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「すみれ屋敷の罪人」 降田天

子どもの頃、友達とよくごっこ遊びをしました。お母さんごっこ、学校ごっこ、レストランごっこ、スパイごっこ・・・お嬢様ごっこもその一つ。この場合の<お嬢様>は、現代でなく戦前の設定であることが多く、「お姉様、舞踏会のドレスはどうしましょう?」「馬車の用意ができましたわ」などと言い合っていたものです。子ども心に、古き良き時代の香りを楽しんでいたのかもしれません。

ドラマを作りやすいからか、そういう時代の上流階級はよく小説でも取り上げられます。太宰治の『斜陽』や三島由紀夫の『豊饒の海』など、読むと自然と言葉使いが「~かしら?」「〇〇だわ」なんてちょっと改まった風に変化していたっけ。この二つは教科書に載ってもおかしくないほど有名なので、今回は別の作品をご紹介します。降田天さん『すみれ屋敷の罪人』です。

 

こんな人におすすめ

戦中戦後の名家が出てくるミステリーが読みたい人

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「偽りの森」 花房観音

私が初めて京都を訪れたのは、高校の修学旅行の時です。あまり滞在時間が長くなかったため、清水寺や三十三間堂といった有名な観光地を数カ所回っただけですが、凛とした情緒溢れる佇まいが強く心に残りました。東京や大阪とはどこか違う雅やかな雰囲気、それこそが京都の魅力だと思います。

あの独特の雰囲気のせいか、京都を舞台にした小説は繊細さと濃厚さ、両方を併せ持つものが多い気がします。『源氏物語』などまさにその代表格ですし、映画化もされた渡辺淳一さんの『愛の流刑地』、サスペンスホラーの金字塔である貴志祐介さんの『黒い家』等々、ねっとりとした人間模様が迫ってくるような作品ばかりです。というわけで今回は、京都を舞台に濃密な愛憎劇が展開される小説をご紹介します。花房観音さん『偽りの森』です。

 

こんな人におすすめ

京都を舞台にしたドロドロの人間模様に興味がある人

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「中島ハルコはまだ懲りてない!」 林真理子

悩みを抱えた時の一番スタンダードな解決方法は、「誰かに相談する」だと思います。ネットで調べる・占いに頼る・趣味に没頭して気を紛らわせる、などの方法もありますが、これだと正確性に欠けたり、根本的な問題解決にならなかったりしますよね。信頼できる誰かと向き合い、悩みを打ち明ければ、たとえ解決策が見つからなくても気持ちが軽くなるものです。

となると次なる問題は「相談相手として誰を選ぶか」ということです。両親や配偶者など、確実に頼れる身内がいる人はいいでしょう。ですが、そういった身内を持たない人もいますし、場合によってはその身内が悩みの種だったりするケースもあります。恋人や友達にしたって、性格や能力その他諸々によっては、「好きだけど、的確な助言をくれる相手ではない」ということだってあり得ます。でも、この人が知人ならば、悩み相談する相手を迷わずに済むんじゃないでしょうか。林真理子さん『中島ハルコはまだ懲りてない!』に登場する中島ハルコです。

 

こんな人におすすめ

コミカルで痛快な人間模様が読みたい人

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「中島ハルコの恋愛相談室」 林真理子

読む本を選ぶ上で、あまり関係ないように見えて実はすごく重要な要素、それは「表紙」です。表紙によって物語の質が変わることはありませんが、魅力的な表紙の本は人の目を引き寄せるもの。「表紙につられて手に取ってみたら、予想以上に面白かった!」ということだってあるでしょう。

かくいう私自身、表紙に惹かれて本を選んだ経験は数えきれないほどあります。中でも、恩田陸さんの『麦の海に沈む果実』、近藤史恵さんの『タルト・タタンの夢』、村山由佳さんの『野生の風 WILD WIND』の表紙は、その作家さんにはまるきっかけとなったこともあり、今もはっきりと覚えています。そう言えば、この作品の表紙もけっこうインパクトありますね。林真理子さん『中島ハルコの恋愛相談室』です。

 

こんな人におすすめ

すっきり爽快なエンタメ小説が読みたい人

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「女優」 春口裕子

誰しも「こういう人間になりたい」という理想があると思います。依存心が強く運動神経ゼロの私の理想は、男性顔負けの戦闘をもこなす強い女性。映画『バイオ・ハザード』シリーズのミラ・ジョヴォヴィッチなんて、まさに理想そのものでした。

映画のキャラクターなどは難しいにしても、理想に向けて邁進する人は素敵です。努力する姿は美しく、周囲の尊敬を集めることでしょう。ですが、あまりに「理想」を追い求めるあまり、「本当の自分」が押し潰されてしまったら・・・?それはもう妄執としか言えないのではないでしょうか。この本を読んで、そんなことを考えました。春口裕子さん『女優』です。

