<婚活>という言葉が一般的になったのは最近の話ですが、結婚に向けた色々な活動は、ずっと昔から存在していました。この手の活動で一番古いものは、恐らくお見合い。ですが、お見合いでは家族や仕事など、どこかで繋がりのある相手としか出会えません。そこで台頭してきたのが、結婚相談所です。相談所を介することで本来なら接点のなかった相手と知り合えること、家族や仕事絡みの義理がないので気楽なことがメリットとして挙げられるようですね。
私が今まで読んだ小説の中には、結婚相談所が登場するものもいくつかありました。例えば朝比奈あすかさんの『人生のピース』や平安寿子さんの『幸せ嫌い』、以前このブログでも紹介した、秋吉理香子さんの『婚活中毒』などなど。他にはどんな作品があったかなと考えた時、二十年以上前に読んだ小説にも結婚相談所が出てきたことを思い出しました。それがこれ、赤川次郎さんの『結婚案内ミステリー風』です。
こんな人におすすめ
結婚にまつわるユーモアミステリーが読みたい人
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サスペンス、ホラー、ハードボイルドなどの創作物の場合、<なぜそういう状況になったのか>という設定作りが重要です。登場人物たちは日常とはかけ離れた世界に身を投じるわけですから、あまりにぶっ飛んだシチュエーションだと、読者が感情移入できません。例えばパニックアクション作品で<大災害>という設定を持ってくると、「確かに、こういう非常事態が起こったら、人間はこういう行動を取るかもな」と想像しやすいわけです。
こうした設定の王道パターンとして<復讐>があります。自分自身や大事な相手が傷つけられ、その復讐のため過酷な世界に身を投じる主人公。こういう状況は読者の同情を集め、主人公が道に外れた行いをしても「あれだけのことをされたんだから、気持ちは分かる」と共感されます。『巌窟王』や『嵐が丘』が今なお世界的名作として読み継がれているのは、そんな理由があるからかもしれません。最近読んだ小説も、一人の女性の悲しい復讐劇でした。秋吉理香子さんの『灼熱』です。
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愛憎絡んだサスペンス小説が読みたい人
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私の昔の職場は、大阪の会社と合併したせいもあって大阪出身の社員が多く、大阪への出張も頻繁にありました。職種がサービス業だったことも関係しているでしょうが、大阪という町やその出身者には、明るく賑やかなイメージがあります。実際、大阪を舞台にした小説も、伊集院静さんの『琥珀の夢』や万城目学さんの『プリンセス・トヨトミ』など、スケールが大きい陽性の作品が多い気がします。同じ関西でも、京都を舞台にした作品がしっとりした雰囲気になりがちなのと対照的と言えるでしょう。
とはいえ、当たり前の話ですが、人が生活する場である以上、いつもいつも明るくパワフルでいられるわけがありません。活気溢れる大阪という町にも、しんみりした部分や切ない部分がたくさんあります。今日ご紹介するのは、有栖川有栖さんの『幻坂』。しっとりと胸に染み入るホラーファンタジーでした。
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大阪を舞台にしたホラー小説が読みたい人
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ミステリーでおなじみのシチュエーションを挙げよと言われたら、一体どんな答えが出て来るでしょうか。私なら、<恐ろしい伝説が伝わる屋敷><とても日本とは思えないような洋館><迷路のように広い古城>辺りを思い浮かべます。俗に<館もの>と呼ばれるミステリーによく登場するシチュエーションですね。
脱出困難な館に集められ、次第に疑心暗鬼に囚われて行く登場人物たち・・・アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を筆頭に、今邑彩さん『金雀枝荘の殺人』、近藤史恵さん『演じられた白い夜』、東野圭吾さん『仮面山荘殺人事件』など、多くのミステリー小説でこの設定が使われてきました。そして、国内の<館もの>を語る上で忘れちゃいけないのが綾辻行人さんの『館シリーズ』。新本格ブームの火付け役となったシリーズで、一九八七年に第一作『十角館の殺人』が刊行されて以降、今なお根強く支持され続けています。この『十角館の殺人』は超有名作品なので、今回はシリーズの中でも毛色の違う作品を紹介したいと思います。講談社ミステリーランドの一冊、『びっくり館の殺人』です。
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子ども目線のホラーミステリーが読みたい人
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子どもという存在は無邪気なもの、裏表なく素直なもの・・・そんなイメージを抱いている人は多いでしょうし、実際にそういう面もあります。しかし、油断は禁物です。無邪気さや素直さは、残酷さや遠慮のなさに繋がるもの。「なんでそんなことをしてしまったの」と大人を唖然とさせる子どもは、現実にも存在します。
