フィクションの世界においては、しばしば、登場シーンはわずかにも関わらず存在感を発揮するキャラクターがいます。こういったキャラクターで私が真っ先に思いつくのは、西澤保彦さん『仔羊たちの聖夜』に登場する事件関係者の弟・英生さん(分かる方、います?)。出てくるのはたった数ページなものの、明晰な言動といい、<肉体的にも精神的にもぜい肉をそぎ落としたようなストイックな凄みがある>容姿といい、やたら印象的なんですよ。私はちょっと影のあるキャラに惹かれてしまいがちなので、「いつか別作品の主要登場人物になってくれないかな」と今でも思っています。
こうした脇役にスポットライトを当てる作風で有名なのは、当ブログでもお馴染みの中山七里さんです。『さよならドビュッシー』の序盤で死亡する香月玄太郎は『要介護探偵の事件簿』『静おばあちゃんと要介護探偵シリーズ』でメインキャラになっていますし、中山作品のあちこちでちらほら顔見せする総理大臣・真垣は『総理にされた男』の主役です。主役と脇役、立ち位置が変わることで視点も変わり、かつては分からなかった背景などを垣間見ることができてとても面白いですよね。この作品では、他作品では脇役だったある人物の意外な過去を知ることができました。中山七里さんの『境界線』です。
こんな人におすすめ
・戸籍売買が絡んだ作品に興味がある人
・東日本大震災を扱ったヒューマンドラマが読みたい人
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