日本という国にとって、桜は特別な花です。様々な組織でシンボルマークとして使われ、桜のシーズンにはあちこちで花見が催され、桜をテーマにした歌や絵画は数知れず。薄紅色の花びらを一斉に付けた、華やかでいながら清々しい様子が愛される所以でしょうか。
その一方で、桜には妖しく底知れないイメージもあります。梶井基次郎は著作『桜の樹の下には』で「桜の樹の下には屍体が埋まっている」と書いていますし、そこから進化したのか「桜の花びらが薄紅色なのは、下に埋まった死体の血を吸っているからだ」などという怪談まで存在します。同じ美しい花でも、元気一杯に咲くチューリップや向日葵とは違う、どこか寂しげで妖艶な様のせいかもしれませんね。今回は、ちょっと季節外れですが、桜の持つミステリアスな雰囲気を活かした小説をご紹介したいと思います。花房観音さんの『鬼の家』です。
こんな人におすすめ
妖しくも哀しい怪談短編集が読みたい人