料理というのは、意外とサスペンスと相性がいい要素です。食欲は人間の三大欲求の一つ。そして、殺意や憎悪、妄執、狂気といったサスペンスに欠かせない感情も、悲しいかな、人間と切っても切り離せません。不可欠なもの同士、しっくり馴染むのは、ある意味で当然なのかもしれませんね。
料理と絡んだミステリーやサスペンス小説といえば、一番最近読んだのは近藤史恵さんの『ときどき旅に出るカフェ』。美味しそうな料理と、居心地良さそうなカフェの情景、温かみと同時に時折ほの暗さを感じさせる人間模様の描写が秀逸でした。それから今回ご紹介する小説にも、作中に料理がたくさん登場します。秋吉理香子さんの『悪女たちのレシピ』です。
こんな人におすすめ
女性の殺意をテーマにしたサスペンスに興味がある人
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フィクション界隈において、私が好きなジャンルはホラー、イヤミス、サスペンス。昔からずっとそうで、周囲で片山恭一さん『世界の中心で、愛をさけぶ』が流行るのを横目に、私は五十嵐貴久さんの『リカ』を読んでいたものです。人目が気になって仕方ないお年頃だったので、あらすじを教えてと友達に言われ、口ごもったこともあったっけ。
とはいえ、ホラーやイヤミスの方が好みというだけで、決して恋愛小説を避けているわけではありません。有川浩さんの『植物図鑑』、辻村深月さん『傲慢と善良』、山田詠美さん『放課後の音符(キイノート)』等々、夢中になった恋愛小説もたくさんあります。中でもこれは、今でも定期的に読み返すほどお気に入りの一冊です。恩田陸さんの『ライオンハート』です。
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SF要素のあるラブストーリーに興味がある人
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どんなジャンルもそうであるように、ミステリー作品はしばしば批判の対象となることがあります。ネタが古い、キャラクターが凡庸、内容がごっちゃになっていて分かりにくい・・・物語に唯一絶対の正解はない以上、ある程度は避けられないことなのかもしれません。
ミステリーでよくある批判内容として、<謎解きがフェアじゃない>というものがあります。読者に対して正しく情報が提示されておらず、「これで真相を見破るの無理だろ!」という場合に出てくる言葉ですね。ミステリーはホラーと違い、基本的に謎解きを楽しむものですから、それが無理となると批判したくなるのも当然。逆に言えば、ここをクリアしていれば、ミステリーとしての評価はグンと上がる傾向にある気がします。その点、今回取り上げる作品はとても満足度が高かったですよ。歌野晶午さんの『そして名探偵は生まれた』です。
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意外性たっぷりのミステリー短編集が読みたい人
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「嘘ついたら針千本飲ます」「嘘つきは地獄で閻魔様に舌を抜かれるよ」。誰しも人生で一度や二度、こうしたフレーズを見聞きしたことがあると思います。嘘というのは、事実とは異なる言葉を言って他者を騙すことなわけですから、基本的には良くないものとされがちです。昔からある民話にも、嘘つきがひどい目に遭い、正直者が報われるというパターンは山ほどあります。
とはいえ、すべての嘘が悪いものなのか、断罪されるべきものなのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。時には誰かのためを思って嘘をつくことだってあるでしょう。一言で<嘘>といっても、そこには無数の背景や事情が存在するのです。今回は、様々な嘘が出てくる作品を取り上げたいと思います。小倉千秋さんの『嘘つきたちへ』です。
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嘘と騙しに満ちたミステリー短編集に興味がある人
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元教師、元医者、元社長、元プロアスリート・・・現役から退いたこれらのポジションは、フィクション界隈で重要な役割を果たすことが多いです。現役時代に培った技能と経験と人脈がある一方、退職済であるがゆえに職権はない。有能さと不自由さ、両方を描写することができ、物語を盛り上げやすいことが理由のような気がします。
そんな中、ミステリーやサスペンスで一番登場率が高いのは<元刑事>ではないでしょうか。都筑道夫さんの『退職刑事』をはじめ、元刑事が活躍する小説は数えきれないほど存在します。今回取り上げる作品でも、元刑事が実にいい働きをしていましたよ。芦沢央さんの『嘘と隣人』です。
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日常の悪意を描いた連作短編集に興味がある人
