いじめ、体罰、スクールカースト、試験勉強etc。学校には様々な問題が山積みです。私自身、特に中学校では、人間関係のいざこざで苦労した記憶があります。誰かがこの問題を解決し、穏やかな学校生活を送らせてくれないものかと、他力本願なことを考えたりもしました。
もしも本当にそんな存在がいたとしたら、学校はより良い場所になるのでしょうか。そんな「もしも」を描いた作品を読みました。薬丸岳さんの『ガーディアン』です。
とある中学校に教師として赴任した主人公・秋葉は、校内が落ち着いていることにほっと胸をなで下ろす。聞けば以前は荒れていたそうだが、ここ最近で一気に穏やかになったのだという。その裏には、謎の自警団「ガーディアン」の存在があった。「ガーディアン」が問題行動の多い生徒を不登校に追い込んでいると知り、その存在に疑問を抱く秋葉。独力で正体を探ろうとするものの、「ガーディアン」による制裁の手はすぐ傍まで迫っていて・・・・・
生徒主導(正体は不明)の自警団「ガーディアン」によって秩序が保たれた中学校。いじめや虐待などの問題も解決し、平和そのものに見えますが、その平和を維持するため、「ガーディアン」は盗聴盗撮などによりターゲットの弱味を握るという手段を取っています。学校の平和の裏には、脅迫を始めとする、真っ当とは言い難い行動があるのです。
そこに疑問を抱くという主人公・秋葉の行動にはすんなり感情移入できました。いじめが解決するのは良いことだけど、ひとたび「ガーディアン」のターゲットにされると私生活での弱味を握られ、全校生徒から無視され、登校できないようになる。これってものすごい恐怖ですよね。「だったら他に効果的な手段があるのか」と聞かれると返答できませんが・・・この葛藤と答えを、作中で秋葉が代弁してくれます。
この手の学校問題を扱った小説の場合、主人公以外の大人は悪役になりがちですが、本作の場合は違います。どの教師も、保護者も、子どもを守りたいと思っている。でも、ただでさえ複雑な年頃の上、SNS等のツールが発達した現代では、子どもの異変を見つけるのが難しい。だったら「ガーディアン」による自治も悪くないかも・・・そんな大人の悩みや苦しみがきちんと描かれていました。薬丸ワールドの人気キャラクター・夏目刑事が、大人の良識を体現する役割を果たしている点も嬉しいです。
学校を舞台としている関係上、登場人物はものすごく多いですし、教師視点か生徒視点かによって名前の呼び方が変わるため、最初は混乱してしまうかもしれません。ですが、その点さえ整理すれば、一気読みできる良作だと思います。それにしてもラスト・・・意味深だ・・・
生徒にも先生にも苦労は多い度★★★★☆
最後の一ページの意味は果たして・・・度★★★★★
こんな人におすすめ
中学校での問題を扱った小説に興味がある人
登場人物が多過ぎて最初はストーリーについていけるのがやっとでしたが次第に繋がっていきました。
SNS全盛の時代、まともなやり方で虐めの根絶など不可能ではないか?こういう制裁に仕方もアリでは?とさえ思いました。
そんな中、ガーディアンと立ち向かう秋葉の最後の一言が締めくくった終わり方が印象的でした。
夏目刑事が良い所で登場したのも良かったですね。
あまりに残酷ないじめが横行する昨今、ガーディアンの制裁方法を否定しきれない自分がいます。
薬丸岳さんの場合、キャラクターが作品越えして登場することは今までなかったと思うので、夏目刑事は現れた場面ではビックリ!
短いながら、彼らしい優しさを示してくれてホッとしました。