この手の<残酷な子ども>を描いた作品で私が一番衝撃を受けたのは、S.キングの『トウモロコシ畑の子どもたち』とスペインのホラー映画『ザ・チャイルド』。集団で襲って来る子どもたちと、訳も分からぬまま惨殺されていく大人たちの描写が凄惨で、しばらく呆然としてしまいました。この二作品はグロテスクな部分が多く、かなり人を選ぶと思うので、今回はもう少しマイルドな<怖い子どもたち>を紹介したいと思います。赤川次郎さんの『充ち足りた悪漢たち』です。
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子どもの恐ろしさをテーマにした短編集が読みたい人
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以前、別作品のレビューで、「<家>という場所には、人をとらえるイメージもある」と書きました。一説によると、<家>は<宀(家)>と<豕(豚)>が組み合わさってできた漢字であり、<豚などの家畜を生贄に捧げた呪法的な護りのある場所>という意味があるんだとか。どの程度信憑性がある話かは分かりませんが、もしこれが本当なら、<家>がホラーやミステリーの舞台になりやすいのも納得です。
前回ご紹介した<家>にまつわる作品はホラーだったので、今回はミステリーを取り上げたいと思います。歌野晶午さんの『家守』。この方の短編集を読むのは久々ですが、安定の面白さで大満足でした。
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<家>をテーマにしたミステリー短編集が読みたい人
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短編集の中には、<連作短編集>という形態があります。話同士が何らかの繋がりを持った短編集のことで、登場人物や場所が共通しているパターンが多いですね。いくつかの話をまとめると一つの大きな物語が出来上がることもあり、長編・短編とはまた違った面白さがあります。
これまで読んだことのある連作短編集では、有川浩さんの『阪急電車』、東野圭吾さんの『ナミヤ雑貨店の奇跡』、若竹七海さんの『ぼくのミステリな日常』などが面白かったです。今回ご紹介するのは、今邑彩さんの『つきまとわれて』。まさに連作短編集ならではの面白さを堪能できました。
こんな人におすすめ
・連作短編集が好きな人
・毒のあるミステリーが読みたい人
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生まれ変わり、輪廻転生、リインカーネーション。生き物が死後に再び肉体を得てこの世に戻ってくるという考え方は、世界中に存在します。この思想を信じるか否かでは意見が分かれるのでしょうが、私自身はかなり信じている方。実際、偶然や勘違いでは片づけられない事例もたくさんあるようです。
想像の余地が多いにあるテーマだからか、生まれ変わりをテーマにした創作物はたくさんあります。私のお気に入りは恩田陸さんの『ライオンハート』と北村薫さんの『リセット』。生まれ変わって大切な人と巡り合う奇跡に胸が熱くなりました。この二作品は、生まれ変わりの切なさや喜びを描いているので、今回は少し趣の異なる作品を取り上げたいと思います。歌野晶午さんの『ブードゥー・チャイルド』です。
こんな人におすすめ
・生まれ変わりに興味がある人
・どんでん返しのある本格ミステリが好きな人
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ミステリーにおけるトリックの一つに、<叙述トリック>というものがあります。一部の情報をわざと曖昧に記述し、読者に思い込みや先入観を抱かせてミスリードを誘うトリックのことです。男性かと思われた人物が実は女性だったり、同じ時代を生きる登場人物たちの物語と見せかけて、実は片方は数十年前の人物だったりと、色々な仕掛け方がありますね。
このテーマを得意とする作家さんといえば、折原一さん、歌野晶午さん、乾くるみさんなどが有名です。そしてもう一人、忘れちゃいけないのが大御所中の大御所が綾辻行人さん。社会派ミステリーが人気を集めていた時代に<新本格>という新たなジャンルを生み出した偉大な方です。綾辻さんといえば『館シリーズ』が有名ですので、今回はちょっと趣向を変えて『緋色の囁き』を取り上げたいと思います。
こんな人におすすめ
・叙述トリックが仕掛けられたミステリーが読みたい人
・少女の残酷さを描いた作品が好きな人
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<魔女>と聞くと、どういう存在を連想するでしょうか。恐らく、黒い服を着てホウキにまたがった女性を思い浮かべる人が多いと思います。実はこれは日本的な発想であり、発生の地であるヨーロッパではもっと多種多様な意味を持つ存在であるとのこと。男性だっているし、年齢も年寄りから少年少女まで様々です。数多くの学説があるようですが、まとめると<人知を超えた力で災いを為す存在>ということでしょう。
ここ最近はJ・K・ローリングの『ハリー・ポッターシリーズ』をはじめ、勇敢な若者が魔法を使って悪を倒す物語が主流な気がします。もちろん、それはそれで面白いのですが、語源を考えると、妖しく不気味な存在の方が正統派<魔女>のはず。というわけで、今回はこの小説を取り上げたいと思います。赤川次郎さんの『魔女たちのたそがれ』です。
こんな人におすすめ
閉鎖的な村を舞台にしたホラーサスペンスが読みたい人
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