どんな物語にも、必ず主人公ないし主人公格の登場人物が出てきます。となると、膨大な数の主要登場人物が存在するわけで、必然的に彼らのキャラクターも多種多様なものになります。読者の共感を集め、感情移入され、エールを受けながら自分の人生を生きる主人公もいるでしょう。私の場合、これまで読んだ小説で一番応援した主人公は、小野不由美さん『十二国記シリーズ』の陽子。人目を気にするいい子ちゃんだった陽子が、異世界で心身ともにズタボロになりつつ、必死で足掻く姿に感情移入しまくりました。
その一方、読者に好かれず、反感を買うタイプの主要登場人物もまた存在します。嫌われる理由は様々ですが、意外に多いのは「正論ばっかりで嫌」というもの。確かに、長所もあれば短所もあるのが人間ですから、あまりに優等生一辺倒で正義を押し付けられても困っちゃいますよね。この作品の主人公は、まさにそういうタイプでした。飛鳥井千砂さんの『UNTITLED』です。
こんな人におすすめ
ほろ苦い家族小説が読みたい人
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学生時代の友達と定期的に会う機会はありますか。私は中学校から大学まで、同窓会の幹事を決めることなく卒業してしまったので、クラスメイトと大々的に集まったことは一、二度くらいしかありません。仲の良い友達数名でこぢんまりと会う機会はありましたが、各々の仕事や家庭の都合もあり、最近はめっきりご無沙汰です。仕方ないこととはいえ、ちょっと寂しくもありますね。
職場や習い事、親同士の付き合いなどでも友達を作ることはできます。ですが、人生で一番未熟な時期を共有した学生時代の友達というのは、やはり特別なものなのではないでしょうか。そんな風に思ったのは、飛鳥井千砂さんの『女の子は、明日も。』を読んだから。久しぶりに昔の友達に会いたくなりました。
こんな人におすすめ
アラサー女性の友情をテーマにした小説が読みたい人
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人間関係を築く上で一番大切なものは何でしょうか。相手への愛情?気遣い?関係を作るための努力?全部大切ですが、私は「距離感」を挙げます。親子であれ友達であれ恋人であれ夫婦であれ、違う人間である以上、一心同体にはなれません。そのことを忘れず、適度な距離と節度を持ってこそ、いい人間関係が作られるのだと思います。
人間関係を巡るトラブルの内、この距離感の見誤りが原因となるものは多いです。それは小説の世界においても同じ。壮大なものとなると、シェイクスピアの『リア王』なんてまさにその典型ではないでしょうか。今回取り上げるのは、飛鳥井千砂さんの『そのバケツでは水がくめない』。人との関わり方、人間関係の築き方について考えさせられました。
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仕事に恋に友情に、懸命に努力する人の姿は素敵です。私の場合、自分が女ということもあり、女性が頑張って働いたり、恋心に胸ときめかせたりする作品に無条件に惹かれてしまいます。実際、小説だけでなく映画でも漫画でもドラマでも、その手のテーマを扱ったものは数多くあります。
あまりにたくさんありすぎて取り上げる作品に悩むほどですが、まずはこれなんてどうでしょうか。個人的に、文章の柔らかさや繊細さでは国内トップクラスなのではないかと思っている作家さん、飛鳥井千砂さんの「鏡よ、鏡」です。
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