八月も半ばに差し掛かろうとしていますが、まだまだ夏真っ盛り。連日暑い日が続いています。こう暑いと、プールや海水浴、アイスクリームなどで体を冷やしたいですね。
こういう暑い時こそ、ゾクリとする怪談話が欲しくなるもの。日本を代表するホラー・ミステリ作家として海外でも人気の三津田信三さん「凶宅」を紹介します。
両親と姉、妹の四人で一軒家に引っ越してきた小学生の主人公。広い宅地にはなぜか主人公宅しか家が建っておらず、幼い妹は姿の見えない友達の訪問を受けるようになる。この家には『何か』ある。そう確信し、調査を開始した主人公の前に現れる謎の人影、奇行に走る老婆、前の住人が残した不気味な日記・・・・・果たして主人公は怪異に打ち勝ち、家族を守ることができるのか。家に巣食う不気味な存在の正体とは。
「恐ろしい秘密が隠された家」「山から下りてくるもの」「意味ありげな態度を取る近隣住民たち」等々、古典的和製ホラーの王道をいくキーワードがちりばめられた本作。最近のホラーの場合、「一番怖いのは人間の悪意」という展開になることが多いですが、本作ではこれでもかこれでもかと人外の恐怖を描きまくっています。古き良き時代の恐怖小説が好きな読者なら、冒頭数ページを読んだだけできっと引き込まれることでしょう。
主人公が小学校四年生の少年という点も、物語のミステリアスな部分を高めるのに一役買っています。どれだけ奮闘しようと、主人公はまだまだできないことの方が多い子ども。そんな彼が、体力や知力で大人に劣る部分を勇気で補い、新しくできた友達の手を借りて怪異に挑む展開は、自然と手に汗を握ってしまいました。
あらすじからも分かる通り、これはミステリーではなくホラー小説です。しかも作者の三津田信三さんの場合、実話風のホラー小説を得意としています。本作にもその特徴ははっきりと表れているので、あまり「謎解き」「トリック」などは意識せず、無心で化け物たちの恐ろしさを味わった方が楽しめますよ。
最後に、この作品を読む上での注意点を一つ。物語開始直後から不気味さと恐ろしさが漂う本作ですが、それはラストまで続きます。本当に最後の最後まで気が抜けません。この作品を読む場合は、間違っても最後のページを先に読むことがないよう、ご注意ください。
化け物が無双状態度★★★★★
子どもだって頑張ります度★★★★☆
こんな人におすすめ
・じっとりした和風ホラーが好きな人
・子どもの冒険譚が好きな人
未読の作家さんですが非常に興味深い内容です。
「グーニーズ」を思い出しますが、子供の冒険譚と言ってもそこまでではないようですが、冬でも暖かい部屋でホラーを楽しみのも良いですね。
どろどろした土着系ホラーミステリーを書かせたら、国内トップクラスの技量を持つ作家さんじゃないかと思っています。
単なるオカルトではなく、謎解き要素も絡んでいるところが好きなんですよ。
子どもも容赦なく怪異の犠牲になったりしますが、恐怖譚にどっぷり浸りたい時にお薦めです。