<モキュメンタリー>という手法があります。これは、フィクション作品を、実際に起こったドキュメンタリー作品のように描写するやり方のこと。ドキュメンタリーとして演出している関係上、作中で明確な謎解きや真相解明がなされないことが多く、与えられた情報から読者が考察する必要があることが特徴です。
古くから存在する手法ですが、知名度を上げたのは、アメリカ発のホラー映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』でしょう。小説なら、長江俊和さんの『放送禁止シリーズ』は、モキュメンタリーの性質をうまく活かしたサスペンスでした。それからこれも、モキュメンタリーの名作として、長く語り継がれる作品だと思います。背筋さんの『近畿地方のある場所について』です。
こんな人におすすめ
モキュメンタリー形式のホラー小説に興味がある人
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創作の世界には<評価が分かれる作品>というものが存在します。ある人にとっては傑作でも、別のある人にとってはイマイチ・・・などということは、決して珍しいことではありません。違った感想を持つ読者同士が、あれこれ意見をぶつけ合うこともまた、読書の醍醐味の一つです。
では、賛否両論、評価が分かれやすいのはどんな作品でしょうか。例を挙げると、<神様が超自然的な力を使って犯人を当てる>という麻耶雄嵩さんの『神様ゲーム』、学生達があまりに残虐な殺し合いを繰り広げる高見広春さんの『バトル・ロワイアル』、解決編が存在しない恩田陸さんの『夏の名残の薔薇』等が、議論を巻き起こす傾向にあると思います。それからこの作品も、人によって評価が分かれる気がしますね。夕木春央さんの『十戒』です。
こんな人におすすめ
クローズドサークルもののミステリーが好きな人
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一説によると、<毒殺>は弱者の犯罪だそうです。凶器となる毒さえ手に入れてしまえば、腕力や特殊技能がなくても殺人を実行できること、標的と直接相対する必要がないことなどが理由なのだとか。この使い勝手の良さ(と言ってはいけないのでしょうが)から、古今東西、犯行方法に毒殺を選んだ殺人者は数多く存在します。
フィクション作品でも、毒殺がテーマとなったものは数えきれません。あまりにありすぎて例を出すのが難しいのですが、世界的な有名作品だと、アガサ・クリスティーの『蒼ざめた馬』を挙げる方が多いのではないでしょうか。タリウムを使った殺人事件が出てくるのですが、あまりに有名になりすぎて、この作品の読者が現実のタリウム中毒事件に気付き真相解明に至ったというエピソードもあるほどです。毒の存在を楽しむのは、あくまで創作の世界の中だけに留めておきたいものですね。今回ご紹介するのは、赤川次郎さんの『ポイズン 毒 POISON』。毒がキーワードとなる、上質のサスペンスミステリーでした。
こんな人におすすめ
毒をテーマにした連作短編集に興味がある人
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<無敵の人>という言葉をご存知でしょうか。二〇〇八年、実業家であり論客のひろゆき氏が使い始めたインターネットスラングで、失うものが何もないため躊躇なく犯罪に走る人を指すのだそうです。つい魔が差し、一瞬、「こいつをぶん殴ってやりたい」とか「ここで暴れ回ったらすっきりするだろうな」とか思ってしまうのは誰でもあること。ただ、実際に行動してしまうと犯罪者となり、家族や仕事、築いた財産を失う可能性があります。そこで多くの人は罪を犯すことを思いとどまるわけですが、失いたくないものを持たない人間は、「もうどうにでもなっちまえ!」と破滅的な行動に走ってしまうことがあり得ます。二〇〇一年の附属池田小事件や、二〇一九年の京都アニメーション放火殺人事件等、実際に大惨事となったケースも少なくありません。
社会の耳目を集める存在なだけあって、無敵の人は多くのフィクション作品に登場します。作品の知名度として有名なのは、映画『ジョーカー』のアーサー・フレック辺りでしょうか。どん底の男が良識を手放し、ジョークとして凶悪犯罪を起こしていく様は、決して創作と言い切れないほどの迫力と臨場感がありました。さすがにアメコミのヴィランほどではありませんが、今日取り上げる作品にも、社会を混乱に陥れる無敵の人が登場します。中山七里さんの『能面検事の死闘』です。
こんな人におすすめ
・『能面検事シリーズ』が好きな人
・<無敵の人>を扱った作品に興味がある人
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当たり前の話ですが、図書館で本を予約した場合、その本がいつ手元に届くか事前には分かりません。特に予約者が大勢いるような人気作となると、順番が回ってくるタイミングは予測不可能。時には、予約本が複数まとめて届いてしまい、返却日を気にしつつ大慌てで読む羽目に陥ったりします。人気作は図書館側の購入冊数も多いため、意外とさくさく順番が進むのかもしれませんね。
