はいくる

「リバース」 湊かなえ

私は昔からコーヒー党でした。子どもの頃は砂糖とミルク、今はミルクだけを入れて、ホットで飲むのが好きです。美味しいコーヒーがお供だと、読書の楽しさも三割くらい増す気がします。

作中にコーヒーが登場する小説もたくさんありますよね。有名なところだと、ドラマ化もされた吉永南央さんの『紅雲町珈琲屋こよみ』シリーズ、「このミステリーがすごい!」大賞にノミネートされた『喫茶店タレーランの事件簿』シリーズなどが挙げられます。そんな中、私のお薦めはこれ。「イヤミス」というジャンルを世に広めた、湊かなえさん『リバース』です。

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美味しいコーヒーを淹れて飲むことが唯一の趣味のサラリーマン・深瀬。平々凡々な毎日だが、コーヒーが縁で知り合った美穂子という恋人もいて、それなりに穏やかに暮らしている。そんなある日、美穂子のもとに一通の告発文が届く。『深瀬和久は人殺しだ』―――――誰が、一体何のために?さらに、同様の告発文が大学時代のゼミ仲間たちにも届いたと知る深瀬。もしやこれは、大学時代の「あれ」を知る何者かの仕業なのか。真相を探る深瀬が見た、残酷な真実とは。

 

湊かなえさんと言えば、大ベストセラーである『告白』の作者。その後、救いのあるヒューマンドラマが続いた時期もありますが、本作は久々のイヤミスです。これがまあ黒い黒い。白地に黒いコーヒー豆が並ぶ表紙の通り、白と黒が一気に反転し、登場人物と読者をゾクリとさせる展開には唸らされました。

 

ネタバレ防止のためミステリー部分について語るのは避けますが、本作の魅力は何も謎解きだけではありません。面白いと思ったのは、この手のイヤミスにしては珍しく、男性主人公目線で人間関係のヒエラルキーを描いている点です。長年スクールカーストの底辺に属し、大学デビューを果たそうとするもうまくいかない深瀬。そんな彼が、一つのきっかけを経て人気者たちの仲間に入ろうとするのですが・・・この辺りの深瀬のコンプレックス、男同士の人間関係の描き方に説得力があり、「男の付き合いも大変なんだなぁ」としみじみしてしまいました。

 

もちろん、最初に書いた通り、美味しそうなコーヒーも登場します。主人公の深瀬はコーヒーを淹れることだけは得意で、上司や同僚に腕を振るうのが日課ですし、コーヒー豆専門店にも通い詰めています。この時のコーヒーの淹れ方、立ちのぼる香りや豊かな味わい、コーヒーと一緒に出される蜂蜜トーストの描写がものすごく美味しそう!普段は紅茶派の人でも、ついついコーヒーが飲みたくなってしまうのではないでしょうか。

 

ちなみにこの作品、読了後に考えてみると、タイトルもものすごく意味深です。リバース、英語で「逆」や「裏側」。最後の一ページを読み終えた時、その意味が分かるでしょう。ぜひ美味しいコーヒーを飲みながら、物語の裏側に何が隠されているかを確かめてほしいです。

 

学生時代のランク付けなんて小さいものだよ度★★★★☆

読んでいてコーヒーの香りがする度★★★★★

 

こんな人におすすめ

・どんでん返しのある小説が好きな人

・男性主人公のイヤミスに興味がある人

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コメント

  1. しんくん より:

    もうすぐドラマ化されるので助かります。
    ラスト1ページの最後の一文が印象的でした。
    自分の大学生のときを思い出し少し懐かしくもありました。
    このリバースの女性版が「ユートピア」だったと思います。

    1. ライオンまる より:

      男性目線のキャンパスライフってこういう感じなのかと、なかなか印象深かったです。
      藤原竜也さん主演のドラマも楽しみですね。
      女版が「ユートピア」・・・なるほどなぁ。

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