はいくる

「シェア」 真梨幸子

コロナが流行る前、<シェア>という言葉を頻繁に見聞きする時期がありました。大皿料理やスイーツを頼んで同席者同士でシェア、ステーションに停めてある車をみんなで利用するカーシェアリング、各自の能力を必要に応じて共有・マッチングさせるスキルシェア・・・中でも、一つの家に複数人で住むシェアハウスは、人気リアリティショーの設定となったこともあり、爆発的に知名度を伸ばしました。気の合う仲間同士と楽しく、しかし家族ほどべったり干渉することなく暮らせたら、さぞ快適なことでしょう。

とはいえ、複数人で何らかのものを共有するという<シェア>の性質上、予想外のトラブルの可能性は否定できません。お金の問題、生活パターンの問題、常識の問題etcetc。不快な思いをするだけならまだしも、犯罪に関わってしまうことだってあり得ます。でも、いくらなんでもここまで拗れることは少ないかな?真梨幸子さん『シェア』です。

 

こんな人におすすめ

シェアハウスを舞台にしたイヤミスに興味がある人

スポンサーリンク

新宿にひっそりと建つ古びた民家<さくら館>。オーナー・穂香はここをシェアハウスとし、同世代の女性を集めて暮らそうとする。リフォームされて快適な住居、和気藹々とした団欒。経済的にも安定し、楽しい生活を送ることができる・・・・・とはならなかった。悪質な不動産会社、法外な諸経費、集まった一癖も二癖もありそうなシェアメイト達。おまけに建物の床下から、謎の胎児のミイラまで出てきてしまい-----謎と狂気が迸る、驚愕のノンストップ・イヤミス

 

シェアハウスをテーマにしたイヤミスやサスペンスというと、過去にブログで櫛木理宇さんの『FEED』を取り上げました。ただ、あちらのシェアハウスに集う人達は、大なり小なり問題はあれど、「家庭環境が酷過ぎるよな」「そりゃ、こんな劣悪なシェアハウスに逃げ込まざるを得ないよね」と同情できる点が多かったです。一方、『シェア』のシェアハウスに集まったのは、よくもこれだけキッツイのが揃ったものだと感心してしまうほど胡散臭い女性達ばかり。もちろん、彼女達にもそれぞれ事情や過去があるわけですが、そんな同情票を吹っ飛ばすほどの愚行奇行のオンパレード!腹立たしさを通り越していっそ清々しさを覚えるほどでした。

 

主人公・穂香は、音信不通だった父の死により、新宿にある民家を相続します。古く、汚く、おまけに法律上の問題があって再建築も不可能。どう扱えばいいか困り果てている時、家をシェアハウスにするという案を思いつきます。これなら楽しそうだし、私は優雅なオーナー暮らしをしながらお金を稼げる!・・・と浮かれたのも束の間、待っていたのは過酷な現実でした。依頼した不動産会社から丸め込まれ、リフォームのため多額の借金を負った上、なんと床下でミイラ化した胎児の遺体を複数発見。おまけに入居が決まった六人の女性は、どいつもこいつも得体の知れない連中揃い。折しも世間はコロナ禍の真っ最中。金銭的に逼迫した彼女達は、ついに禁断の一手を打つことにするのですが・・・・・

 

最初に言っておきますが、本作は決して読みやすいタイプの作品ではありません。多くの真梨作品と同様に登場人物数が多く、時系列もばらばら。視点も、オーナーである穂香、<さくら館>にまつわる謎を追うライター・生田夏海、夏美を雇った人気ユーチューバーの葉山、<さくら館>に関わった不動産会社社員やシェアメイト達と、ころころ変わっていきます。さらに、真相と黒幕も、本格ミステリーの価値観からするとちょっとアンフェアかも?この辺についていきにくいと感じる方は、本作に辛口評価を下すのではないでしょうか。

 

ただ、こういう複雑さ奇抜さが真梨幸子さんの持ち味であることもまた事実。空き時間にさらりと読むのには不向きかもしれませんが、じっくり腰を据えて読めば、次から次に起こる謎の数々に圧倒されること請け合いです。床下に隠されていた胎児の遺体は一体何なのか、腹に一物ありそうな女性達(大半がキラキラネーム)の正体は何者なのか、なぜ<さくら館>に関わった者達が一人一人消えていくのか・・・謎がバーゲンセール状態でてんこ盛りなのに、相変わらずの疾走感でぐいぐい読まされてしまいます。

 

そして、本作でキーワードとなるのが<シェア>です。主要登場人物が集うのは<さくら館>というシェアハウス、コロナ禍で金欠になったシェアメイト達はマスク販売業をシェアし、入居した妊婦は「生まれてくる子もシェアしよう」と言い出す。その上、持続化給付金詐欺もシェアしながら推し進め・・・と、何から何までシェア尽くし。本来、協力して分かち合う意味であるはずの<シェア>が、途端に得体の知らないものに思えてきます。コロナで一昔前のようなシェアが難しくなった時代に、あえてシェアをテーマにするところが面白いですね。

 

ところで、刊行時期から見るに、真梨幸子さんが持続化給付金詐欺の場面を執筆されたのは、現実世界で持続化給付金詐欺が大問題になるより前ではないでしょうか。だとしたら、凄い洞察力!こういう魅力があるから、どれだけ複雑でも、真梨作品を読むのはやめられません。

 

こんなものまでシェアしたくない!度★★★★★

真っ当な人が一人もいない・・・度★★★★★

スポンサーリンク

コメント

  1. しんくん より:

    真梨幸子さん、シェアハウスと聞いてまさに櫛木理宇さんの「FEED」を連想しました。シェアハウスはまともな人でいないと住んではいられないですが、まともな人だけしか出ないとドラマとしても小説としても面白くない。
    自分は大学が学生寮だったのである意味シェアハウスでした。
    癖のある人もいましたが比較的まともな人が多かったので快適で4年間過ごしてました。どぎつい人間関係のシェアハウスが想像も出来ませんが怖い物みたさで読んでみたくなりました。
    ホーンテッド・キャンパス最新刊読み終えました。久しぶりの長編~波乱な展開でも一気読みでした。

    1. ライオンまる より:

      私自身は寮生活を経験したことがないのですが、経験者によると、入寮者の常識・相性次第で天国にも地獄にもなるとのこと。
      寮でさえそうなのですから、生活空間の一部を共有するシェアハウスとなると尚更でしょう。
      閉ざされたハウス内でのドロドロ人間模様が強烈でしたよ。

      「ホーンテッドキャンパス」最新刊、もう読まれたとのことで羨ましい限りです。
      こちらは毒島シリーズの最新刊を読み終えました。
      あと、柴田よしきさんの「お勝手のあん」シリーズ最新刊も届いたので、早く読みたいです。

コメントを残す

*

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください