はいくる

「女王はかえらない」 降田天

スクールカースト。読んで字のごとく、学校内における人気順位をカースト制度になぞられた言葉です。上位に位置する者ほど発言権が強く、下位の者はクラスの日陰者、どころか下手すればいじめの対象にもなりえます。私の学生時代にも似たような上下関係はありましたが、当時はネットなどがそれほど普及していなかった分、少なくとも校外には逃げ場がありました。今はSNSなどを使えば、最悪の場合、全世界に悪口をばらまかれる可能性もあるわけですから、つくづく怖いなと思います。

言葉自体が定着したのは割と最近なような気がしますが、スクールカーストを扱った小説は昔からありました。山田詠美さんの『風葬の教室』など一九八八年の作品ですし、二〇〇三年に芥川賞を受賞した綿谷りささんの『蹴りたい背中』も学校内での人間模様がテーマです。最近では、映画版も話題になった朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』などが有名ですね。今回は、私が読んだスクールカーストものの中でもトップ3に入るほど陰惨な作品を紹介します。降田天さん『女王はかえらない』です。

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勝気な少女・マキによって支配される四年一組。彼女の気まぐれ次第で天国にも地獄にもなる学校生活が、転入生・エリカの登場によって変化し始める。激化する派閥争い、横行するいじめ、神経を尖らせていく生徒たち。ある出来事によってマキを女王の座から蹴落とし、新女王として君臨するエリカだが、それは本当の悲劇の始まりにすぎなかった・・・・・残酷な子どもたちの暴走と運命を描いた学園ダークミステリー。

 

中学や高校を舞台にしたスクールカースト小説は色々ありますが、本作の舞台となるのは小学校。小学生なんてまだまだ子どもだから、そんな酷い争いにはならないだろうって?いえいえ、そんなはずありません。彼らは子どもだからこそ限度を知らず、残酷に争い、人を傷つけ、取り返しのつかない悲劇に向かって突き進んでいくのです。

 

物語の舞台となるのは、片田舎の小学校のあるクラス。女王・マキの恐怖政治がまかり通っている教室を、語り手である「ぼく」通称オッサンは淡々と見ています。そんな四年一組にやって来たのが、東京からの転入生・エリカ。都会育ちらしくお洒落で洗練されたエリカはたちまちシンパを増やし、クラスの指導者の座を巡ってマキと陰湿な争いを繰り広げるようになります。

 

この教室内で起こるいじめの数々が、すごくリアルで嫌らしい!互いの悪口を聞こえよがしに大声で言い合い、本人ばかりか親のことも貶し、机に中傷の落書きをする。幼稚ながら凶暴な仕打ちに、読みながらゲンナリしてしまいました。語り手のオッサンが、クラス内で<変人>の地位を得る代わりにグループ抗争と無関係でいられるという描写もリアルですね。確かに、「なんか変な奴」と思われた生徒って、集中的ないじめのターゲットにされることはあまりない気がないします。あと、クラスを男子ではなく女子が仕切るという辺りも、いかにも小学校でありそうです。

 

一番インパクトがあるのは、子どもたちの暴走と悲劇が綴られる第一章ですが、物語はここでは終わりません。第二章で語り手は教師に変わり、学校で起きたとある事件が語られます。そして第三章、とある人物の回想で分かるのは、あまりに残酷で救いようのない真実・・・・・すべての伏線が回収される流れはとてもテンポが良く、ページをめくる手が止まりませんでした。

 

決して悪い意味ではないのですが、使われているトリックは目新しいものではありません。いわゆる叙述トリックに慣れた読者ならすぐ違和感を感じ、真相に気付くでしょう。ですが、本作の最大の魅力かつ恐怖ポイントは別にあります。四年一組に狂気を蔓延させ、生徒達全員に十字架を背負わせた悪意の正体、その真の仕掛け人の本音にはただただ唖然・・・そういえば、最初からそれらしい記述はあったもんなぁ。とにかく救いがなく陰鬱な作品なので万人受けはしないかもしれませんが、イヤミス好きなら読んで損はないと思います。

 

タイトル「かえらない」の意味は果たして・・・度★★★★☆

映像化はたぶん無理だろう度★★★★★

 

こんな人におすすめ

残酷なスクールカーストをテーマにしたイヤミスが読みたい人

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コメント

  1. しんくん より:

    柚木麻子さんの「王妃の帰還」を思い出すストーリーですね。
    ただこれ以上に辛辣なダークな学園ミステリーにイヤミスが感じられそうです。
    この作家さんはよく図書館で見ますが未読です。新しい作家さんの開拓にちょうど良さそうな作品です。
    湊かなえさんの新作を予約していますが、また届きません。
    それまでにこの作品を読みたいですね。

    1. ライオンまる より:

      「王妃の帰還」がスクールカーストをテーマにしつつ温かみのある作品だったのに対し、本作はひたすら陰鬱です。
      主要登場人物が小学生というところも、作品のダークさを際立たせているように感じました。
      ちなみに湊かなえさんの新作、まだ図書館に入ってません(涙)

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