「こんな結末は読んだことがない」「予想を遥かに超えた奇想天外なストーリー」。物語を評する上で、これらの文言はしばしば誉め言葉として使われます。私自身、事前の予想を裏切られるビックリ展開は大好物。この話は一体どう落着するのだろうと、手に汗握りながらページをめくったことも一度や二度ではありません。
その一方、期待通りに進む王道の物語も面白いものです。それは、『水戸黄門』や『必殺仕事人』が今なお支持されることからも分かります。私の中では、このシリーズもそういう安定・安心枠なんですよ。中山七里さん『毒島シリーズ』第四弾、『作家刑事毒島の暴言』です。
こんな人におすすめ
・皮肉の効いたミステリー短編集が読みたい人
・『毒島シリーズ』のファン
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この世には、様々な記念日や行事があります。大晦日、正月、ひな祭り、ハロウィン、バレンタイン。個人レベルなら誕生日や結婚記念日などもあるでしょう。こうした記念日には、プレゼントにごちそうなど、とにかく華やかできらきらしたイメージがあります。
反面、華やかであればあるほど、創作の世界ではしばしば血生臭く演出されることもあります。クリスマスなんて、まさにいい例ではないでしょうか。有名なスリラー映画『暗闇にベルが鳴る』や『ローズマリーの赤ちゃん』も、作中の季節はクリスマスシーズンでした。周りが賑やかで楽しげな分、登場人物達の恐怖や絶望が際立つのかもしれません。それからこの作品も、クリスマスが重要な要素なんですよ。西澤保彦さんの『仔羊たちの聖夜』です。
こんな人におすすめ
・多重解決ミステリーが読みたい人
・『匠千暁シリーズ』が好きな人
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<女三界に家なし>という言葉があります。<三界>とは仏教用語で<全世界>のこと。「女は子どもの頃は親に従い、結婚してからは夫に従い、老いてからは子どもに従うもので、世界のどこにも落ち着ける場所などないのだ」という意味だそうです。「そんな状態はおかしいから、決して甘んじてはいけないよ」と続くわけでもなく、ここで終わりというところに、旧来の価値観の恐ろしさを感じます。
こんな考え方はもう過去のものだ!と言いたいところですが、残念ながら、そうとも言い切れない現実があることは事実。特に<母親>に対しては、時として同性からも我慢と忍耐を強いられる傾向にある気がします。女であることに加え、親としての責任が生じるからでしょうか。とはいえ、上記の教えが生まれたのは二千年以上前だからもうどうしようもないけれど、現代の女がそうそう服従してばかりとは思えません。あんまり母親を舐めていると、予想外の事態に出くわしてしまうかも・・・・・今回ご紹介するのは、そんな驚愕の事態を描いた短編集、乃南アサさんの『マザー』です。
こんな人におすすめ
家族をテーマにしたイヤミスに興味がある人
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因習ミステリー、因習サスペンス、因習ホラー・・・悪しき習慣をテーマにした作品は、こうした呼ばれ方をすることが多いです。都会ではダメというわけではないのでしょうが、設定の都合上、閉鎖的な田舎が舞台となる傾向にあるようですね。行動の不自由さ、人間関係の濃密さ、外部からの情報伝達の遅さなどが、作品の陰湿な雰囲気を盛り上げてくれます。
この手の作品で大事なのは、いかに魅力的な因習を作り出すかということ。横溝正史御大の『金田一耕助シリーズ』は言うに及ばず、三津田信三さんの『のぞきめ』といい道尾秀介さんの『背の眼』といい、読者を惹きつけてやまない因縁話が登場しました。それから、この話に出てくる因習もなかなかのものでしたよ。中山七里さんの『鬼の哭く里』です。
こんな人におすすめ
限界集落を舞台にした因習ミステリーが読みたい人
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一昔前、<世話をする><面倒を見る>と言えば、大人が子どもに、若者が老人に、健康な人間が病人や怪我人に等、<エネルギーがある者がない者に対して行う>という認識が一般的でした。生き物には、どうしても弱い時代が存在するもの。そんな時に他者の手を借りることは、罪でも恥でもありません。
しかし、昨今、<面倒を見る>という行為の形式が変わってきた気がします。高齢の親が引きこもりの子どもの世話をしたり、ティーンエイジャーが大人に代わって家事や介護の一切を担ったりする話は、世間に溢れています。やむを得ない事情により一時的に行うならまだしも、それが恒常的に行われるとしたら・・・・それが不自然だと思うのは、果たして私だけでしょうか。今回取り上げるのは、中山七里さんの『ヒポクラテスの悲嘆』。家族というものの在り方について、改めて考えさせられました。
こんな人におすすめ
・引きこもり問題に関心がある人
・『ヒポクラテスの誓いシリーズ』のファン
