はいくる

「ブロードキャスト」 湊かなえ

新年あけましておめでとうございます!趣味丸出しのこのブログも、皆様のおかげで無事に2019年を迎えることができました。今年も相変わらず独断と偏見に満ちた内容になるでしょうが、呆れずお付き合いくださると幸いです。

何度も何度も繰り返してきましたが、私はイヤミスやホラーが好きです。とはいえ、明るく軽快な作品が読みたい時だって当然あります。特にこの時期は、新年にふさわしい爽やかな小説が読みたくなるもの。というわけで、今回取り上げるのは湊かなえさん『ブロードキャスト』。ここ最近読んだ小説の中で、読後感の良さではトップクラスでした。

 

こんな人におすすめ

部活に打ち込む高校生の青春物語が読みたい人

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中学校で果たせなかった陸上の夢を、高校で果たそうとする圭祐。ところが悪質なひき逃げに遭い、その夢が断たれてしまう。気力を失う圭祐を目覚めさせたのは、同じ中学出身の正也に誘われ、何となく入部した放送部での活動だった。部員同士の対立、周囲からの偏見の目、中途半端に終わった陸上への情熱。それらすべてを乗り越え、圭祐たちは一歩、また一歩と夢に近づいていく。少年少女の眩しい青春を描いた、胸を熱くする成長物語

 

以前ブログでも取り上げた『未来』が<黒・湊>の集大成なら、本作は<白・湊>の集大成と言えるでしょう。白を通り越して純白と言っていいほどの爽やかさは、「本当に湊さんが書いたの!?」と目を丸くしてしまいそうなほど。作者名を隠した状態で読んだら、作者が湊さんだと気付かない読者も多いのではないでしょうか。

 

主人公の圭祐には、中学時代、陸上での全国大会出場をあと一歩で逃したという過去があります。今度は高校で全国を目指そう!そう思い、陸上の強豪校へ進学したものの、ひき逃げ事件の後遺症で夢を断念。呆然と日々を送る圭祐は、中学時代の同期である正也に誘われ、成行きで放送部に入部します。制作への夢を熱く語る正也ですが、実際の放送部の在り様は、なんとも前途多難なものでした。

 

学生時代、部活に全然熱心でなかった私ですが、それでも「あー、ありそう!」と頷いてしまうくらい、部活内でのやり取りがリアルです。最上級生としての自覚がなく、仲良しクラブ状態で満足している三年生と、それに苛立ち噛みつく二年生なんて、いかにも現実にありそうじゃないですか。この三年生たちが、お気楽で無責任ながら決して悪い子たちではなく、一友人としてはいい人なんだろうなと思わせるところも巧いですね。

 

リアルと言えば、放送部の活動に徐々にやり甲斐を見出していく圭祐に対する一部の生徒達の反応もリアルなんだよなぁ。学生時代って、スポーツが得意な生徒の方にスポットライトが当たり、文科系の生徒はなんとなく二番手三番手に回りがちなもの。そんな中、放送部でのラジオドラマ作成に勤しむ圭祐を馬鹿にする生徒が現れますし、圭祐のクラスメイトの放送部員・咲楽などは派手な女子グループから露骨にいじめられます。

 

この辺のエピソードは、湊さんならいくらでもドロドロ陰湿にできるんでしょうが、本作は何と言っても<白・湊>。圭祐の友人・正也が咲楽の境遇を題材にラジオドラマの脚本を練り、その制作に携わる内、圭祐が咲楽を庇う勇気を身に付けるという流れはとても清々しいです。この展開にSNSが絡んでいるというところも、いかにも現代の世相を反映していて面白いですね。

 

そしてもう一つ、忘れちゃいけないのが、ラジオドラマ制作に対する情熱やピュアさ。ぐだぐだだった部員たちが少しずつまとまり、見事に一つのドラマを作り上げる過程には胸が熱くなりました。彼らが作るラジオドラマ<ケンガイ>の脚本も面白いですし、いつか本当にラジオドラマ化されないかなと思います。個人的には、イケボらしい圭祐の声を生で聞いてみたいですね。ラジオドラマ化するとしたら・・・神谷浩史さんなんでどうでしょうか。

 

こんな青春時代を送りたい度★★★★★

最後には謎解きもあるよ度★★★★☆

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コメント

  1. しんくん より:

    改めて新年明けましておめでとうございます。
    湊かなえさんにしては異色の青春ストーリーでした。
    文科系でも体育会系と同じくサークル気分のノリで楽しむ部員と真剣に取り組む部員との摩擦があることをリアルに実感出来ました。
    社会に出るにおいて学生時代にこういう人間関係を学ぶことこそクラブ活動の本当の意義だと感じました。

    1. ライオンまる より:

      湊さんがこういう作品を書くって、本当に意外ですよね。
      私はどちらかというと「部活なら、仲良く楽しければいいじゃん」というタイプなので、三年部員たちの気持ちもちょっと分かってしまったり・・・
      一回り成長した主人公たちの今後が楽しみです。

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