逆に、待てども暮らせども予約本が一冊も届かないこともままあります。なぜか「今なら大長編だろうと読む余裕あるのに!」という時に限って、どの本も全然順番が回ってこなかったりするんですよ。最近、そういう状況が続いてモチベーション下がり気味だったので、この本が届いた時は嬉しかったです。近藤史恵さんの『ホテル・カイザリン』です。
こんな人におすすめ
イヤミス多めの短編集が読みたい人
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怪文書、犯行予告、警告状・・・ミステリーやサスペンスでは、しばしばこうした小道具が登場します。その内容は、ストレートに犯罪を予告するものから、謎解きをしないと意味が分からないものまで千差万別。登場人物達を怯えさせ、緊迫感を盛り上げるのにぴったりのアイテムです。
ただ、<わざわざ事前に文書を送りつけ、関係者の警戒心を高める>という性質上、リアリティ重視の社会派ミステリーなどで警告状等が登場する機会は少ない気がします。登場率が高いのは、探偵が活躍する本格・新本格ミステリーではないでしょうか。今回取り上げる作品でも、警告状が味のある使われ方をしています。恩田陸さんの『訪問者』です。
こんな人におすすめ
クローズドサークルのミステリーが好きな人
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一昔前まで「話を順番通りに追うのが面倒」という理由で、作中で時間が進んでいく形式のシリーズ作品はあまり読まなかった私ですが、一作独立型のシリーズは結構読んでいました。作中の出来事や人間関係が基本的に一作ごとに完結しているため、どの作品から読んでも大丈夫なところが気楽だったんです。私は図書館を利用することが多いため、シリーズ作品をきっちり刊行順通りに借りていくのは難しいせいもあるかもしれません。
何より、どこから読んでも置いてけぼりを食らうことなく楽しめるのが独立型シリーズ作品の魅力。そして、こういう形式のシリーズ作品の場合、読者によって一作ごとの好みがよりはっきり分かれる傾向にある気がします。例えば私の場合、赤川次郎さんの『三姉妹探偵団シリーズ』なら四作目『怪奇編』が、田中芳樹さんの『薬師寺涼子の怪奇事件簿シリーズ』なら三作目『巴里・妖都変』が好きだったりします。今回ご紹介するのは、綾辻行人さん『囁きシリーズ』の三作目『黄昏の囁き』。シリーズ中、これが一番お気に入りです。
こんな人におすすめ
記憶をテーマにしたサスペンスホラーに興味がある人
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有難いことに、実家には今なお私の部屋が残っています。昔、私が使っていた日用品の類も、状態の良い物はそのまま保管してくれています。実家を離れてずいぶん経つのに、まだ部屋を残してもらえるなんて、少し照れくさくも嬉しいものです。
そんな私の帰省中のお楽しみ。それは、実家の部屋に並んでいる本を読み返すことです。何度も何度も繰り返し読んだ作品ばかりで、別に目新しいわけではありませんが、読むたびにちゃんと面白いのだから不思議ですね。前回の帰省時には、この作品を再読しました。唯川恵さんの『息がとまるほど』です。
こんな人におすすめ
背筋がゾクッとするような恋愛短編小説集に興味がある人
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小説を読んでいると、しばしば「この話は映像化向きだな」と思うことがあります。動きが派手で、キャラクターの個性が強く、叙述トリック等、文章ならではの技法が使われていない小説がこう言われることが多いですね(一部例外あり)。「これは画面で見てみたい!」と思った小説が実写化された時の喜びは大きいです。
そして、小説の中には、最初から実写化ありきで執筆・刊行されたものもあります。その中の一つが、講談社とTBSが主催する<ドラマ原作大賞>。読んで字の如く、受賞作はTBSによりドラマ化されることが決まっています。今回取り上げるのは、ドラマ原作大賞第一回受賞作品、安藤祐介さんの『被取締役新入社員』です。
こんな人におすすめ
前向きなお仕事成長小説が読みたい人
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古来より、蛇は様々な文化の中で、<人知を超えた得体の知れない力を持つ存在>として捉えられてきました。手足のない体や、全身をくねらせて移動する動き方、脱皮を繰り返す性質などがそうさせるのでしょうか。旧約聖書の中で、禁断の果実を食べるようイブを唆すのは蛇ですし、ギリシャ神話では生命力の象徴とされ、世界保健機関のシンボルマークにもなっています。
蛇が重要なキーワードとして登場する作品はたくさんありますが、やはり<ミステリアスで不可思議な力の象徴>として描写されることが多い気がします。川上弘美さんの『蛇を踏む』や三浦しをんさんの『白いへび眠る島』などがいい例でしょう。今日は、蛇がとても印象的な使われ方をしている作品を取り上げたいと思います。今邑彩さんの『翼ある蛇』です。
こんな人におすすめ
・猟奇殺人が出てくるサスペンスが好きな人
・『蛇神シリーズ』のファン
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