宗教とは本来、人を救い、拠り所となるための存在です。苦しいことがあれば乗り越えられるよう神に祈り、善行を積めば死後に天国に行けると信じる。そんな信仰心は、時に人に大きな力を与えました。「神様の加護があるのだから大丈夫」。そう確信し、自信を持って物事に臨めば、不安も緊張もなく一〇〇パーセント能力を発揮することも可能でしょう。
と同時に、悲しいかな、信仰心が残酷な事態を引き起こしてしまうこともあり得ます。古今東西、神の名のもとに起こった争いは数えきれませんし、カルト教団によるテロや集団自殺が決行されたこともあります。小説で宗教問題が取り上げられる場合、こうした異常さがクローズアップされることが多いようですね。今回ご紹介する小説もそうでした。澤村伊智さんの『邪教の子』です。
こんな人におすすめ
新興宗教をテーマにしたダーク・ミステリーが読みたい人