近藤史恵

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「わたしの本の空白は」 近藤史恵

<記憶喪失>という言葉を見聞きしたことがない人は、恐らくいないと思います。正確には<逆行性健忘>といい、過去の記憶を思い出すことが困難になる症状を指します。この三日間、どんな風に過ごしたかまるで思い出せないというだけで、ものすごく不安でしょう。まして、今まで生きてきた人生すべての記憶を失い、自分が何者か分からないとしたら・・・その恐怖は想像を絶するものがあります。

現実では恐ろしい記憶喪失ですが、フィクションの世界においては、物語を盛り上げる要素となりえます。宮部みゆきさんの『レベル7』、東野圭吾さんの『むかし僕が死んだ家』、綾辻行人さんの『黒猫館の殺人』などは、<記憶喪失>というキーワードを上手く絡めた傑作ミステリーでした。この作品にも記憶喪失になったヒロインが登場します。近藤史恵さん『わたしの本の空白は』です。

 

こんな人におすすめ

記憶喪失をテーマにした小説が読みたい人

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「インフルエンス」 近藤史恵

女性同士の人間関係のもつれをテーマにした小説はたくさんあります。この手のテーマの場合、大抵はドロドロの愛憎劇になる傾向が強い気がしますね。人間関係が難しいのは男性同士、男女間でも言える話ですが、女性同士の方が「陰湿」「鬱々」というイメージがあるのでしょうか。

このブログでも新津きよみさん『女友達』、辻村深月さん『盲目的な恋と友情』などを紹介してきましたが、これらは女性二人をメインに据えた作品です。では、これが女性三人なら?「三角関係」などという言葉があるくらい、複雑な人間関係の代名詞とも言える三人組。そんな女性同士のトライアングルを描いた作品を紹介します。近藤史恵さん『インフルエンス』です。

 

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「ときどき旅に出るカフェ」 近藤史恵

私が大人になったらやりたいと思っていたことの一つ、それは「行きつけのカフェを見つけること」です。家の近所に居心地のいい店を見つけ、店員さんとも顔馴染みになり、お茶やスイーツを楽しみながらのんびりとした時間を過ごす・・・たぶん、ドラマか何かで見たシチュエーションだと思いますが、子どもの頃から本気で憧れていました。

そんな夢を持っていたからなのか、カフェを舞台にした小説も大好き。森沢明夫さんの『虹の岬の喫茶店』、池永陽さんの『珈琲屋の人々』、村山早紀さんの『カフェかもめ亭』など、どれも面白かったです。最近読んだカフェの出てくる小説といえば、近藤史恵さん『ときどき旅に出るカフェ』。こんなカフェが近所にあったらなぁ。

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「シャルロットの憂鬱」 近藤史恵

以前の記事でも書きましたが、私は生まれた時からずっとマンション暮らしで、飼ったことがある生き物は金魚とヤドカリのみ。そのため、犬や猫といった動物を飼うことに憧れがあります。今でも、コリーやレトリバーのような大型犬と楽しげに遊ぶ人がいると、「いいなぁ」とついつい目で追いかけてしまいます。

とはいえ、動物を飼うことはままごととは違います。生活の中に生き物を迎え入れることで不自由も増えるでしょうし、トラブルに巻き込まれることもあるでしょう。先日、動物がいる生活の大変さと、それを上回る楽しさを描いた小説を読みました。近藤史恵さん『シャルロットの憂鬱』です。

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