はいくる

「女の子は、明日も。」 飛鳥井千砂

学生時代の友達と定期的に会う機会はありますか。私は中学校から大学まで、同窓会の幹事を決めることなく卒業してしまったので、クラスメイトと大々的に集まったことは一、二度くらいしかありません。仲の良い友達数名でこぢんまりと会う機会はありましたが、各々の仕事や家庭の都合もあり、最近はめっきりご無沙汰です。仕方ないこととはいえ、ちょっと寂しくもありますね。

職場や習い事、親同士の付き合いなどでも友達を作ることはできます。ですが、人生で一番未熟な時期を共有した学生時代の友達というのは、やはり特別なものなのではないでしょうか。そんな風に思ったのは、飛鳥井千砂さん『女の子は、明日も。』を読んだから。久しぶりに昔の友達に会いたくなりました。

 

こんな人におすすめ

アラサー女性の友情をテーマにした小説が読みたい人

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大人っぽい美人の満里子、出版社でバリバリ働く悠希、芯が強くおっとりした仁美、翻訳家として名前が売れ出した理央。同じ高校出身の四人は、ひょんなことから再会して以降、定期的に集まってお喋りを楽しむようになる。夫婦関係、仕事、健康問題・・・・・顔を合わせるたびに励まされ、時にプレッシャーをかけられる四人。葛藤の果てに大切なものを見出していく女性たちを描いた、胸に染み入る友情物語。

 

女の友情を扱った小説が数多くある中、本作の珍しい点は「高校時代はそれほど親しかったわけではない四人が主人公」「全員が既婚で子どもなし」ということ。こういうテーマの小説の場合、学生時代からずっと付き合いが続いていたり、グループ内に既婚者と独身者が混じっていたりするパターンが多い気がします。そんな中、あえて「ただのクラスメイトだったが、今は似たようなフィールドにいる四人」を主人公にすることで、逆にそれぞれが持つ悩みや苦しみが浮き彫りになっているように感じました。

 

「女の子は、あの日も。」・・・勤務先の上司だった医者と不倫の末に略奪婚した満里子。経済的には何一つ不自由しないながらどこか物足りない毎日を、女友達とのお喋りが満たしてくれる。ある時、満里子はホームパーティーで一人の青年と出会い・・・・・

たぶん、女性読者の反感を一番買う話でしょう。略奪婚しておきながら「満たされない」と呟く満里子。高校時代、大人っぽい美人というだけで謂れのない陰口を叩かれていた彼女が、本当に非難される立場になるのだから皮肉です。でも、最後まで読むと、満里子の虚しさや孤独が分かる気がするから不思議・・・温かいチャイが飲みたくなります。

 

「女の子は、誰でも。」・・・編集者としてバリバリ働く悠希は、男に頼るのは恥ずかしいことと思って生きてきた。明朗快活な夫・健吾と結婚してからもそれは変わらない。そんな彼女の悩みは、営業から編集に異動になって以降、仕事がうまくいかないことで・・・

悠希の夫・健吾が素敵すぎる!年下ということもあって悠希からは「可愛い奴」的な扱いを受けている健吾ですが、いざ悠希が大変な目に遭った時は「悠希ちゃんは女の子なんだから!」と強く言い切る男気を持っています。その言葉を素直に受け止め、弱さを認める悠希もいいですね。二人の今後に幸あれ!

 

「女の子は、いつでも。」・・・おっとりした仁美は、サロンで働くマッサージ師。優しい夫と穏やかな結婚生活を送っているものの、結果の出ない不妊治療に苦しんでいる。そんなある日、ホームパーティーの席で悠希の妊娠報告を聞いてしまい・・・・・

私が一番感情移入した話です。平凡ながら波風立たない生活を送っているようで、実は不妊治療という悩みを持つ仁美。友達の妊娠を手放しで喜べないのも当然だと思います。「子どもなんてまだまだ」と言う人ほど先に妊娠するって、いかにも現実でありそうですね。そんな妻に対する夫の態度がとても誠実かつ真摯で、胸がジーンとしてしまいました。

 

「女の子は、明日も。」・・・初めて翻訳した本が大ヒットし、今や押しも押されぬ売れっ子翻訳家となった理央。だが、注目を集めると同時に、周囲の妬みをも買うようになる。彼女の本が売れ始めたことがきっかけで、四人は集まるようになるのだが・・・・・

四人の中で一番成功を収めたかに思える理央。はっきり自己主張するタイプに見える帰国子女の彼女が、実は一番脆い面を持つという描写がリアルでした。またこの話では、一見平凡そのものの仁美が意外な逞しさを見せる場面があります。実際、大人しい人ほど有事では予想外にテキパキ動くことってありますよね。仁美好きな私としては嬉しかったです。

 

子宮内膜症や不妊治療など、女性特有の悩みについても丁寧に書かれています。こういう内容に触れると、どうしても男性登場人物は「悩みを理解できない人」扱いされがちですが、本作の男性陣は基本的に全員聡明で思慮深い人達ばかり。悩み抜いた先には光がある。そんな希望を感じる、優しい作品でした。

 

綺麗なばかりじゃないさ、人間だもの度★★★★☆

それでも明日はやって来る度★★★★★

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コメント

  1. しんくん より:

    飛鳥井さんの作品には、女性に理解のある男性が多く登場するように思います。
    4人の女性たちの不安、満たされない想いを男性たちがどう受け止めるか?
    他人の芝が青く見える若い女性たちの心理や読後感の良いラストに繋がる展開が面白そうです。図書館でよく見かける作品ですので読んでみようと思います。

    1. ライオンまる より:

      この作品に登場する男性陣は素敵な人ばかりでした。
      その分、もしかすると、男性読者目線では「出来過ぎ」と感じるのかも?
      飛鳥井さんは現実味ある嫌な人間・嫌な事件を描くこともありますが、本作は読後感が良かったです。

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