はいくる

「シャルロットの憂鬱」 近藤史恵

以前の記事でも書きましたが、私は生まれた時からずっとマンション暮らしで、飼ったことがある生き物は金魚とヤドカリのみ。そのため、犬や猫といった動物を飼うことに憧れがあります。今でも、コリーやレトリバーのような大型犬と楽しげに遊ぶ人がいると、「いいなぁ」とついつい目で追いかけてしまいます。

とはいえ、動物を飼うことはままごととは違います。生活の中に生き物を迎え入れることで不自由も増えるでしょうし、トラブルに巻き込まれることもあるでしょう。先日、動物がいる生活の大変さと、それを上回る楽しさを描いた小説を読みました。近藤史恵さん『シャルロットの憂鬱』です。

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ままならない不妊治療に疲れ果て、元警察犬のジャーマンシェパード『シャルロット』を飼うことにした主人公夫婦。初めての犬との生活を時に満喫し、時に苦労する彼らは、やがていくつもの謎に直面する。異変に敏感なシャルロットが、なぜか吠えなかった空き巣事件。住宅街の中で突然開かれるようになった猫の集会。大型犬を貸してくれと頼んできた女性の真意・・・・・シャルロットが繋ぐ絆の深さと、日常に見え隠れする謎の数々を描いたコージーミステリ短編集。

 

かーーわーーいーーいーー!!と、犬好きでなくても悶絶しそうになるくらい、シャルロットが愛らしい!!元警察犬のジャーマンシェパードというだけあって外見は凛々しいけれど、中身は甘えん坊な女の子そのもの。悪戯を叱られてしょんぼりしたり、家族みんなで散歩に行けると知って大はしゃぎしたり、飼い主が他の犬を可愛がる姿を見て拗ねたり・・・不妊治療の失敗の末に犬を飼うことに決めた主人公夫婦が、あっという間にめろめろになるのも納得の可愛さです。

 

もちろん、犬好きな近藤史恵さんの作品なだけあって、ただ「犬って可愛いね」では終わりません。犬種や年齢による躾の難しさ、他の犬や飼い主との付き合い方、野良の動物の保護問題など、生き物と接する上で避けて通れない苦労もきちんと描写されています。個人的に印象深かったのは、地域猫の保護活動を行う女性のエピソード。猫の避妊去勢手術を励行する女性に子ども達が投げかける「それは猫のためなのか」という言葉、それに対する彼女の葛藤は、読んでいて胸に迫ってくるものがありました。

 

作品の中で、主人公夫婦は六つの事件に出くわします。どれも基本的に日常の中で解決するものばかりですが、共通しているのは、人間の都合で振り回される動物がいるということ。全員が悪意とは限りませんが、信頼できるはずの飼い主に利用されて他の生き物を傷つける羽目になったり、よその家に譲渡されたりする動物の姿を見るのは辛かったです。中でも一話だけ、どうしても許せないと思えるエピソードがあるのですが・・・ネタバレになってはまずいので、どの話かは、ぜひ読んで確かめてください。

 

謎解きそのものはどれもシンプル、ミステリとしては物足りないと感じる人も多いかもしれませんが、その分、短時間でさくさく読むことができます。近藤史恵さんの動物ものといえば南方署強行犯係シリーズがありますが、ほのぼの具合でいうなら断然こちらがオススメ。犬好きも、そうでない人も、シャルロットの愛くるしさに思う存分癒されてください。

 

ちょっとズルくて、時々抜けてて、とびきり可愛い!!度★★★★★

人間の問題に動物を巻き込んじゃいけません度★★★★★

 

こんな人におすすめ

・動物好きな人

・コージーミステリが読みたい人

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