日本には素晴らしい推理小説を書く作家さんがたくさんいます。どの方もそれぞれ甲乙つけがたい魅力を持ち、一番を決めるのは難しいのですが、幻想・怪奇分野ではやはり江戸川乱歩の名前を挙げる人が多いのではないでしょうか。私自身、学校の図書室に置いてあった乱歩作品(確か、少年探偵団シリーズ)を読み、そのミステリアスな作風にすっかり魅了された記憶があります。
現代の作品で、あの独特のおどろおどろしさを出すのは難しいかも・・・・・と思っていたところ、面白そうな作品を見つけました。江戸川乱歩好きなら、タイトルを見ただけで手に取りたくなってしまうかもしれませんね。どんでん返しの巧みさに定評のある、歌野晶午さんの『D坂の殺人事件、まことに恐ろしきは』です。
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子どもの頃からホラー好きだった私が、いつかやりたいと思いつつ未だに実現できていないことがあります。それが「百物語」。参加者たちが合計百話に達するまで怪談を語り合うというお遊びですね。付き合ってくれる怪談好きがなかなか見つからず、いたとしても、合計百話になるまで怪談を語り続けるというのも結構難しいため、実行できる日は通そうです。
言い伝えによると、百話目の怪談を語り終えると、本当に怪奇現象が起こるのだとか・・・真偽のほどはともかく、人が思いを込めて語った話には、何らかの力があるのかもしれません。今日は百物語をテーマにした小説をご紹介します。この方の歴史小説に外れなし、宮部みゆきさんの『三鬼 三島屋変調百物語四之続』です。
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年を重ねたら、周りからどんな呼ばれ方をしたいですか?女性相手に「おばさん」と呼びかけることが失礼だとはよく言われますが、男性だって、軽々しく「おじさん」と呼ばれたくはないですよね。皆から慕われ、年相応の敬意を払われる呼称―――――「姉御」「兄貴」なんて、けっこう嬉しいんじゃないでしょうか。
でも、不思議なもので、そうやって皆に頼られている人が、要領良く幸福になるとは限りません。むしろ、面倒見が良く賢い人だからこそ、貧乏くじを引いてしまうケースも多いはずです。今日はそんな女性をヒロインに据えた一冊、直木賞受賞作家である林真理子さんの「anego」をご紹介します。
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「そんな悪い子はお化けにさらわれちゃうよ」。子どもの頃、そういう脅し文句を耳にした人は少なくないでしょう。「お化け」が「鬼」「幽霊」「人さらい」に変わることはあっても、基本的な構造はどれも同じ。どこからともなく現れ、人間を遠くへ連れ去る怪異の存在は、古今東西たくさん語られています。
もしそんな化け物が現実に現れたら・・・自分や家族が狙われるようになったら・・・考えただけで背筋が寒くなりそうですね。というわけで、今日はこの作品をご紹介しましょう。二〇一五年に日本ホラー小説大賞を受賞した澤村伊智さんのデビュー作、「ぼぎわんが、来る」です。
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暖冬だ暖冬だと言われ続けてきましたが、ここ数日で一気に寒くなりました。この辺りはさすがに積もりこそしないものの、一日に何度か雪がちらつき、風の冷たさも痛いほど。寒いのが苦手な私は、すっかりコタツに根を生やしてしまっています。
こういう寒い日、欧米では家族や友人と怪談話に興じるんだとか。日本では「ホラー=夏」というイメージがありますが、ただでさえ昼が短い冬の間、怖い話で夜を楽しく過ごすというのもオツなのかもしれませんね。先日、背筋の寒さに拍車をかけるようなホラー小説を読んだのでご紹介します。櫛木理宇さんの連作短編集、「209号室には知らない子供がいる」です。
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東京二十三区。それは日本最大級の人口を擁する街であり、世界に名だたる大都市です。閑静な高級住宅街や日雇い労働者が住むドヤ街、若者に人気のプレイスポットなど、性別も年齢も違う人々が絶えず行き交っており、まさに日本の中心部の一つと言えるでしょう。
それだけの大都市であるからには、当然そこに至るまでの歴史があります。その歴史とは、華やかで生き生きしたものばかりとは限らないかも・・・今日ご紹介するのは、東京の闇の奥に眠る秘密を描いた作品です。ディレクターや脚本家、映画監督など様々な顔を持つ長江俊和さんの「東京二十三区女」です。
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「実話系ホラー」というジャンルがあります。その名の通り、「実際の出来事であるかのような体裁のホラー」のことで、貞子やジェイソンのような目に見える化け物が登場することはほとんどない代わり、日常をじわじわと浸食するかのような恐怖感があります。最近では、映画化もされた小野不由美さんの「残穢」などがありましたね。
実話系ホラーの場合、リアリティはある反面、一歩間違えるとヤマもなければオチもなく、怖くも何ともない話になってしまうことが特徴です。ですが、今日ご紹介する作品に関しては、そういう心配は無用ではないでしょうか。実話系ホラーを書かせたら国内随一(と私が勝手に思っている)の三津田信三さん「怪談のテープ起こし」です。
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友達って大切です。それを否定する人は滅多にいないでしょう。私自身、これまで何度となく友達に助けられてきました。
でも、悲しいかな、友情とは必ずしも純粋な好意で成り立つとは限らないもの。見栄や優越感、対抗意識から成り立つ友情もまた存在します。女同士の友情の恐ろしさを描いた作品と言えばこれ、数多くのドラマ・映画の原作者としても名高い新津きよみさんの「女友達」です。
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八月も半ばに差し掛かろうとしていますが、まだまだ夏真っ盛り。連日暑い日が続いています。こう暑いと、プールや海水浴、アイスクリームなどで体を冷やしたいですね。
こういう暑い時こそ、ゾクリとする怪談話が欲しくなるもの。日本を代表するホラー・ミステリ作家として海外でも人気の三津田信三さん「凶宅」を紹介します。
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