 

こんな人におすすめ

女性の嫌な面を扱ったサスペンス小説が読みたい人

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「女王はかえらない」 降田天

スクールカースト。読んで字のごとく、学校内における人気順位をカースト制度になぞられた言葉です。上位に位置する者ほど発言権が強く、下位の者はクラスの日陰者、どころか下手すればいじめの対象にもなりえます。私の学生時代にも似たような上下関係はありましたが、当時はネットなどがそれほど普及していなかった分、少なくとも校外には逃げ場がありました。今はSNSなどを使えば、最悪の場合、全世界に悪口をばらまかれる可能性もあるわけですから、つくづく怖いなと思います。

言葉自体が定着したのは割と最近なような気がしますが、スクールカーストを扱った小説は昔からありました。山田詠美さんの『風葬の教室』など一九八八年の作品ですし、二〇〇三年に芥川賞を受賞した綿谷りささんの『蹴りたい背中』も学校内での人間模様がテーマです。最近では、映画版も話題になった朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』などが有名ですね。今回は、私が読んだスクールカーストものの中でもトップ3に入るほど陰惨な作品を紹介します。降田天さん『女王はかえらない』です。

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「オーブランの少女」 深緑野分

近所の図書館は視聴覚資料のラインナップがけっこう豊富です。大ヒットした大作映画はもちろん、ミニシアター系の小品からウケ狙いとしか思えないB級映画まで、バラエティ豊かに揃えられています。先日、その中にお気に入りの作品があるのに気付き、久しぶりに借りて鑑賞しました。ルシール・アザリロヴィック監督の『エコール』。閉ざされた学校で不思議な共同生活を送る少女たちの姿が、なんとも幻想的で美しかったです。

「子ども」がテーマの創作物はたくさんあります。特に「少女」がキーパーソンだった場合、「少年」の時と比べてより妖しく、より残酷な存在になることが多い気がしますね。そんな美しくも謎めいた少女達を扱った作品がこれ、深緑野分さん『オーブランの少女』です。

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「お隣さんが殺し屋さん」 藤崎翔

現在地方在住の私ですが、一時期、首都圏に住んでいたことがあります。上京した時は、生まれて初めてのお江戸暮らしにわくわくどきどき。芸能人と会えるかな、ドラマの撮影現場に出くわすかなと、胸を高鳴らせていました。まあ、実際はそうドキドキすることがあるわけもなく、ごく普通に生活していただけですけどね。

新しい環境での生活を始めるとなると、誰でも多かれ少なかれ緊張したり期待したりすると思います。楽しい出来事があるといいけれど、もしかしたら危ない目や怖い目に遭うかもしれない。命の危険さえ感じる出来事があるかもしれない。たとえば、新居の隣人がとんでもない人物だったりとか・・・・・今回取り上げる藤崎翔さん『お隣さんが殺し屋さん』には、そんな驚愕の「お隣さん」が登場します。

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「黄泉醜女」 花房観音

昔、家にギリシア神話の本が置いてありました。子ども向けにリライトされたバージョンだったので、私へのプレゼントか何かだったのかもしれません。子ども向けとはいえ当時の私にはショッキングなシーンが多く、驚いた記憶があります。

ギリシア神話に限らず、神話はしばしば残酷だったり生臭かったりするものです。それは、かつて神話が教訓や警告の役目を果たしていたからかもしれませんね。恐ろしいといえば、日本神話だって負けてはいませんよ。今日は、日本神話に登場する禍々しい鬼をテーマにした作品を紹介します。団鬼六賞で文壇デビューを果たした小説家、花房観音さん『黄泉醜女』です。

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「レイクサイド」 東野圭吾

旅行、合宿、キャンプ・・・どことなく冒険の香りが漂う言葉です。日常を離れ、普段暮らしているのとは別の場所で寝起きする。子どもはもちろん、わくわくする大人も大勢いるでしょう。

日常から離れるというシチュエーションのせいか、旅行や合宿を扱った創作物はたくさんあります。世界的に有名な映画『13日の金曜日』はキャンプに来た若者たちと殺人鬼の攻防を描いていますし、高見広春さんの『バトル・ロワイアル』、群ようこさんの『かもめ食堂』、柴田よしきさんの『夢より短い旅の果て』などでは、登場人物たちは家を離れて旅に出ます。恋愛、ヒューマンドラマ、ホラーと、どんなジャンルにも繋げることのできる「旅」ですが、ミステリーならこれはどうでしょうか。東野圭吾さん『レイクサイド』です。

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