昔、家にギリシア神話の本が置いてありました。子ども向けにリライトされたバージョンだったので、私へのプレゼントか何かだったのかもしれません。子ども向けとはいえ当時の私にはショッキングなシーンが多く、驚いた記憶があります。
ギリシア神話に限らず、神話はしばしば残酷だったり生臭かったりするものです。それは、かつて神話が教訓や警告の役目を果たしていたからかもしれませんね。恐ろしいといえば、日本神話だって負けてはいませんよ。今日は、日本神話に登場する禍々しい鬼をテーマにした作品を紹介します。団鬼六賞で文壇デビューを果たした小説家、花房観音さんの『黄泉醜女』です。
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「オカルト」と「科学」、この二つは相反するものと考えられがちです。実際、その手の検証番組などでは、超自然学者と科学者が喧々諤々の討論を繰り広げていたりしますよね。漫画やドラマなどでも、上記の二者は犬猿の仲として描写されることが多い気がします。
ですが、この世にオカルトなど絶対存在しないという証明は今のところできていません。それならば、「幽霊」「呪い」といった超常現象も「人類」「進化論」などと同じように科学的に証明できる可能性だってあるわけです。一見、摩訶不思議な超常現象に論理的な解釈ができるとしたら・・・そんな面白い作品を読みました。石持浅海さんの『二歩前を歩く』です。
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実は私、若干閉所恐怖症の気があります。幼稚園の頃、エレベーターに閉じ込められた(実際は私がボタンを押していなかっただけ)経験があるからでしょうか。今でも、閉鎖的な空間はどうも苦手です。
様々な人間模様が生まれやすいせいか、閉ざされた状況を扱った小説は多いです。有名なのはアガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』に代表されるクローズド・サークルものでしょうか。しかし、「閉鎖空間」とは、何も物理的に移動できないことばかりではありません。移動そのものは可能でも、様々な原因により今の状況から脱することができない・・・そんなシチュエーションもあると思います。今回取り上げるのは、様々な「逃げられない」状況を扱った短編集、現役サラリーマンでもある石持浅海さんの『三階に止まる』です。
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「団地」という言葉ができたのは昭和十年代だそうです。住宅や工場を計画的に一カ所に集めて建設した地区、またはそこに立地している建造物のことで、住宅団地、工業団地、商業団地などがあります。「団地」と聞くと、住宅団地を真っ先に思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
多くの人や物が行き交う性質上、団地を舞台にした小説は数多く存在します。本間洋平さんの『家族ゲーム』、久保寺健彦さんの『みなさん、さようなら』など、映像化された作品も少なくありません。一つの建物内にたくさんの人が住み、様々な喜怒哀楽が渦巻く団地は、創作のテーマとして魅力的だからでしょうね。今日は、団地に巣食う闇を取り上げた短編集は紹介します。「映島巡」名義で漫画原作やゲームノベライズなども手がける、永嶋恵美さんの『インターフォン』です。
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現代では隣近所との人間関係が希薄になり、コミュニケーションを取る機会も少なくなったと言われています。プライバシーの保護や防犯上の問題から、ある意味では仕方ないことなのかもしれません。ちなみに私はというと、ご近所さんと挨拶程度は行っても世間話を交わすことなど稀、名前を知らない相手も大勢います。
では、もし隣人が自分と共通点を多く持っていたらどうでしょう?その上、人好きのする、とても魅力的な相手だったら?普段はご近所付き合いなどしない人でも、親しくなりたいと思ってしまうのではないでしょうか。そして付き合う内、隣人の恐ろしい秘密を知ってしまうかも・・・今日ご紹介するのは、そんな謎めいた隣人を扱った作品です。日本人作家としては国内最多の著作発行部数を誇る、赤川次郎さんの「おだやかな隣人」です。
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本屋や図書館でうろうろしていると、「アンソロジー」という本を見かけることがよくあります。「アンソロジー」とは、複数の作家による短編作品などを収めた出版物のこと。現代的な名前で呼ばれていますが、万葉集や古今和歌集、新約聖書などもアンソロジーに当たります。
複数の作家の作品が収録されるという形式上、内容の質にばらつきが見られるアンソロジー。たとえ話のレベル自体は高くても、「この設定は苦手」などいうこともあり、大満足の作品を見つけることは難しいです。ですが、最近読んだアンソロジーはレベルが高かったですよ。当代の人気作家が一堂に会したアンソロジー『宮辻薬東宮』です。
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「家」という言葉には、様々なイメージが付きまといます。ほのぼのと温かく、住人を守ってくれるイメージを持つ人もいるでしょう。と同時に、牢屋のように閉鎖的で、人を捕えるイメージだってあると思います。
前者の場合はラブストーリーやヒューマンドラマ、後者の場合はサスペンスやホラーの舞台となる「家」。「家」がキーワードとなるホラー小説といえば、貴志祐介さんの『黒い家』や小野不由美さんの『残穢』が有名です。ですが、この作品に登場する家も、それらに負けず劣らず恐ろしいですよ。澤村伊智さんの『ししりばの家』です。
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子どもの頃、人形遊びが好きでした。私の子ども時代に主流だったのはタカラトミーから発売された「ジェニーちゃん」。細かなキャラクター設定やお洒落な洋服の数々に夢中になったことを覚えています。
その名前の通り人の形をしているだけあって、人間と人形の間には強い繋がりがあります。そのせいか、ホラー界では時として恐ろしいキーアイテムになることもありますね。最近読んだホラー小説にも、不気味な人形が登場しました。澤村伊智さんの『ずうのめ人形』です。
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ミステリーの世界には「童謡殺人」という言葉があります。その名の通り、童謡の歌詞やメロディをキーワードとして殺人が行われるもののことですね。ミステリー小説としては世界で一、二を争うくらい有名なアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』、横溝正史の『悪魔の手毬歌』など、例として挙げられる作品はたくさんあります。
あまりにたくさんありすぎて、どれから紹介していいか迷う「童謡殺人」。今回は、狂気に駆られていく人間の醜態が印象的な作品を取り上げたいと思います。今邑彩さんの初期の名作『赤いべべ着せよ・・・』です。
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ちょっと寂しい話ですが、私は同窓会にほとんど出たことがありません。小学校から大学まで、仲の良い友達数名と個人的に会いはするものの、クラス全体で集まった機会は数えるほど。幹事を決めずに卒業したり、取りまとめ役だった子が遠方に引っ越したりしたことが原因かもしれませんね。
かつて同じ教室で学んだ仲間たちが集まり、旧交を温め合う同窓会。和気あいあいと思い出話で盛り上がれれば、これほど楽しいものはないでしょう。ですが、もし同窓会に集う仲間たちに恨みを抱く者がいれば?そして、同窓会に乗じ、過去の復讐を企んでいたとしたら・・・?そんな復讐劇を描いたサスペンス小説をご紹介します。叙述トリックの名手として有名な折原一さんの『沈黙の教室』です。
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