「正義のヒーロー」「正義感が強い」「正義の道を貫く」・・・どれも専ら良い意味を持つ言葉です。正義とは、漢字が示すとおり、正しく道理にかなうということ。それが悪いと言える人など、恐らく一人もいないでしょう。
でも、ちょっと考えてみてください。立ち居振る舞いすべてが正義を重んじ、ほんのわずかな不正も許さない人。正義を守るためなら、誰かの心を踏みにじっても構わないと思う人。もしそんな人と出会ったら、信頼より苦痛を感じてしまうのではないでしょうか。今日は、そんな「正義の化身」とも言える人が登場する作品を紹介します。「暗黒女子」の映画化も決まり、まさに乗りに乗っている秋吉理香子さんの「絶対正義」です。
どんな小さな間違いも見逃さず、正義の名の下に過ちを正していく女・高槻規子。かつて規子と親しかった四人の女達のもとに、「思い出の会」への招待状が届く。差出人の名前は、全員で結託して殺したはずの高槻規子・・・・・もしや規子は生きていたのか?それとも、規子の名を騙る何者かの策略か?疑心暗鬼に陥る四人の心理模様と、その先に待つ恐るべき真相を描いたノンストップ・イヤミス!
こ、怖すぎる・・・読みながら、私が「高槻規子」という女性に対して抱いた感想は、まさにこの一言に尽きます。凶器を振り回すわけでもなければ、特殊な能力を持っているわけでもない。ごくごく普通の人間である規子が持つものはただ一つ、情を一切排除した正義感のみ。その正義感ゆえに規子は痴漢を捕まえ、クラス内の窃盗事件を解決する一方、子どもと共に逃げている妻の居所を「同居義務違反」として夫に教え、元クラスメイトの堕胎の過去を公にしようとするのです。
そんな規子と高校時代仲良しだった四人の女性たち。彼女たちはいずれも規子の正義感により助けられた過去があると同時に、苦しめられてもいます。ある者はせっかく築いたキャリアを、ある者は愛する人との穏やかな暮らしを、規子によって失いそうになった挙げ句、四人全員での殺人計画が動き出します。一体、規子の正義感の何が彼女たちをそれほどまでに追い詰めたのか。その恐ろしさは、作品を読めばきっと理解できるでしょう。
それにしても、「正義」という一言で間違いを正されることがこれほど怖いなんて!悪意ある嫌がらせなら抗議できるし、度が過ぎれば警察に訴えることもできる。でも、規子を糾弾することは誰にもできません。なぜなら規子の行動は一〇〇パーセント正しいものであり、過ちは何一つ犯していないから。ただ、そこに一片の人情もないというだけで・・・私は規子を見ていると、「ロボット」という言葉が浮かんで仕方ありませんでした。
優しさも温かみもない規子の行動には、終始モヤモヤしっぱなし。ですが、それは結局、作者の仕掛けた罠にまんまとはまってしまったということなんでしょう。そして、残りわずか数ページで判明する真相といったら・・・これ以上は語りません。イヤミス好きの方、騙されたと思って手に取ってみてください。
こんな友達いたら私も爆発する度★★★★★
人を思いやるゆとりも大事だよね度★★★★☆
こんな人におすすめ
・怖い女性の出てくる作品が好きな人
・後味の悪いイヤミスを堪能したい人
まさに極上のイヤミスでした。
規子を仲間に入れた時点で4人の女性の運命は決まってしまった?
ロボットというより疫病神?!とさえ思いました。
タチの悪い女性が登場する小説は数多くあれど、こういうタイプの「嫌な女」は珍しい気がします。
なんたって、悪い事は何一つしていないわけですから・・・
四人の今後を思うと怖すぎますね。