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寝ている間に見る<夢>は、とても不思議な存在です。体は寝ていて脳は覚醒している<レム睡眠>中に多く見られる現象で、時として五感を伴い、無自覚の願望や記憶が表れることもある・・・と言われているものの、正確なメカニズムは今なお不明。その神秘性から、古今東西、「夢で未来を予知した」「夢の中でお告げを受けた」等のエピソードも数えきれないほど存在します。
それだけ謎の多い現象なだけあって、多くのクリエイター達が自作のテーマとして夢を取り上げてきました。洋画『エルム街の悪夢シリーズ』には夢で殺戮を繰り広げる殺人鬼・フレディが登場しますし、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』はヒロイン・アリスが見る夢の中の物語です。夢という存在のミステリアスさは、特にファンタジーやホラーのジャンルに映えますね。今回ご紹介するのは、夢が重要な役割を果たすホラー小説、明野照葉さんの『感染夢』です。
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夢をテーマにしたサスペンスホラーが読みたい人
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何年、下手をすると何十年も前に読んだ作品のことが、急に気になり出す。再読したくてたまらなくなる。私にはこういうことが結構あります。何かきっかけがあったわけではなく、それこそ雷に打たれたかのように、「あ、あれがまた読みたい!」となるのですけど、あれってどういう思考回路なのでしょう?
こういう場合、一番困るのは、あまりに昔に読んだ作品だと作者名やタイトルが分からないケースがままあることです。あらすじをひたすらインターネットで検索しまくり、それらしい作品を見つけては、あれでもないこれでもないと悩むこともしばしば・・・今回取り上げる作品も、該当作を見つけるまでしばらくかかりました。赤川次郎さんの『遅刻して来た幽霊』です。
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現実味あるサスペンス短編集が読みたい人
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昔読んだ小説に、こんな台詞がありました。「この世の争いのほとんどは、イロかカネが原因で起こる」。イロ(色)とは性欲や恋愛絡み、カネ(金)とは金銭問題のことで、確かにトラブルのほとんどはそのどちらかが原因だよなと、しみじみ納得したものです。
どちらも当事者にとっては深刻なのでしょうが、<巻き込まれる関係者の多さ>という観点で見れば、金銭問題の方に軍配が上がると思います。特に遺産相続問題となると、相続人のみならず、その配偶者や子供の生活に関わる可能性があるわけですから、関係者が目の色を変えるのも一概には責められません。それでも、今日ご紹介する作品のような遺産問題は、なかなか珍しいのではないでしょうか。明野照葉さんの『骨肉』です。
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皮肉が効いた家族小説に興味がある人
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<その作家さんの著作の中で最初に読んだ本>というのは、強い印象を残しがちです。それが気に入らなければ「この人の本は、もういいかな」となる可能性が高いですし、逆に気に入れば、著作すべてを網羅したくなることだってあり得ます。読書に限った話ではありませんが、最初の一歩って重要なものなんですよね。
私は特に、気に入った作家さんの著作は一気読みしたくなるタイプなので、最初にどの本を読むかはかなり大事です。学生時代、西澤保彦さん『七回死んだ男』を読んでハマった時は、図書委員の権限を利用して西澤保彦さんの著作を購入リクエストしまくったっけ。それからこの本は、私が恩田陸さんにハマるきっかけを作った、記念すべき第一作目です。今回は『光の帝国 常野物語』を取り上げようと思います。
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超能力が出てくる連作短編集に興味がある人
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<何かを始めようとした時に限って、別のことに目がいってしまう>という経験をお持ちの方、一定数いらっしゃると思います。よく聞くのは、<勉強を始めた途端、部屋の掃除をしたくなった>とかですね。普段は特に気にならないのに、一体どうしてなんでしょう?
私の場合、一番よくあるのは<掃除を始めたら本棚の本が目についてしまい、つい読みふけってしまった>というパターンです。こういう時に目がいくのは、大抵、ずいぶん昔に読んだので細部を忘れてしまっている本。時間が経って読み返すと、また新たな面白味や驚きがあるんですよ。つい先日も、片付け中にこれを見つけてやらかしてしまいました。今邑彩さんの『よもつひらさか』です。
こんな人におすすめ
後味の悪いホラーサスペンス短編集が読みたい人
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