フィクション作品における時間の経過方法は、主に二つのパターンに分かれます。一つはいわゆる<サザエさん時空>で、登場人物たちが年を取らない方式です。いつまでも変わらない日常感を味わうことができるという長所から、特に『サザエさん』『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』などの子ども向け作品でよく見られますね。
もう一つは、物語が進むにつれて登場人物たちも年を取り、卒業・結婚・出産・死別といったライフイベントを経験していくパターンです。このパターンで一番有名なのは、赤川次郎さんの『杉原爽香シリーズ』ではないでしょうか。一年に一冊、新作が刊行されていくごとにヒロインも一歳年を取るという形式は、世界的にも珍しいんだとか。ここまで厳密に時間が経過していく作品は少ないかもしれませんが、作品ごとに登場人物たちの成長が見られると、読者としてはまるで親戚の子を見守るような感慨深さを味わうものです。今回ご紹介する作品の登場人物たちも、出会いと別れを繰り返しながら一歩ずつ前進していきます。西澤保彦さんの『匠千暁シリーズ』の長編第一弾『彼女が死んだ夜』です。
こんな人におすすめ
大学生が活躍するミステリーが読みたい人