死刑のことを<極刑>と表現することがあります。意味は、それ以上重い罰がない究極の刑罰ということ。己の罪を命を以て償う死刑は、確かに<極刑>という言葉がふさわしいと思います。
ですが、よく考えてみれば、死が万人にとって究極の刑罰とは限りません。「もう死刑でいいや」と投げやりになる犯罪者もいるでしょうし、極端な例だと「生きていても面白くないことばかりだけど、自殺は面倒。死刑囚は三食付きで労役もないし、ぜひ死刑になりたい」と考える不心得者もいるようです。こうした考えの人間を望み通り死刑にしたって、それは果たして究極の刑罰と言えるのでしょうか。生を望み、死を恐れる者に対してこそ、死刑は<極刑>たりえるのだと思います。今回取り上げるのは、薬丸岳さんの『最後の祈り』。死刑というものの意味について考えさせられました。
こんな人におすすめ
教誨師が登場する小説に興味がある人