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現代には、エンターテインメントが溢れています。漫画に小説、ドラマ、映画、ゲームetc。漫画一つ取っても、紙媒体もあれば電子書籍もありと、その数はまさに無数。この分だと、三年後、五年後には、きっとまた新しい娯楽が誕生していることでしょう。
これだけ数が多いと、当然ながら、詳しい分野と疎い分野が出てきます。私の場合、このところドラマに触れる機会がめっきり減りました。お気に入りの小説や漫画について調べた時、「え、これって映像化していたんだ!しかもとっくに放映終了してる!」と驚くこともしばしば・・・この作品も、知らない間にドラマ化されていたと最近知りました。永嶋恵美さんの『泥棒猫ヒナコの事件簿 別れの夜には猫がいる』です。
こんな人におすすめ
・後味の良いサスペンス短編集が読みたい人
・『泥棒猫ヒナコの事件簿シリーズ』のファン
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創作の世界において、姉妹というのは良くも悪くも濃密な関係になりがちです。私がイヤミスやホラーが好きだから余計にそう感じるのかもしれませんが、兄弟より複雑な愛憎劇が展開されることもしばしば・・・女同士という性別ゆえに、そういう描写がなされるのでしょうか。
ですが、現実がそうであるように、物語の中の姉妹だって毎回毎回いがみ合っているわけではありません。赤川次郎さんの『ふたり』『三姉妹探偵団シリーズ』や綿矢りささんの『手のひらの京』のように、固い絆で結ばれた姉妹もたくさん存在します。この作品の姉妹もそうですよ。西澤保彦さんの『幻想即興曲 響季姉妹探偵 ショパン篇』です。
こんな人におすすめ
クラシック音楽をテーマにしたミステリーが読みたい人
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<事件解決>とは、果たしてどのタイミングを指すのでしょうか。<捜査>という観点からいうと、犯人を逮捕したタイミング。もっと踏み込むなら、逮捕後、裁判によって動機や犯行方法等がすべて明らかとなり、然るべき刑を科されたタイミングだと考える人が多い気がします。
ただ、創作の世界に関して言えば、必ずしも逮捕や裁判が事件解決の必須条件となるわけではありません。登場人物の会話や独白、回想等で真相発覚・事件解決となることもあり得ます。「で、この後どうなるの!?」「犯人は捕まったの!?」というモヤモヤ感を残すことが多いため、イヤミスやホラーのジャンルでしばしば出てくるパターンですね。消化不良という批判を浴びがちですが、私はこういう後味の悪さが大好きです。そして、登場人物のやり取りで謎解きするという作風なら、やっぱりこの方でしょう。今回は、西澤保彦さんの『謎亭論処(めいていろんど) 匠千暁の事件簿』を取り上げたいと思います。
こんな人におすすめ
・多重解決ミステリーが読みたい人
・『匠千暁シリーズ』が好きな人
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SFやホラーの分野では、しばしば<主要登場人物が何者かに体を乗っ取られる>というシチュエーションが登場します。見た目は本人そのものなので周囲は異変に気付かず、狼藉を許してしまうというハラハラドキドキ感がこの設定のキモ。乗っ取られる側にしても、<完全に意識が消滅する><意識はあるが指一本動かせず、自分の体の悪行を見ているしかない><無意識下(睡眠中とか)に悪行が行われるため、乗っ取られた自覚ゼロ>等々、色々なパターンが存在します。
登場人物の見た目が重要な要素になるせいか、小説より映像作品でよく出てくる設定な気がします。私が好きなのはハリウッド映画の『ノイズ』。宇宙からの帰還後、別人のようになってしまう夫を演じたジョニー・デップがミステリアスで印象的でした。では、小説界でのお気に入りはというと、ちょっと特殊な作風ながらこれが好きなんですよ。西澤保彦さんの『スナッチ』です。
こんな人におすすめ
特殊な設定のSFミステリーに興味がある人
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空港。読んで字の如く空の港であり、国内外を結ぶ要です。旅行や出張の際はお世話になることも多い場所のため、親しみを感じる人もたくさんいるでしょう。飛行機移動の予定がなくても、空港内を散策したりショップ巡りするのが好きという人も結構いるようですね。私自身、大の甘党のため、空港のお菓子コーナーをうろうろするのが大好きです。
とはいえ、悲しいかな、空港はいつも楽しく和気藹々としているわけではありません。多くの人間が出入りし、海外との往来の要所ともなる性質上、犯罪の通過点になり得てしまうのです。そんな場所だからこそ、こういう刑事にいてもらえたらどれだけ安心でしょうか。今回取り上げるのは、中山七里さんの『こちら空港警察』。中山ワールドに新たな名刑事が誕生しました。
こんな人におすすめ
・空港にまつわる犯罪をテーマにした作品に興味がある人
・癖のある刑事キャラが好きな人
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