん『ファミリー』です。

 

こんな人におすすめ

家庭内サイコホラーが読みたい人

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「邪教の子」 澤村伊智

宗教とは本来、人を救い、拠り所となるための存在です。苦しいことがあれば乗り越えられるよう神に祈り、善行を積めば死後に天国に行けると信じる。そんな信仰心は、時に人に大きな力を与えました。「神様の加護があるのだから大丈夫」。そう確信し、自信を持って物事に臨めば、不安も緊張もなく一〇〇パーセント能力を発揮することも可能でしょう。

と同時に、悲しいかな、信仰心が残酷な事態を引き起こしてしまうこともあり得ます。古今東西、神の名のもとに起こった争いは数えきれませんし、カルト教団によるテロや集団自殺が決行されたこともあります。小説で宗教問題が取り上げられる場合、こうした異常さがクローズアップされることが多いようですね。今回ご紹介する小説もそうでした。澤村伊智さん『邪教の子』です。

 

こんな人におすすめ

新興宗教をテーマにしたダーク・ミステリーが読みたい人

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「千年樹」 荻原浩

私は本をジャケ買い(内容を知らないCDや本などを、パッケージのみで選ぶ購入方法)することがあります。この時、「内容が想像と違う!」と驚かされることもしばしばです。特にハードカバーの場合、文庫本のように裏表紙にあらすじが書いてあるわけではないので、このパターンが多いですね。

過去に読んだ本では、若竹七海さんの『水上音楽堂の冒険』には仰天させられました。高校生三人組が明るく笑う表紙イラストと、<~の冒険>という楽しそうなタイトルから、てっきり少年少女が活躍するどきどきわくわく青春ミステリーかと思いきや・・・あの結末の残酷さと苦さは、今でもはっきり記憶しています。それからこの本にも、タイトルから予想していた内容と実際の内容が全然違い、びっくりした覚えがあります。荻原浩さん『千年樹』です。

 

こんな人におすすめ

時代を超えた人間ドラマが読みたい人

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