は行

はいくる

「こんにちは刑事ちゃん」 藤崎翔

今までブログに投稿してきた読書レビューを見れば何となく分かるかもしれませんが、私はイヤミスが好きです。読み進めるうちにイヤ~な気分になり、たとえ謎が解けても登場人物たちは幸せにならない。その後味の悪さに、どうしようもなく惹かれてしまいます。

とはいえ、楽しく笑えるユーモア小説も大好きなんですよ。そんな私が、久々に「これはヒット!」と思える作品に出会いました。かつて「セーフティ番頭」というコンビ名でお笑い芸人として活動していた、藤崎翔さん「こんにちは刑事ちゃん」です。

 

続きを読む

はいくる

「anego」 林真理子

年を重ねたら、周りからどんな呼ばれ方をしたいですか?女性相手に「おばさん」と呼びかけることが失礼だとはよく言われますが、男性だって、軽々しく「おじさん」と呼ばれたくはないですよね。皆から慕われ、年相応の敬意を払われる呼称―――――「姉御」「兄貴」なんて、けっこう嬉しいんじゃないでしょうか。

でも、不思議なもので、そうやって皆に頼られている人が、要領良く幸福になるとは限りません。むしろ、面倒見が良く賢い人だからこそ、貧乏くじを引いてしまうケースも多いはずです。今日はそんな女性をヒロインに据えた一冊、直木賞受賞作家である林真理子さん「anego」をご紹介します。

続きを読む

はいくる

「戦場のコックたち」 深緑野分

戦争について考えたことのない人は、恐らくいないと思います。かくいう私自身、それこそ小学生の頃から平和学習を受けてきましたし、戦争を取り扱った映画やドラマ、小説も手に取りました。今この瞬間でさえ、戦火が上がり、人々が犠牲になっている戦場は山のようにあります。

大多数の現代日本人にとって、戦争とは非日常そのものの世界でしょう。ですが、たとえ戦地だろうとなんだろうと、人間が生きている以上、そこには毎日の生活があります。今日ご紹介するのは、そんな戦場での「日常」を描いた作品です。「このミステリーがすごい!」で二位にランクインした、深緑野分さん「戦場のコックたち」です。

 

続きを読む

はいくる

「行方」 春口裕子

ある日突然、大切は家族がいなくなったら・・・・・そんな想像をしたことはあるでしょうか。ついさっきまで当たり前のようにそこで笑っていた人が、跡形もなく消え失せる。しかもそれが、幼い我が子だったとしたら。一体どれほどの恐怖と絶望を感じるのでしょうか。

子どもの誘拐・失踪をテーマにした作品はたくさんあり、顛末も千差万別。ただ一つ共通しているのは、子どもを失った家族は例外なく生き地獄を味わうということです。今日は、そんな子どもの失踪を扱った小説をご紹介します。春口裕子さん「行方」です。

続きを読む

はいくる

「悪母」 春口裕子

親業って大変ですよね。何しろ子育ては仕事と違い、定時もなければ定休日もなし。必要とあらば二十四時間年中無休で子どもと向き合う、それが親の役目です。そんなハードな毎日を乗り切るため、家族はもちろんのこと、同じような境遇のママ友と支え合い励まし合う人も多いでしょう。

ですが、そのママ友は本当に信頼できる相手でしょうか?自分だけではなく子どもも交えて付き合うママ友と、もしトラブルを起こしてしまったら?今日ご紹介するのは、ママ友付き合いの闇を描いたサスペンス、春口裕子さん「悪母」です。

続きを読む

はいくる

「匿名交叉」 降田天

インターネットって便利で面白いですよね。その場を動かず世界中の情報を知ることができるし、別世界に生きる人達と友達になることができる。私がこうして本について語ることができるのも、インターネットがあるからこそです。

でも、当たり前の話ですが、インターネットには恐ろしい部分もたくさんあります。情報の発信者も受信者も姿が見えないため、その気になれば何の責任も負うことなく人を傷つけ、貶めることができるのです。インターネットの匿名性の恐怖を描いた作品と言えばこれ、漫画や映画のノベライズ作家としても実績のある、降田天さん「匿名交叉」です。

続きを読む

はいくる

「皇妃エリザベート」 藤本ひとみ

クレオパトラ、楊貴妃、小野小町・・・歴史上、絶世の美女と称えられる女性は大勢います。中には、美貌が原因で国を傾けてしまった女性も少なくありません。でも、その中でちゃんと顔が分かる女性となると、けっこう少ないですよね。

写真が現存している美女と言えば、この人を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。今日紹介するのは、元厚生省職員という経歴を持つ藤本ひとみさん「皇妃エリザベート」です。

続きを読む