私は本が好きですが、映画も負けず劣らず好きです。昔、家の近所に映画館やレンタルビデオショップがあったこともあり、一時は週に何度も映画鑑賞に出かけたり、興味のある映画のDVDを片っ端から借りたりしていました。おかげでバイト代が全然貯まりませんでしたが、今振り返っても、あれはあれで楽しかったです。
今まで見た映画の中、印象的だったものを思い浮かべてみると、意外に<芸能人が監督をしている>というケースが多いことに気付きました。もはや歴史に残るレベルの大物であるチャールズ・チャップリンやクリント・イーストウッドはもちろんのこと、日本にも北野武さんや伊丹十三さんなど、名作を撮影された監督兼芸能人が存在します。品川ヒロシさんの『ドロップ』『漫才ギャング』も面白かったなぁ。最近、好きな作品を好きな俳優が監督を務めて映画化すると知り、楽しみにしています。神津凛子さんの『スイート・マイホーム』です。
こんな人におすすめ
家にまつわるモダンホラーが読みたい人
ここは、家族が幸せに暮らせる<まほうの家>---――長野の冬の厳しさに疲弊した主人公・健二は、ある日、住宅展示場で理想的な家と出会う。画期的な暖房システムが導入され、家中が冬とは思えないくらい暖かいのだ。この家ならば、妻子と共に快適な生活が送れるはず。そう確信し、家を建てると決める健二。完成した家は期待通りの快適さで、妻も子も幸せいっぱい・・・・・のはずだった。子どもの異様な視線、赤ん坊の瞳に映った何者かの影、家を訪れた同僚の不可解な態度。この家には、家族以外のナニカがいる。果たして健二は、家に潜んだ何者かから家族を守ることができるのか。戦慄のホラーミステリー、ここに開幕!
斎藤工さん監督、窪田正孝さん主演で映画化され、二〇二三年に公開が決まっています。斎藤工さんが大の映画好きということは知っていますが、彼の監督作品は何となく縁がなくて鑑賞したことがありません。もともと俳優としてとても魅力的な方だと思っていましたが、監督として本作をどう料理してくれるのか、すごく興味があります。
主人公・清沢健二は、妻と幼い娘と共に長野で暮らすスポーツインストラクター。冬の寒さは厳しく、幼い子がいることもあり、家全体が疲弊気味です。そんな中、健二は住宅展示場で見かけたモデルハウスに一目で惹かれ、マイホーム建設を決めました。その家には、地下室のエアコンで家中を暖めるという暖房システムが導入されていて、キャッチコピーは<まほうの家>。完成した家の住み心地は素晴らしく、次女も誕生し、清沢家は幸福に包まれます。ですが、平穏な時間は長く続きませんでした。家の中に何者かの気配が漂い、赤ん坊の瞳には不気味な人影が映り、やって来た同僚は<ナニカ>を見たと主張する・・・やがて人死にが起き、健二はもはや気のせいでは済まない事態だと覚悟。家に棲む何者かとの対決を決意するのです。
・・・と、こんな風に書くと健二がめちゃくちゃいい家庭人のようですが、実はそういうわけでもありません。前半で分かることなので書いてしまうと、幼児の子育てでクタクタの妻をよそに、職場の同僚と不倫中。また、ちゃんと理由があったことが後で明かされるものの、実家との関係がかなり複雑で、自分の母を気遣ってくれる妻に対し、妙に棘のある態度を取ったりします。正直、この家と関わらなくてもいつか家庭を破綻させていたのでは?と思った読者は、私だけではないのではないでしょうか。
本作の面白いところは、そうした健二の良い面と悪い面、彼のしでかしたこと、関わった人すべてが、きちんと終盤の真相発覚に絡んできている点です。健二がこういう人間で、こんなことをやらかしたから、こんな悲劇になってしまった・・・因果応報という言葉がぴったりの真相にハラハラドキドキさせられる一方、巻き込まれた人達がひたすら気の毒でした。特に子どもが・・・子どもが・・・
また、じめじめ~っと陰気な恐怖描写の数々も、ザ・Jホラーサスペンスという感じで非常に好みです。子どもだけ気付く不気味な存在とか、肉眼ではなく赤ん坊の瞳に人影が映ることで異常に気付くとか、想像しただけで鳥肌もの!ここ最近の家系ホラーといえば、『呪怨』のように怪異ががんがん攻撃を仕掛けてくるパターンが多かったので、逆に新鮮味がありました。これはお化けの仕業?それとも悪意ある人間?と、悩ませられる展開も含め、日本の恐怖小説の原点回帰を見た気分です。
斎藤工さんの監督ぶりも楽しみですが、ダメ男に偏り気味な主人公を窪田正孝さんがどう演じるかも、かなり気になりますね。映画『犬猿』で、小狡いところのある会社員を見事に演じていたけど、ああいう感じかな。あと、心配なのはラスト。実写であの場面を見るのはかなりキツそうな反面、この絶望感がないと本作の良さは表現しきれないよなと、今からあれこれ考えてしまっています。
主人公<だけ>が悪いわけじゃないんだけどね・・・度★★★★☆
本当に救いがないから要注意!度★★★★★
おぞましいイヤミス~の言葉がピッタリくるホラー要素もある波瀾万丈のストーリーでした。真梨幸子さんのシェアを読み終えましたが似ているようで違っている?というイメージでした。映画化もされるのですね。神津凜子さんは暫く読んでいないので再読しようと思います。
神津凛子さんは、前々から気になっていた作家さんで、ようやく読む機会に恵まれました。
イヤミスを通り越してオゾミスの域に達していましたね。
主人公に一〇〇パーセント共感できないところも含め、真梨幸子さんの作品に通ずるところがある気がします。
映画も楽しみです。